シューマンはまず、ベートーヴェンの音楽から大きな影響を受けた。ベートーヴェンの交響曲のような作品を書くことが、少年シューマンの夢であった。
また、シューベルトの詩的情緒にも魅了された。
さらにJ.S.バッハの対位法は、彼にとってロマンティックで神秘的なものを感じさせた。
シューマンは元来が大変な勉強家であり、自ら作曲やピアノの練習をするには止まらず、ピアニストとしての道を断念した後は尊敬するシューベルトの大作の発掘を始め、バッハやハイドン、或いはベートーヴェンといったバロックから古典派、そしてロマン派にかけての音楽をも熱心に研究していた。それではなお飽き足らず、当時としては珍しい音楽雑誌を創刊して、同世代の埋もれた才能の発掘にも努めていたのである。
当時若干20歳で、まだまったく無名だったブラームスを始め
『帽子を取りたまえ諸君! 天才だ!』
という有名なフレーズとともに、世に送り出したショパン、他にもメンデルゾーンやベルリオーズといった、後の大作曲家たちを世に送り出すのに果たした功績は、実に多大なるものがあった。
鋭い感性と知性に恵まれていたシューマンは、ホフマンやジャン・パウルなどのロマン主義文学からも深い影響を受け、その作品はドイツ・ロマン主義の理念を音楽家として最も純粋な形で表現し、その精髄を示しているとみなされる。
シューマンの旋律は、それまでのどの作曲家の作品とも違う鋭い表現力を持つものであり、和声的にも法則を最大限に活用し斬新な響きを作り出した。
またリズムにも特徴があり、付点音符やシンコペーションを多用して、力強さや浮遊感を表現した。
さらに、しばしば微細な動機を「モットー」として採り上げ、曲全体に関連性の糸を張りめぐらし楽曲構成の基礎にした。それは、時折隠されたものでもあった。
「モットー」は人名や地名を音名象徴で表したり、自作や他の作曲家の作品から引用されることもあり、その意味で彼はワーグナーの「劇」とはまた違った「詩」の名のもとに、諸芸術の統合を企図していたのかも知れない。
『ライン交響曲』は、番号は3番だが実際には4曲の交響曲の中で最後に作曲された。
内へ内へと沈み込んでいくようなシューマンの音楽の中で、この第3番のシンフォニーだけは華やかさをふりまいている。
第3楽章 速くなく(Nicht
schnell)
木管楽器で優しい感じの主題が演奏されて始まる。この楽章は、全曲中の間奏曲のような位置付けである。
続いて出てくる半音で上に上っていくような音型は、楽章を通じて何回も登場する。優しさと愛情に溢れる、鄙びた音楽である。
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