2026/02/07

日蓮(7)

思想

日蓮の主要教義は、三大秘法と五義(五綱)である。ここでは、その概要を述べる。

 

三大秘法

三大秘法とは本門の本尊・本門の題目・本門の戒壇の三つをいい、仏教全般の基本である戒定慧の三学を日蓮の仏教に当てはめたものとされる。「法華取要抄」「報恩抄」「三大秘法抄」などにおいて説かれる。「本門の」との言葉が冠されるのは、日蓮が弘めた法が従来の仏教を超越していることを示す趣旨である。ただし三大秘法の解釈については、各宗派において大きな相違がある。

 

「三大秘法抄」は、古来より真偽未決の遺文である。「三大秘法」という言葉は「三大秘法抄」を除いて使用例はなく、唯一「曽谷入道殿許御書」で「一大秘法」という用例が見いだされる。

 

本門の本尊

本門の本尊とは、日蓮の仏教における信仰と礼拝の対象をいう。

 

本門の本尊について日蓮宗では、その実体は「久遠実成本師釈迦牟尼仏」、すなわち法華経寿量品文上に説かれる五百塵点劫成道の釈迦仏であるとし、具体的な本尊の形態としては文字曼荼羅、一尊四士(釈迦仏像の左右に上行・無辺行・浄行・安立行の四菩薩像を安置する形態)、二尊四士(釈迦如来・多宝如来像の左右に四菩薩像を安置する形態)のいずれでもよいとする。

 

それに対して、日蓮正宗など日興門流の多くは仏像を本尊とすることを認めず、本門の本尊とは文字曼荼羅のみであり、文字曼荼羅は日蓮と一体不二であるとする(曼荼羅を法本尊、日蓮を人本尊とする)。その背景には、日蓮宗が法華経に説かれた釈迦仏を本仏(教主)とするのに対し(釈迦本仏論)、日蓮正宗は釈迦仏を正法・像法時代の仏ととらえ、日蓮を末法の本仏とする(日蓮本仏論)など、本仏観の相違がある。

 

本門の題目

本門の題目は南無妙法蓮華経であり、また本門の本尊を信受して南無妙法蓮華経と唱えることをいう。

 

南無妙法蓮華経の言葉は、日蓮以前にも存在した。その場合、南無妙法蓮華経は妙法蓮華経という経典に帰依する(南無する)ことを意味する言葉だが、日蓮は妙法蓮華経は法華経の名ではなく、妙法蓮華経の法体であり、心(意)とした。また日蓮は、妙法蓮華経二十八品を「広」、方便品・寿量品を「略」、南無妙法蓮華経を「要」と位置づけた。すなわち日蓮において、南無妙法蓮華経はたんに妙法蓮華経という経典に南無するという意味の言葉ではなく、末法の衆生を成仏させる根源の法(妙法)そのものを意味する。

 

本門の戒壇

戒壇とは、従来の仏教においては僧侶の授戒の儀式を行う場所を意味したが、日蓮の仏教の戒壇は本門の本尊を安置して南無妙法蓮華経の題目を行ずる場所をいう。日蓮は、真蹟が確認できる「法華行者値難事」「法華取要抄」「報恩抄」で「本門の戒壇」と名目だけ書き記し、それが指す内容については言及していない。また「三大秘法抄」では「本門の戒壇」ではなく「寿量品の戒壇」と記されている。

 

なお「三大秘法抄」には、妙法が広まった時には最勝の地に戒壇を建立すべきであるとの教示がある。この戒壇は、教団が目標とすべき理想を示したものとされる。

 

五義(五綱)

教・機・時・国・教法流布の先後の五義は五綱ともいい、日蓮独自の教判である。教判とは教相判釈の略で、諸経の勝劣を比較検討し、自らの宗旨建立の正当性を示すものをいう。「教機時国抄」「顕謗法抄」「南条兵衛七郎殿御書」などに説かれている。

 

五義は、「顕謗法抄」で「行者、仏法を弘むる用心」といわれるように、仏法弘通のために留意すべき判断基準でもある。一般の教判が主に教理についての判定であるのに対し、日蓮が立てた五義(五綱)は教理だけでなく、衆生が教えを受け入れる能力(機根)、時代の特質(時)、その国の国情(国)、それまでに広まっている教え(教法流布の先後)を総合的に判断する基準であるところに特徴がある。

 

一切の宗教の中で、どのような教えが人々を幸福へと導く適切な教えであるかを判定すること。日蓮は「五重の相対」(開目抄)、「五重三段」(観心本尊抄)などを通して、南無妙法蓮華経こそが末法に弘めるべき教であるとする。

 

教えを受け止める衆生の宗教的能力(機根)を判断すること。日蓮は末法の衆生は釈尊在世の結縁を持たず、南無妙法蓮華経のみによって成仏できる機根の衆生であるとした。

 

この時とは仏法上の時であり、今日は従来の仏教では衆生を救済できない第五の五百歳、すなわち末法であると知ることをいう。

 

その国の国情を知って、仏法を流布することをいう。日蓮は、日本国は法華経に有縁の国であるとした。

 

教法流布の先後

先に広まった教えを知って、後に弘める教えを判断すること。日蓮は、後に弘める教えは先に広まっている教えよりも深い教えでなければならないとした。

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