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さらに二つめとして、この五重奏曲では晩年のシューベルトの特長となる独特の響きが駆使されていることです。
この響きに関して、例えば作曲家の池辺晋一郎氏は「ナポリ調」という概念を使って解説されているのですが、正直言ってよく分かりません。ただし、実際に耳で聞いてみれば、例えば第二楽章などで穏やかで情感豊かに始まった音楽が、ヘ短調の不安定な世界に踏み込んだと思うと激しく転調を重ねていくことで、悲劇的なクライマックスにたどり着きます。いわゆる、景色のいい道をのんびり歩いていると、急に化け物と遭遇するという晩年のシューベルトによくある光景です。おそらく、こういう化け物とふいに出会うような世界も、ディアベッリの理解の外にあったのではないでしょうか。
しかし、私たちもまたディアベッリよりは賢くないことは明らかなのですが、それでも後に生まれたおかげで、多くの音楽に触れる機会を得ています。ですから、この作品が内包しているシンフォニックなものへの指向を聞き取ることはそれほど困難ではありませんし、そのシンフォニックな世界が、時にはブルックナーにもつながっていくほどの深く沈み込む世界を持っていることに気づくことも出来ます。
だからといって、決してうぬぼれてはいけないでしょう。言えることは、先人の肩の上に乗れるというのは有り難いということだけです。
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