2024/05/19

イスラム教(10)

https://dic.pixiv.net/

概要

「イスラーム」(إسلام Islām)とは、アラビア語で「絶対帰依すること」という意味の動名詞であり、唯一にして絶対なる神アッラー(Allāh)と、その預言者・使徒であるムハンマドを信じ、アッラーから天使ジブリール(ガブリエル)によって、ムハンマドのもとに下された聖典クルアーン(al-Qur'ān コーラン)に明かされた教えに従って生きる事を含意している。預言者ムハンマドの生地で、イスラームの勃興地でもあるメッカを聖地としており、イスラム教徒ムスリム)たちは一年のうち決められた期間に、このメッカに巡礼することを(経済的・体力的に可能であれば、という条件付きでの義務として)推奨されている。

 

イスラームは、7世紀にアラビア半島においてムハンマドによって開かれた宗教である。ムハンマドの生地メッカにはじまりアラビア半島全域に広がり、ムハンマドの後継者たちに引き継がれた政権は、7世紀の終わりまでには中東から中央アジア、北アフリカ、イベリア半島にまで広がる大帝国となった。この地域を核として次第に中国方面やインド、東南アジア、アフリカ大陸東部や西部に拡大し現在に至っている。

 

また、イスラームは先行するユダヤ教キリスト教と同じ唯一なる神を信仰していると自認しており、啓典の歪曲から生じた信仰の形態の違いによって、ユダヤ教とキリスト教に見られる差異が生じているとしている。それでもアッラーから啓典の下された人々をアラビア語では「啓典の民(Ahl al-Kitāb)」と呼び、ユダヤ教徒やキリスト教徒は信仰的な同朋とみなしている。また、アッラーは唯一の存在であり、人類には知覚し切れない絶対的かつ永遠の存在であり、図像・彫像にして崇拝すべき存在ではないとしているため、(クルアーンに明記されたアッラーの命令によって)偶像崇拝は禁止されている(その例として、キリスト教教会で十字架や聖母マリア像が置かれているスペースは、モスクでは何も置かれず空洞スペースとなっている)。


「イスラーム」という単語は、クルアーンに「汝ら(人類)に対する恩寵として、汝らのための宗教としてイスラームを授けた」とアッラーが述べる箇所があり、他の多くの宗教と異なり、創建当初から「イスラーム」という宗教名が使われている。

また、その論じられる分野に応じて「イスラーム文明」「イスラーム社会」「イスラーム政治」「イスラーム経済」などの諸側面のイスラーム的要素を考察する際に使われるが、だいたいにおいてイスラームの宗教的な側面を論じる際に「イスラーム教」「イスラム教」という訳語が使われている。ここでは、ひとまず項目名を「イスラム教」としたい。

 

イスラム教は全体の9割を占めるとされるスンナ派と、残りの1割にあたるシーア派2派に大別される。

スンナ派、シーア派とも異なる伝統宗派としてイバード派が存在する。

各宗派の信徒が多い地域として、シーア派は主にイラン、スンナ派はサウジアラビアトルコエジプトアラブ首長国連邦、イバード派はオマーン等が挙げられる。

 

信仰対象、聖典、預言者

唯一神アッラー

アッラー(Allāh)とは、唯一にして絶対なる神のことである。語源については、アラビア語で「神」をさす普通名詞イラーフ(ilāh)に定冠詞アル al- がついたものに由来するとするもので、一般名詞が固有名詞したもの、とする。英語における god God the God では意味が異なるのと同じ、というもの。もうひとつが「アッラー」それ自体が、唯一・絶対神の固有名詞とするもの。いずれもアッラーが唯一絶対とする、一神教の神であることを前提としたものである。そのためアッラーがアラブ人やイスラームのみの神としたり、「アラーの神」のような日本語の表現は不正確な認識である。(聖書のアラビア語訳や、ユダヤ教徒やキリスト教徒の書いたアラビア語の文書では、自らの信仰する神は全て「アッラー」と表現されている)

 

イスラム教徒にとってアッラーは、

1)永遠に自存する絶対的、唯一無二の超越的存在

2)世界の創造者であり、人間や全ての事物の運命を決定する存在

3)啓示を通して人間に語りかける存在。預言者を励まし、信徒を導く人格をもつ神である

4)信徒にとって一人一人がその僕として向き合うべき「我が主」

であるとされている。


アッラーの意志は、天使を経て預言者を通じて人類に明かされるが、「絶対的、唯一無二の超越的存在」であるため人間の理解を超越しており、その意志を完全に理解するのは不可能とされる。

 

アッラーは、この世の創造者であると同時に終末の日までに存在した全ての人類に審判を下す存在とされており、イスラームを信仰したものと信仰しないものを峻別する。ただし、イスラームを信仰しないものを地獄に落とすかどうかということについては諸説があり、後期アシュアリー神学による一説では預言者の宣教が届かない土地に居住する人間については、クルアーン1715節などを典拠としてイスラームの信仰に無関心な者であろうと救済すると考える。

 

アッラーは全ての人間に恩寵と苦難と与える存在で、世界の一切を知る存在であるため、人間の全ての行いを常に知っているという。そのため、イスラームの信仰を否むものは容赦なく来世には地獄へ落とすが、一片でも悔悟する者には限りない慈悲と慈愛をもって地獄から救うという。

 

イスラム教徒の信仰告白に「アッラーの他に神はなく、ムハンマドはその使徒である」という一文があり、他宗教からイスラームへ改宗する時には、これをアラビア語で信頼できる成人のイスラム教徒2名の前で証言する事で、イスラム教徒となることが出来る。これは前段はアッラーが唯一神であることを告白するもので、後段はムハンマドから預言者として、その唯一神アッラーから神の言葉である聖典コーランと、それに基づいたイスラームの信仰を人類にもたらす使者(使徒)であることを認めることをさしている。アッラーが唯一神であることはユダヤ教、キリスト教でも同様だが、ムハンマドが神からイスラームの信仰をもたらした使徒であることを宣言する後段部分が、他の一神教とイスラームと分つ区別となっている。

 

イスラム教徒は、この唯一神アッラーを信仰対象とし、なおかつその使徒である預言者ムハンマドと、ムハンマドがもたらした神の言葉=聖典クルアーンに従って生きることを前提としているのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿