2019/01/24

ハーデース(ギリシャ神話48)


アスクレーピオス
アスクレーピオスは、アポローンとコローニスの子。ケイローンのもとで育ったアスクレーピオスは、とくに医学に才能を示し、師のケイローンさえ凌ぐほどであった。やがて独立したアスクレーピオスは、医術の技をますます熟達し、ついに死者まで生き返らせることができるようになった。これには、冥界の王ハーデースは、自らの領域から死者が取り戻されていくのを “世界の秩序を乱すもの” とゼウスに強く抗議した。ゼウスはこれを聞き入れ、雷霆をもってアスクレーピオスを撃ち殺したものの、医学者としての彼の偉業を讃え、へびつかい座として天に迎え入れた。

オルペウス
オルペウスの妻エウリュディケーが毒蛇にかまれて死んだとき、オルペウスは妻を取り戻すために冥府に入った。彼の弾く竪琴の哀切な音色の前に、ステュクスの渡し守カローンも冥界の番犬ケルベロスもおとなしくなり、冥界の人々は魅了され、みな涙を流して聴き入った。ついにオルペウスは、冥界の王ハーデースとその妃ペルセポネーの王座の前に立ち、竪琴を奏でてエウリュディケーの返還を求めた。オルペウスの悲しい琴の音に涙を流すペルセポネに説得され、ハーデースは、「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件を付け、エウリュディケーをオルペウスの後ろに従わせて送った。目の前に光が見え、冥界からあと少しで抜け出すというところで、不安に駆られたオルペウスは後ろを振り向き、妻の姿を見たが、それが最後の別れとなった。

メンテー
数少ないハーデースの浮気話。冥王ハーデースは、地上に住むニュムペーのメンテーの美しさに魅了されてしまい、それに気付き嫉妬に狂ったペルセポネーは「お前などくだらない雑草になってしまえ」とメンテーを踏みつけて恐ろしい呪いをかけ、草に変えてしまった。以来、この草はミントと呼ばれ、ミントはハーデースの傍、神殿の庭で愛らしい存在感を保ったまま咲き誇り続けた。地上でも今も陽光を浴びる度に芳香を放ち、人々に自分の居場所を知らせるのだという。もしくは、地上を見回っていた冥府の王ハーデースに目を付けられ、攫われようとしていた。しかし自らも攫われて妻となったペルセポネーがそれに気付き、彼女を香りの良い小さな草に変えて茂みへ隠し、ハーデースの目から隠してやったともいわれる。

レウケー
レウケーは冥界の王ハーデースに見初められて冥界に連れて行かれたが、彼女は完全な不死の神ではなかったために死んでしまった。これを悲しんだハーデースは、レウケーを白ポプラに変えたという(なお、レウケーとは「白い」という意味)。それ以来、エーリュシオンには白ポプラが繁っているという。後にヘーラクレースは12功業の一つとして冥界を訪れた時、エーリュシオンのレウケーの木から冠を作ったという。

ヘーラクレースの12功業
ケルベロスはオルトロスの兄であり、3つの頭を持つ犬の怪物。ヘーラクレースは冥界に入ってハーデースから「傷つけたり殺したりしない」という条件で許可をもらい、ケルベロスを生け捕りにした。その際、ペルセポネーを略奪しようとし、また「忘却の椅子」に捕らわれていたテーセウスとペイリトオスを助け出した。また、地上に引きずり出されたケルベロスは太陽の光を浴びた時、狂乱して涎を垂らした。その涎から毒草のトリカブトが生まれたという。

信仰
ハーデースは冥界の主として恐れられていたため、彼の信仰は他の神々ほど行われることはなかった。この恐怖のイメージは軍神アレースと密接に繋がりがあり、アレースが戦争を巻き起こすと、戦死者の魂が冥界に多く下ることになり、ハーデースの地下の王国は巨大になるとされた。冷酷で慈悲を知らないハーデースは戦死者の血を飲み干すとも言われ、これによって恐怖のイメージに拍車がかかったのは言うまでも無い。後世になると、この恐怖の側面ばかりが強調されるようになり、娯楽作品などでは正義の神ゼウスと敵対する悪の神として描かれることが多い。

一方、ハーデースは、全ての者を受け入れる神としても信仰されていた。神々に寵愛されるほどの英雄は除いて、金持ちも貧者も死後は等しく冥界へと下るからだ。また、地下資源の神として「富める者(プルートーン)」という異名も持ち、オルフェウスの竪琴の音色に感動して涙を流すなど、冷酷とは異なる感情豊かな側面も持つ。

オルフェウス教
冥界から帰還したオルフェウスが開祖となったオルペウス教には、輪廻転生の教えが伝わっていた。死後魂となって冥界で永遠を過ごすとされたギリシア神話において、輪廻転生が信じられたのはオルペウス教だけである。オルペウス教の最終目標は輪廻からの解脱であり、その為には冥界でムネーモシュネー(記憶)の泉を探してその水を飲み、転生に伴う忘却を免れなければならないとした。

エレウシスの秘儀
デーメーテールは、ペルセポネーを探し歩いていたその途上で、エレウシスにある王国に立ち寄った。彼女は老婆に変身していたが、エレウシスの王たちは温かく歓迎してくれた。このことに感動したデーメーテールは、エレウシスの王たちに秘儀と穀物の栽培方法などを授けた。これが後にエレウシスの秘儀となり、この秘儀に参加した者は死後における幸福を掴むことが出来るとされた。秘儀という特性故に何人もその内容を口外することは許されず、場合によっては処刑された。その為に現在この秘儀について分かっていることは乏しいが、おそらくデーメーテールの放浪、及びペルセポネーの奪還を主題としていただろうことが推測される。

ローマ神話
ハーデース信仰はヌマ・ポンピリウスによってローマ神話にも取り入れられ、プルートーと呼ばれる。冥王星の名前の由来となった。死の国の魔神オルクスや慰霊の神フェブルウスとも同一視された。

キリスト教
ハーデースはキリスト教において、死後の世界そのものを指す言葉として用いられ、新約聖書にはハデスという名称が10回登場する。また、ダンテの『神曲』にプルートーという名前の魔物が登場する。無論、同名というだけで、ローマ神話のプルートーとは全くの別物である。

死者の国、冥界の神ハデス
 ハデスはゼウスの兄弟であり、詩人ヘシオドスの「神々の系譜」の物語では、当然ゼウスの兄に当たる。ゼウスたち三兄弟による支配地の分担の神話はよく知られているところで、すでにホメロスの叙事詩に見られることは、ポセイドンの紹介のところでも触れておいた。その時ハデスは「冥界」を引き当てたわけである。従って重要である点では、他のどの神にもひけは取らないのであるが、彼は常に冥界にあって死者をみていなくてはならず、地上のオリュンポス山などで宴会などしている暇はないというわけなのだろう、彼はオリュンポスの12神のうちには数えられない。
 そんなわけで、彼は「冥界がでてくる神話」には登場するけれど地上の出来事には介在せず、従ってトロイ戦争伝説でも活躍することはなく、一体に影が薄い。その中で、結局彼の妻とされることになってしまう、先に紹介したデメテルの娘「ペルセポネ」との神話がひときわ有名である。
 死者の国は古くからさまざまにイメージされているが、日本仏教でいうところの「三途の川」のごときもあって、「怪犬ケルベロス」がその門を守っているというイメージがよく知られている。
出典 Wikipedia

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