2021/02/28

アブラハム(2)(ヘブライ神話10)

アブラムとロトとが分かれた後、アブラムに神から以下のような預言が下された。

 

「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。

わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。

わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。

立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに、その地を与えるのだから。

『創世記』14:14-17、日本聖書刊行会の新改訳聖書より

 

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教を信じるいわゆる聖典の民は、いずれも彼を唯一神ヤハウェ(יהוה)が人類救済のために選んだ預言者として篤く尊敬し、祝福する傾向が強い。そのため、これらの宗教は「アブラハムの宗教」とも呼ばれる。

 

彼は、老齢になっても嫡子に恵まれなかった(ハランを出発したときは75歳)が、神の言葉

「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」

「あなたの子孫は、このようになる。」

創世記15:5、新共同訳聖書より

と言われ、その後妻のサライの勧めで彼女の奴隷であったハガルを妾にして76歳にしてイシュマエルを授かり、後に99歳で割礼を受け、老妻サラ(サライ)との間に100歳になって嫡子イサク(イツハク)を授かった(『創世記』第161821章)。

 

これ以外に、アブラハムの子として記されているものとして、アブラム137歳の時に妻サラは127年の生涯を閉じた(『創世記』第23章第1節)が、その後アブラハムはケトラという女性を妻に娶りジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアという子供をもうけ、その後アブラハムはイサク以外の子には、生前分与として贈り物を与えて東の地に去らせ(第25章第16節)、イサクには残りの全財産を継がせたほか、自分の故郷から傍系親族のリベカを連れてこさせて彼の妻にさせた(第24章)。

 

アブラハムは175歳で世を去り、マクペラの洞窟へイシュマエルとイサクによって葬られた(第25章第79節)。

 

アブラムの墓廟は、パレスチナのヨルダン川西岸地区ヘブロンにあり、ユダヤ教とイスラム教の聖地として尊崇されている。

 

祖先としてのアブラハムの位置付け

ユダヤ人は、イサクの子ヤコブ(ヤアコブ)を共通の祖先としてイスラエル12部族が派生したとし、アブラハムを「」として崇め、また「アブラハムの末」を称する。一方でイサクの異母兄に、妾ハガルから生まれた一子イシュマエル(イシュマイール)や後妻ケトゥラから生まれた異母弟たちがいて、旧約聖書の伝承では彼らがアラブ人の先祖となったとされる(創世記21章・25章など)。

 

また、すべてのユダヤ教徒の男子は、アブラハムと神との契約により、生後8日に割礼を受ける定めとされる。

 

これ以外に大元の出典の名前、並びに内容の真偽は不詳だが、『マカバイ記』1巻第122023節に出てくるスパルタ王アレイオスからユダヤの大祭司オニアスに来た手紙には

「ある文献によると、スパルタ人とユダヤ人は兄弟で、(スパルタ人も)アブラハムの子孫であると書いてある。」

という記述がある。

 

イスラム教におけるイブラーヒーム

この項では、アラビア語発音のイブラーヒームの名を基本に、記述を進める。

 

イスラム教では、旧約聖書の伝承について、改竄にもとづく誤りを含みつつも神の言葉を伝えた啓典であると考えてはいるが、イブラーヒームについて同様に考えており、アラブ人はイブラーヒームとイスマーイール(イシュマエル)を先祖とみなしている。イスラム教の立場では、イブラーヒームとはユダヤ教もキリスト教も存在しない時代に、唯一神を信じ帰依した完全に純粋な一神教徒であり、イスラム教とはユダヤ教とキリスト教がいずれもイブラーヒームの信仰から逸脱して、不完全な一神教に落ちた後の時代にイブラーヒームの純粋な一神教を再興した教えである、と考えられた。

 

トルコのムスリムの伝承では、『旧約聖書』にある預言者イブラーヒームが、カナンに向けて出発した「ウル」(カルデアのウル)とはウルファのことであるとし、これは世俗主義の立場である聖書学からも支持されていた。イスラム教の伝統では、イブラーヒームの誕生した場所はウルファであるとされており、これを記念するモスクも建てられている。

 

イスラム教徒(ムスリム)も、生後7日目から12歳までの間に割礼を行うが、ユダヤ教とは違って特にイブラーヒームに由来する法とは考えられておらず、イブラーヒームとアッラーフとの契約に基づいた宗教的義務ではなく、共同体の慣習に過ぎないとみなす法学派が有力である。

 

イスラム政権支配下において、ゾロアスター教教祖のザラスシュトラはイブラーヒームと同一人に比定され、そのことによりゾロアスター教徒は啓典の民として信仰の維持を認められている。

出典 Wikipedia

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