2006/08/21

若き血潮の躍動(前編)  

 この『10ちゃんねる』で「高校野球」のネタを採り上げるのは、思えば今回が初めてだ。

小学生時代以来、長い高校野球観戦歴を持つワタクシだが、高校野球を『10ちゃんねる』で採り上げる事になろうとは、つい2日くらい前までは考えてもみなかった。が、今回に限っては

(是非とも、書かなければ・・・)

という、久方ぶりに妙な衝動に突き上げられてしまったのである。

88回全国高等学校野球大会(以下「高校野球」と表記)で『早稲田実業』(以下『早実』と表記)が見事な優勝を遂げた。ご存知の通り昨年、一昨年と二年続けて全国制覇の連覇を成し遂げた、北海道の『駒大苫小牧』(以下『駒苫』と表記)との、二日間に渡る死闘の末の決着だ。

全国の4000を超える出場校が存在している中で同じ高校が、それも三年間で学生が入れ替わる高校球界においての「三連覇」というのが、いかに大変な偉業であるかという事は、過去100年近い高校野球の歴史においてすら、たったの一度(愛知の『中京商』=現在の『中京大中京』= 昨年までフィギュアスケートのミキティが在校し、今年から入れ替わりで浅田真央が入学)しかない、という事からも明らかである。その「奇跡の大偉業」に挑んでいたのが、今やすっかりお馴染みとなった『駒苫』であった。

実は当初、ワタクシは

(三連覇なんて、そう簡単に出来るものじゃないだろう ・・・)

と楽観視しており、これまでにそれぞれ煮え湯を飲まされて来ていた『横浜』や『大阪桐蔭』、『清峰』といった高校ばかりでなく『智辯和歌山』、『早実』、『帝京』、『関西』、『仙台育英』、『青森山田』といった、それぞれヒトクセありげな強豪と見られるチームが揃っていた事も、ワタクシに「打倒『駒苫』の期待」を持たせる要因だった。

ところが抽選の悪戯か、トーナメントの早い段階でこうした強豪同士の潰し合いが続いてしまい『駒苫』の三連覇阻止を最も期待された『横浜』を始めとした有力校が、軒並みに消えていく事になる。

そんな中、3回戦では『青森山田』に対し1-7と大きくリードされながらも、9回で5点を挙げて逆転サヨナラ勝ち。続く準々決勝でも『東洋大姫路』に0-4とリードされながら、終わってみれば5-4と予想外の苦戦の連続とはいうものの、結局最後には逆転で勝利をもぎ取っていく『駒苫』の強さは、やはり群を抜いて見えた。

「どんな展開になっても、決して負ける事がないのだろーか?」

そこには「所詮は高校生」と、簡単に切って捨てる事の出来ない、底知れぬ「セミプロ集団」の圧倒的な地力が浮き彫りになっていた。

 この時点においてのワタクシの予想では、既に『駒苫』の優勝確率はほぼ5割というところで、準決勝の『智辯和歌山』戦が「事実上の決勝戦」だと密かに睨んでいたものである。『智辯和歌山』の方も久々に強力打線が復活し、準々決勝の帝京戦では9回に大量8点を奪われ逆転を許しながらも、その裏に5点を挙げて逆転サヨナラ勝ちを収めるなど、かつて頂点に君臨した頃のように『駒苫』に比してもその戦力は充分に互角ではないか、と期待しながら観ていた。

が、三連覇を狙う『駒苫』の実力は、ワタクシの予想を遥かに上回っていた・・・期待された『智辯和歌山』が挑んだその一戦も、やはり改めて『駒苫』の強さと逞しさを再確認するだけの結果に終わってしまう。

そんな経過を経て、いよいよ迎えた決勝・・・『横浜』、『大阪桐蔭』といった強豪犇く中を勝ち上がって来たのは、伝統校の『早実』であり、その前には三連覇の偉業に向かって圧倒的な力で突き進む『駒苫』が、万里の長城のように高く聳え立っていた。

この決勝戦で、ワタクシが柄にもなく『早実』を応援したのは、二つの理由によるものだった。元々、生まれも育ちも愛知のワタクシとしては『早実』に対して肩入れする理由はまったくなかったが、なにしろ相手は憎らしいほどに強い『駒苫』だ。先にも触れたように、全国4000以上の高校が存在する中で「同じ学校が、三年も続けて優勝」というのは、良識としてなんといっても面白くないではないか(勿論、母校や地元の立場であれば、何連覇であろうとも大歓迎という気持ちは、よくわかるが)

これまで『早実』に関しては「あの王さんの母校」程度の認識しかなかったが、東京に転居して来てからOBの友人が出来た、という個人的な事情もあったかもしれない(49代表のうちでは、家から最も近いといった親近感はまったくなかったが・・・)

また、それほど特別に前評判が高いとはいえなかったものの、堅実な戦いで一戦毎に力を増して来た好感度も高く、この時点では今春の『横浜vs清峰』のような、実力差はそれほどにないだろうという印象も強くなって来ていた。

そういった事情があって、久々に大いに興味をそそられる決勝戦となったのである。あの向かうところ敵なしの、バカ強い『駒苫』が「73年ぶりの三連覇」を狙うのであれば、対するはナント91年前の第1回大会から出場している伝統校『早実』であり、創立105年目にして実に27回目の出場で「初の悲願」が掛かっていた事を思えば、関係者としてはさぞかし感慨もひとしおだったろう。

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