2006/08/02

ワーグナー オペラ『ローエングリン』(第1幕への前奏曲)

 


『ローエングリン』(Lohengrin)はワーグナーのオペラで、台本も作曲者による。

 

10世紀前半のアントウェルペンを舞台とする。以降に作曲された楽劇(Musikdrama)に対し、ロマンティック・オペラと呼ばれる最後の作品である。バイエルン王ルートヴィヒ2世が好んだことで知られる。第1幕、第3幕への各前奏曲や『婚礼の合唱』(結婚行進曲)など、独立して演奏される曲も人気の高いものが多い。初演は1850828日、フランツ・リストの指揮によりヴァイマル宮廷劇場で行われた。

 

1幕への前奏曲

8分割されたヴァイオリンが奏する縹渺とした和音から始まり、聖杯を象徴する旋律が奏される。旋律は柔らかな管楽器に受け継がれ、次第に音程が低く厚くなっていく。やがて啓示的なフォルティッシモの爆発に高まるが、再びもとの天空に戻っていくかのように消えていく。1853年にワーグナー自身が書いた解説によれば、この前奏曲は天使の群れによって運ばれてきた聖杯が、眩いばかりの高みから降臨してくる印象である。

 

この前奏曲はオペラ中でも特に名高く、独立して演奏されることも多い。1851年にリストが発表した論文には「虹色の雲に反射する紺碧の波」と書かれている。

 

1860年に、パリでこの前奏曲を聴いたベルリオーズは「どの観点からしても驚嘆に値する」と述べた。また、1871年にはチャイコフスキーも「おそらくワーグナーの手による最も成功した、かつ最も霊感に満ちた作品」としている。下って1918年にはトーマス・マンが「存在するすべての音楽のうち、最もロマンティックな恩寵にあふれた前奏曲」だと述べている。マンは、1949年にもこの前奏曲について触れ「青と銀で輝く」と表現した。これらのうち、リストやマンが「青色」について言及している点は、イ長調の調性と色彩のイメージとの関連で興味深い。

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