2006/05/02

ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』act2

 


ナポリに在住の台本作家サルヴァトーレ・カンマラーノは、ドニゼッティのための『ランメルモールのルチア』や『ロベルト・デヴリュー』などの台本で有名であるが、この作品がカンマラーノとの共同作業となった理由も、またはっきりしていない。

 

前述の通り、この『イル・トロヴァトーレ』は、どこの劇場の委嘱も受けずヴェルディが創作したものであり、劇場の座付き作家を利用しなければならない、といった制約は元々なかった。

 

カンマラーノは、長年の劇場生活に培われた本能的とも言える劇的展開、ならびに詩文の美しさには定評があり、こういった複雑怪奇な戯曲のオペラ台本化には適任の人物とヴェルディは考えたのだろう。ただし構成的には、カンマラーノは保守的な「番号付き」オペラの伝統に強く影響されており、ヴェルディが前作『リゴレット』で採用した、切れ目のない重唱の持続で緊張感を維持するといった新手法は、ここではいったん後退をみせている。

 

初演都市としては、初めカンマラーノと縁の深いナポリ・サン・カルロ劇場が考慮されていたが、ヴェルディの要求する金額があまりに法外であるとして劇場側が降りてしまい、結局ローマのアポロ劇場での初演と決定した。これは作曲どころか、台本の完成以前である。ところがカンマラーノは18527月に急死してしまい、第3幕の一部と第4幕の全てが未完のまま残された。ヴェルディは友人の紹介により、やはりナポリ在住の若い詩人レオーネ・エマヌエーレ・バルダーレと契約、台本はカンマラーノの草稿に沿う形で同年秋に完成する。

 

ヴェルディは、185210月の僅か1か月でそれに作曲したとの逸話があるが、完成稿としてはともかく、メロディーのほとんどはカンマラーノとの交渉が開始された1851年から創り貯めていたと考えるのが自然だろう。

 

2

夜明け。ジプシーの一団が陽気に酒を酌み交わし、鍛冶の仕事に精を出している。アズチェーナは彼女の昔話をする。

「母親が火刑に処せられた時、自分は伯爵の子供を誘拐して火にくべた。しかし気付いてみると、それは自分の実の息子だった。」

自分の出自を訝しく思うマンリーコだったが、アズチェーナは

「お前は自分の実子だよ。伯爵に復讐してくれ」

と焚きつける。

前幕の決闘でマンリーコが落命したと思い込んでいるレオノーラは、修道院入りを決心する。ルーナ伯爵は彼女を誘拐しようとするが、マンリーコが阻止する。

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