2006/05/04

ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』act4

 


そのようにヴェルディがイタリア・オペラの伝統を変えようとして模索したのが、これら中期オペラの時代なのです。ですから「リゴレット」や「トラヴィアータ」などでは、基本的には「カヴァティーナ=カヴァレッタ形式」を踏襲しながらも、その枠の中で「ドラマ」としての連続性や統一感を求めて、数々の模索を行っています。

 

しかし、なぜかこの「トロヴァトーレ」だけは、伝統的な「カヴァティーナ=カヴァレッタ形式」そのもので書かれています。伝えられるところによると、そのような形式を前提として書かれていた台本にヴェルディは不満で、台本作家に書き直しを何度も要求したようです。しかし、かなり激しいやりとりがあったにもかかわらず、最終的には台本作家の言い分が通って「カヴァティーナ=カヴァレッタ形式」で書かれることになりました。

 

正直に申し上げれば、ヴェルディの不満をはねつけて、最後まで我を通した台本作家に心から感謝を捧げたいと思います。なぜならば、ヴェルディ自身には不満はあったのでしょうが、その持てる力のすべてを注ぎ込んで「カヴァティーナ=カヴァレッタ形式」のオペラを書いてくれたおかげで、まさに、歌、歌、歌の世界、声また声のイタリア・オペラの王道とも言うべき作品を私たちは持つことができたからです。おそらく、このオペラにおいてはお話の筋などはどうでもいいのでしょう。男と女の愛と嫉妬の物語は、この声の饗宴を楽しむための道具立てしか過ぎません。次々と供される極上のディナーを堪能して、至上の満腹感を味わえればそれで十分です。それだけに、どこをとっても聴き所と言えるほどのオペラなのです。

 

4

戦いは伯爵軍の勝利に終わり、マンリーコは城の牢獄に捕われの身となる。レオノーラは伯爵に、自分の体と引換えにマンリーコの命を救うことを提案、伯爵はそれを受け入れ釈放命令を出す。レオノーラは隙を見て服毒する。レオノーラは牢獄へ赴き、マンリーコを解放しようとする。マンリーコは、彼女が貞操を犠牲にしたことを非難する。

 

レオノーラの飲んだ毒が効目を現し始め、彼女は愛するもののために死を選択した心情を訴える。ルーナ伯爵も登場、虫の息のレオノーラを見て自分が騙されたことを悟り、マンリーコの即時処刑を命令する。アズチェーナはマンリーコの処刑を確認し、伯爵に「あれはお前の弟だよ」と告げ

「母さん、復讐は成った!

と狂乱の叫び声を上げ、幕。

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