2006/07/06

チャイコフスキー バレエ組曲『くるみ割り人形』(1)

 チャイコフスキーの作曲した3つのバレエ音楽(実は3作以上作っているらしい)は、それぞれに特色を持った名作です。現在でも、世界中のバレエ団の基本的なレパートリーとして、繰り返し上演されています。これらのバレエが普遍的な人気を保っているのは、何といってもチャイコフスキーの音楽の素晴らしさによります。

 

「3大バレエ」の中でもいちばん上演時間が短く、内容的にもメルヘンチックな雰囲気を持っているのが「くるみ割り人形」です。チェレスタや少年合唱の使用など、サウンドの点でもオリジナリティ溢れるものになっています。

 


小序曲 (Ouverture Miniature)

この小序曲のみ編成から低弦、つまりチェロとコントラバスが除かれている。このバレエ全体のかわいらしい曲想を感じさせる。おとぎ話のような主題が、ヴァイオリンにより提示される。これらはクラリネット、フルートなどに引き継がれ、次第に大編成化する。  すると一転してオーボエによる叫びがあり、メロディックで優雅な第2主題(ヘ長調)が提示される。この後、第1主題・第2主題(変ロ長調で再現)は、そのまま反復される。

 

「くるみ割り人形」の物語は,ドイツの作家E.T.A.ホフマンの童話に基づき、マリンスキー劇場の首席振付師のプティパがバレエに構成した。ただし音楽の完成後、プティパが病気になり次席振付師のイワノフが修正を行い振付を行なったので、この曲の上演記録にプティパの名前は残っていない。プティパは非常に詳細なプランを立てて制作しており、音楽の調性や小節数のみならずリズム、テンポにまで注文をつけているが、チャイコフスキーは要求に応えバレエ史に残る不滅の作品を遺した。



行進曲(March

演奏会用組曲にも含まれている有名な曲です。子供たちが、クリスマスツリーの巡って踊ります。まずクラリネット、ホルン、トランペットで可愛らしいファンファーレのようなテーマが演奏されます。続いて弦楽器で出てくる弾むようなメロディは、子供たちがうきうきしている様子を表しているようです。これらのテーマは、何度も何度も繰り返し出てきます。途中フルートなどによる速い動きの部分が出てきますが、すぐに再度ファンファーレ風のメロディと弾むようなが戻ってきます。


金平糖の精の踊り (Danse de la Fée Dragée)

タイトルの原題は「ドラジェの精の踊り」だが、日本ではドラジェは一般的でなかったためにこの邦題が定着して現在に至っている。同様に英語圏では、クリスマスのキャンディーである「シュガープラムの精の踊り(Dance of the Sugar Plum Fairy)」となっている。当時、発明されたばかりであったチェレスタを起用した、最初の作品として広く知られる。

 

当初、このパートは「天使の声」と喩えられた珍しい楽器アルモニカ(または別種の「ガラス製木琴」)のために書かれており、後に旅行先でチェレスタと出会ってから楽器指定を変えたことが明らかになっている。チャイコフスキーは、初演までチェレスタを使用することを公言しなかった。チャイコフスキーは、パリから楽器を取り寄せる際、モスクワの業者に送った手紙の中に「他の作曲家、特にリムスキー・コルサコフとグラズノフに知られないように」と言う趣旨のことを書いており、先に使われるのを防ぐ目的があったようである。

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