2006/07/16

脱出(愛車の受難part4)


そんな或る日・・・朝、早めに着いて時間の余裕のある時にブラリとしていて、小さな図書館を見つけた。ここならボロイとはいえ、一応は屋根もあるので或る程度の雨露は凌げる。ただし自転車を置いて図書館ではなく、反対向きに外に出て行ってしまうので人目には怪しさ満載であり、また開館時間に重なって図書館の雇われ者らしきジーさんが、往来に出て来ているのがウザかった。それさえ上手く逃れられれば、夜の10時や11時になっても門が閉まる事はなかったから、その日は安心して置いておく事が出来たのだったが・・・

ところがいつも入っていく、この図書館裏口の隣で家の建築が始まってしまい、朝から柄の悪そうな仕事師からジロジロと視線を向けられる事になり、仕方なく一旦シマを変える事になった。

数日続けて団地脇の空間に駐めていると、今度は「駐輪禁止」の紙がサドルに貼られ、ならばと住人の目を盗んで軒下の駐輪場所にこっそりと紛れ込ませたりといった日々が続くうち、例の取り壊された社宅がいつの間にか柵で囲まれた駐車場になっていた。そして柵の外には、これまでそれぞれがどこに駐めていたのか、かつて見覚えのあるバイクや自転車が復活していたのである。

(これで、駐輪場所が確保できたゾー!)

と、ようやくホッと一息。かくて天気の良い日はこの空き地に、また雨の日は図書館か団地の駐輪スペースにこっそりと紛れ込ませて駐めておくという方針が、ここに決定をみた。

 雨の日は屋根のある図書館か、例の団地のような集合住宅の駐輪場に停めるのが当たり前のようになって来ていた。図書館の方は若干距離のある事に加え、ちょうど開館時間に被る9時半という時間の関係から、早朝井戸端会議のオバサンなどの人目に付きやすいという事情もあり、次第に集合住宅の駐輪場が定番になっていった。

その集合住宅は三棟あり、現場のビルから最も離れた棟(仮にC棟と呼ぶ)は、裏が民家と小公園になっているため、最も人目に付き難かった。このC棟を中心にして、雨の中を歩く面倒と通行人や自転車で通りかかりの人らに当たった時は、何食わぬ顔で走行者を装って素通りし、別のB棟(真ん中の棟)かA棟(一番近い棟)の、どちらかに停めるのが慣わしとなっていた。

A・B棟の場合はどちらも裏にまだ棟があるため、C棟に比べ人目に気をつける必要があるのだ。特にこの種の集合住宅の住人は、意外に好奇心を隠さず人々を観察している輩も少ないくないものなのである。自転車には、物件とフィットネスクラブの駐輪証のステッカーが二枚貼ってあるため、ひと目で他所の人間というのがバレバレであるという事情もあった。

 そんなある日の事。定時でそそくさと職場を後にし、例によって裏の集合住宅の屋根付き駐輪場へと向かった。その日は何故かいつもの見慣れた光景とは違い、棟の角のところに仮説のようなテントが建っていて

(ハテ・・・)

と首を捻る間もなく、喪服の団体が視野の先に入って来た。どうやら、この集合住宅のなかで通夜でもあるらしかったが、間の悪い事にちょうどその日に停めていた棟であるばかりではなく、選りによって愛車を停めて置いた真正面辺りに、もう一つ仮設テントが設けられているではないか。そしてどうやらそこが受付らしく、かなりの人集りがしていた (/||| ̄▽)/ゲッ!!!

 (うむむ・・・選りにも選って、ちょうど我が愛車の目の前とは・・・)

と呻いてみたものの、無断駐輪しているのはこっちだから、当たり前だが文句の言いようがない。

(これは、どうしたものか・・・)

時間を見るとまだ夕方の6時半だから、時間を潰してみたところで一時間やそこらであの集団が消えるとも思えず、寧ろ通夜ならばこれから益々弔問客は増えてくると考える方が自然だった。

しばらく通行人を装い、離れたところでさりげなくタバコを蒸かしつつ、携帯を弄くりながら様子見を決め込んだものの、やはり思った通り弔問客は続々と増えてくるばかりだ。

(こうなりゃ仕方がない・・・いつまでも待ってても、埒が開きそうにないし・・・)

ここで取る道としては「開き直って愛車を取りに行く」か「その日は諦めてバスで帰る」の二つに一つだったろうが、無精者のワタクシが殆んど迷う事なしに前者を選んだのは、言うまでもない。

(こうなりゃ、伸るか反るか・・・何か言われるかもしれないが、その時はその時だ・・・)

と開き直り、恐らくは誰の目にも団地のようなファミリー向け集合住宅の住人には最も見えそうにないのは承知の上で、ヤケクソ気味に愛車を「救出」に行った。ところが、どこまでも間の悪い事に、ちょうど目張りのようになった衝立の上の隙間から目に入った真ん前の住居こそは、どうやら通夜の主らしいではないか。

入れ替わり立ち代り、目の前で弔問客が出入りしているだけに、最早背後だけに注意を払っているわけにもいかない。そんな中で何食わぬ顔を装い愛車を取り出すと、前後両側から痛いほどの突き刺さるような視線を感じつつも、競輪選手も真っ青のスピードで(?)愛車をすっ飛ばしていった εεεεεヾ(*´ー`)ノ トンズラッ

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