2006/07/26

シューベルト 弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』(第4楽章)


この第14番につけられた『死と乙女』という題は、第2楽章に自身の作曲したリート『死と乙女』のメロディーをテーマにした変奏曲が置かれているために名づけられたものであるが、第2楽章に限らず全4楽章を通じて「死」のイメージが濃いことは否定できない。

 

この頃、シューベルトがまるで「死」と同居するような思いでいたことは、その手紙が語っている。

 

「一言で言うならば、僕は自分がこの世で最も不幸で最も惨めな人間だと思っている。 考えてもごらん。健康は二度と快復しそうにないし、絶望のあまり、ことを良くするどころか悪くしてしまう人間を。輝かしい希望も無に帰してしまい、愛と友情の幸せが苦痛以上のものとならず、美への感動も消え失せようとしている人間を。こういう人間を惨めで不幸な人間だと思わないか?」

 

「私の安らぎは消え去ってしまった。私の心は重い、私は安らぎを二度と決してもう二度と見つけることはない、と僕は今、毎日歌うことができるのだ。毎晩、床に就く時、もう二度と目が覚めないことを願う、そして毎朝昨日の苦悩を告げられるのだ。こうして僕は、毎日を喜びも友達もなく過ごしている」

 

4楽章

1楽章冒頭の「運命」のリズムが散りばめられたこのタランテラ風の楽章は、まさに「死の舞踏」と呼んでもいい。絶え間ない動きが、我々を狂気の渦に巻き込んでいく。 8分の6拍子で書かれた作品にピアノ・ソナタハ短調D958の第4楽章があるが、それよりも更に緊張度が高い。こちらはモノトーンで書かれているため、より逃げ道のない追い詰められた状況を強調するのである。切羽詰まった思いが、この楽章全体に漲っている。

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