2006/07/13

愛車の受難part1(Gシリーズ第8章)

 上京当時の住居は、現場から約ンkm程度の距離であった。住居から最寄駅までは、JRと京王線の吉祥寺駅までが徒歩十数分、京王線の三鷹台駅までも10分程度とまずまずだったが、口外禁止となっていた極秘の政府系の職場は、これら鉄道のラインからは大きく外れ、駅からバスでなければ通えない場所にひっそりと佇んでいた。

徒歩では吉祥寺駅からも三鷹駅からも、たっぷり20-30分以上はかかる。引越し前の引継ぎ期間中は、吉祥寺駅からバスで通ったり三鷹駅から歩いて通っていたが、引越し後は直ぐに自転車を購入した。引継ぎの時に前任者の、あの超嫌味なM氏に

「いずれは、自転車で通おうと思ってますが・・・」

と言うと

「ここは自転車置き場がないから、置くところは自分で探すしかないな」

と、ニベモなく言われた。

「ビルの下に、駐輪場みたいなのがあったようだけど・・・」

「あれはここのビルの会社専用のだから、オレたちは無理だな・・・どっかに青空駐輪するしか手はない」

と嫌味なM氏は、さも嬉しそうにニヤニヤしていた。

「Mさんは駅から、バス通勤?」

「普段はそうだけど、2時間もかかるからなー。だから、たまにバイクで来る時もあるよ・・・バイク(450cc)なら1時間と少しだし、よっぽど早いからなー」

M氏は、遠く横浜辺りから通っていたらしい。

「じゃあ、そのバイクの置き場所は?」

「それは内緒だな・・・秘密の場所に置いてあるんだ・・・」

「そんな都合の良い場所があるの?
コンビニの駐車場とか?」

「あんなガラス張りの素通しのところで、一日中ずっと停めておいたら目立ってしょうがないだろ?」

「しかし・・・そんな格好の場所は考えられんし・・・」

「あるんだな、それが・・・」

と一人で愉快そうに笑うのみで、ハナから教える気がなさそうだった。

 その後、何度か訊いているうちに

「場所自体は絶対に教えられんが、ヒントをやるから自分で探してみればいい・・・この近くで、どこかの会社の社宅みたいなところだ・・・」

「社宅?
そんなとこに停めたら、オバサン連中の目が光ってそうだし?」

「それが、そーでもねーんだな・・・その社宅には幾つかの棟があって、一つだけ明らかに誰も住んでいない幽霊棟のようなところがあるのだ・・・しかし、なぜか不思議にバイクやら自転車やらが、幾つも置いてあるんだな・・・その中に紛れ込ませているんだよ・・・」

と、嫌味なM氏は一人でニタニタと笑っていた。

 「しかし・・・何故、その棟だけ誰も住んでないとわかるの?」

「わかるんだな、それが・・・オレはいつもそこへ行ってから着替えしてるんだが、明らかに誰も住んでないんだよ・・・フフフ」

しかしながら探すのも面倒であり、また探す気力もないままに、いよいよ引き継ぎ最後の日を迎えた。

「さあ、取り敢えずこれで、オレの教えるべき事は総て教えたぞ・・・後はにゃべさんと内緒の話があるから、ちょっと外へ出ようじゃないか・・・」

(まさか、喧嘩を売ろうというのではあるまいな?)

嫌味で偉そうなM氏とは、引継ぎ中にも何度も口論となっていただけに止まらず、会社を巻き込んで辞める辞めないの騒動にまで発展した経緯もあった。

しかしながら、最終日らしく長閑そうな顔をしたM氏は

(あー。外は気持ちがいいねー)

と、建物の裏にひっそりと佇んでいる自家発電の施設や、粗大ゴミの廃棄所などを案内して回ると、敷地から外へ歩き出した。

「ちょっと、にゃべさんに見せたいものがあってね・・・」

と後を着いていくと、どこかの社宅のような建物が軒を連ねるところへと入っていったのだ。

「もしや・・・前に言ってた、バイクを置いてあるところって・・・」

並んでいる建物を突っ切っていくと、なるほど一番奥の方の棟は確かに人気がなさそうで、建物の端にバイクやら自転車が何台かがひっそりと並ぶようにして停めてあった。

「ほー。こんな場所があったんだ・・・」

「これらは殆どが、あのビルに来ている連中のだよ・・・オレの知ってるのも数台あるね。しかし世の中には、もっと図々しいのがいてな・・・」

さらに奥へと歩を進めると、屋根の付いた階段の脇のところに大型のバイクが一台、デカイ顔(?)をして堂々と停めてあるではないか。

「これは・・・もしや・・・?」

「アハハハ。こういう図々しいのもいるわけだ・・・」

と一人、高らかに笑うM氏だった (≧∇≦)ブァッハハ!

0 件のコメント:

コメントを投稿