2006/07/30

「灘」の生一本

 <」は沖合の中で波が荒く、潮流が速い所を指す。さんずいに難という字の如く古くから航海が困難な場所とされ、そのため沿岸には避難港が発達している。とりわけ、黒潮(日本海流)が流れる太平洋側に多く分布する。その反面、鹿島灘以北の太平洋岸には、全く灘が見られない。これは「灘」という地名の由来が、海運交通の発展と関係が深いと思われる。

一方、瀬戸内海にも灘が多数分布する。だが、この灘は穏やかな水域が多く、本来の定義から大きく反する>

<瀬戸内海や豊後水道にも、灘が多く分布する。しかし、これらは洋上のものとは逆に、水面が穏やかなものが多い。これは「灘」には風や波が荒く航海が困難な場所という意味のほか、陸地の沖合で島が少ない地域を指す事があるためである。また神戸市東部の灘に代表されるように、目の前に海原が広がる一帯に灘という地名が付けられている事例がある。

よって、瀬戸内海を航海中は至る所に小島が見られるが、灘と呼ばれる場所は島が少ない事から海原を表す「灘」と名付けられた、と考えられる。海上保安庁の見解では、航海に注意を要する狭い海域と認識されている>
出典Wikipedia

さて「灘」と訊けばワタクシのようなノンベエは、やはり真っ先に「灘の生一本」というところを連想してしまいます。

<灘五郷(なだ ごごう)は、日本を代表する酒どころの一つ。西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の総称。現在の兵庫県神戸市の東灘区・灘区と同県西宮市を合わせた阪神間の一部地域を指す。

日本酒造りに適した上質の酒米(山田錦)と、ミネラルが豊富な上質の地下水(宮水)が取れ、寒造りに最適と呼ばれる六甲颪(おろし)が吹き、そして製品の水上輸送に便利な港があったことから江戸時代以降、日本酒の名産地として栄えた。大手日本酒メーカーの多くが灘五郷を発祥地及び本社としているほか、現在も中小の酒蔵が点在する。

灘五郷の酒で、有名なものをざっと列挙していくだけでも

・今津郷・・・「大関」、「白雪」
・西宮郷・・・「黒松白鹿」、「日本盛」
・魚崎郷・・・「松竹梅」
・御影郷・・・「剣菱」、「白鶴」、「菊正宗」
・西郷・・・「月桂冠」、「沢の鶴」、「富久娘」

と喉が鳴るような錚々たる銘酒、名酒のブランドが並んでいます。

ポリネシア語による解釈
<神戸市に東灘区、灘区があります。「灘」の地名は古く尼崎市と西宮市の境の武庫川河口から、神戸市中央の旧生田川河口に至る長さ20キロメートルに及ぶ広い地帯を指していました。酒造で知られる「灘五郷」を含んでいます。

「灘」とは、通常

 (1)
川の流れの速いところ。早瀬。
 (2)
風波が荒く航海の困難な海」

 を言うとされ(『広辞苑』第三版)、何故ここの地名を「なだ」というかは疑問とされています。

この「なだ」は、マオリ語の「ナチ」、NATI(contract,pinch)、「(山と海に挟まれて)締め付けられている(狭い土地)」の転訛(「ナチ」は、しばしば「ナチア、NATIA」の形をとることがあり、ここから「ナタ」となり、濁音化した)と解します。

類例は、全国各地に分布しています。

大分県杵築市奈多(なた)は、見立山から延びた尾根と海岸に挟まれた狭い場所で、式内社奈多八幡宮が鎮座しています。福岡県福岡市東区奈多(なた)は、海の中道の付け根にあり、博多湾と玄海灘に挟まれた狭い場所です。徳島県海部郡海部(かいふ)町の奈佐(なさ)湾は、細長い岬に挟まれた狭い湾です(「ナタ」のT音がS音に変化して「ナサ」となったと解します)また、和歌山県の那智(なち)の滝の「ナチ」も、狭い峡谷に落ちる滝の意で同じ語源です。

なお「ナチ・ナタ」と全く同じ意味の「クチ」という地名もあります>

  さて、今宵の酒はどれがいいかな (。 ̄Д ̄)d

2006/07/26

「めしや丼」改め「やよい軒」


 東京に引っ越した当初は、朝から近所にある「松屋」に朝定などを食べに時折通っていた。東京には「やよい軒」や「大戸屋」、或いは「日高屋」などのチェーン店が、あちこちにあるのはありがたいが、吉祥寺には「大戸屋」、「日高屋」は数件あるのに「やよい軒」の店舗がない。

免許の更新に行ったのがちょうど昼時で、食事はどこでしようかと物色していると、見覚えの懐かしい店構えが目に入った。それが「めしや丼」だったが、いつの間にやら「やよい軒」と屋号を変えていた(余談ながら当時は、てっきり地元愛知にあった「ザ・めしや」と同じチェーンだと思い込んでいた)

その日は梅雨の晴れ間という感じで、真夏の太陽がギラギラと照りつけるような暑い日だったため「穴子めしとざるうどんのセット」をオーダーし、冷たいお茶を飲んで待っていると新たな客が次々と入って来る。お茶を二杯、三杯と重ねて飲んでいるうちに、サラリーマン風の客が入ってきた。

外食の時は、出来るだけ空いている店を選んで入ることにしているが、それでも不思議とワタクシが店に入ると、途端にわっと客が入ってきたりするケースが多いのは昔からだ。単に空いている店を選ぶだけではなく、出来るだけランチタイムで混雑する時間帯を避けるのが常だから、決してランチタイムが始まってどっと客が増えた、と言うわけでもない。

カウンター主体の店では、出来るだけ周囲や対面に人の居ない席を選んで座るようにしているが、決まって料理が運ばれてくるようなタイミングで、対面や隣に誰かが来たりする。

「さあ、食べようか」

というところで、対面や隣に人が来られるのが最も嫌なのだが、これが常に「狙ってでもいたかのような」最悪のタイミングなのである。

(オイオイ、なにもわざわざ対面に来なくとも、他に幾らでも空きがあるでしょーが!)

と、文句のひとつも言いたくなる。案の定、その時も「料理が運ばれて来るタイミングを狙っていたかのように」、ちょうどU字カウンターの向こう側の目の前の席に、さも当然のように陣取ったリーマン。運ばれてきた「穴子めしとざるうどんのセット」を食べていると、程なくして向かい側に湯気の立ち込めた鰻丼と味噌汁が運ばれて来た様子だ。

U字型カウンターの中央には刷りガラスのようになった衝立はあるものの、衝立下の隙間から相手の料理が見えている。

(このクソ暑いのに、よくあんな熱い物を喰う気になるものだ・・・)

決して鰻丼を食べる金がなくて穴子めしを食べているわけではないから、心底そう思っていたのだったが

「隣の芝生は青く見える」

とはよく言ったもので、旨そうに鰻丼を突付く目の前の客を見ているうちに

(オレも鰻丼にすれば良かったか・・・)

と後悔の念が沸々と  (;´д`)