2005/06/30

ホルスト 組曲『惑星』(金星&水星)

 金星、平和をもたらす者 原題:Venus, the Bringer of Peace


緩徐楽章に相当する。主に三部形式。主調は変ホ長調だが、途中一部の楽器が嬰ヘ長調になる部分がある。中間部にはヴァイオリンやチェロのソロもある。


水星、翼のある使者 原題:Mercury, the Winged Messenger 

スケルツォに相当する曲である。ホ長調と変ロ長調の複調が用いられている。主に二部形式。ホルスト自身がフルスコアを書いたのはこの曲のみで、この曲を「心の象徴」と述べている。複調故に楽器の交代が多く、オーケストラの腕の見せ所である。

2005/06/29

ホルスト 組曲『惑星』(火星)

 

かつて教育テレビの「N響アワー」という番組に、宇宙飛行士のM氏がゲストで出演していた。その人は初めて宇宙に行った時に、真っ先に頭に浮かんだのがホルストの組曲『惑星』であり、その時の心境を

 

「ホルストという人は、本当は宇宙に行ってそこの景色を見て来たのではないか・・・としか思えないくらいに、イメージ通りの音楽だ」

 

といった表現で、作曲家の完璧なまでに見事な描写力を絶賛していた。

 

が、これはズバリ、M氏の認識不足であるとしか言いようがない。天才、若しくは一流とまでいわれる芸術家の能力こそは、殆ど超能力といっても良いだろう事は歴史上の数々の傑作が証明しているのである。

 

さて、そのホルストの『惑星』という曲は、別に宇宙などは知らなくとも、音楽そのものだけで充二分に楽しめるエンターテイメントである。元々が、吹奏楽を得意としていたイギリスの作曲家ホルストが、突如としてこの大規模な組曲に取り組む切っ掛けとなったのは東洋占星術に凝り始めたためで、時は第一次世界大戦真っ只中の頃の話である。

 

この組曲は

・第1曲 火星、戦争をもたらす者(Mars, the Bringer of War

・第2曲 金星、平和をもたらす者(Venus, the Bringer of Peace

・第3曲 水星、翼のある使者(Mercury, the Winged Messenger

・第4曲 木星、快楽をもたらす者(Jupiter, the Bringer of Jollity

・第5曲 土星、老いをもたらす者(Saturn, the Bringer of Old Age

・第6曲 天王星、魔術師(Uranus, the Magician

・第7曲 海王星、神秘主義者(Neptune, the Mystic

 

という7つの曲から成っており、組曲が完成した後の1930年に発見された「冥王星」は、当然の事ながら含まれていない。

 

火星、戦争をもたらす者 原題:Venus, the Bringer of Peace

日本では「木星」に次いで、よく知られている曲である。第一次世界大戦の頃の作品のため、その時代の空気が反映されていると指摘されることがある。不明確な調性、変則的な拍子など、ストラヴィンスキーの『春の祭典』からの影響が大きいといわれる。再現部の第2主題と第3主題の順序が入れ代わっているが、ソナタ形式に相当する。

 

「ダダダ・ダン・ダン・ダダ・ダン」という5拍子のリズムを執拗に繰り返す。 このリズムは木製のマレットでティンパニ、弦楽器のコル・レーニョとハープで演奏される。提示部第3主題でのテナーチューバ(ユーフォニアムで演奏されることが多い)のソロが、オーケストラにおけるこの楽器の秀逸な用例としてしばしば言及される。

出典Wikipedia

2005/06/28

口八丁

  (あー、オレは一時の感情任せに、なんて愚かなことをしたんだろう。あんな胡散臭いヤツに、勿体ないことをした。これで明日はカップ麺で我慢だな・・・)


 と後悔に苛まれながらも二人前の料金を払って店を出ると、意外にもそこにサギ男が待っていた。

 「いやー、ホンマ助かったわ・・・おおきになー。見ず知らずのオレみたいなモンに救いの手ぇ差し伸べてくれはるとは、ホンマありがたいこっちゃ。まだまだ世の中、捨てたモンやおまへんな (*´*) ウヒョヒョヒョ

 男はオーバーなセリフで、拝み倒さんばかりの格好だ。

 「ははは・・・んなオーバーな・・・」

 「いやいや・・・今日ちゅー今日っかりは、オレも感激したがな。この借りは必ず熨斗付けて返すやって、名前教えてくれヘンか?
 
かくゆうオレは、経済学部のダテゆうモンやが・・・」

 「いいよ・・・今日の分は奢ったものと思っているから」

 「そーはいかへんで・・・このままでは、俺の気ぃが済まへん。なあ、名前くらい教えてくれたってもえーやん?」

 「オレは・・・文学部哲学科のにゃべさ」

 その後、あのサギ男から金が帰ってくるものとは、最初から当てにはしていなかっただけに

 (あれは、ヤツに奢ってやったのだ・・・)

 と割り切っていたが、案の定その後なんの音沙汰ものない現実を目の当たりにすると

 (勢いとは言え、返す返すもバカな真似をしたものだ・・・そもそも、あんな見るからにインチキ臭いヤローが、わざわざ返しに来るわけねーじゃねーか)

 と、しばらく思い出しては後悔した。

 この場合、もちろん600円」という金額よりも、一瞬でもシンパシーを感じた相手に見事に一杯喰わされたという恨みが大きかったが、さすがに時の経過とともにそんな出来事さえ忘れていった。

その後、暫く経った或る日の事。

 

ラウンジでコーヒーを飲みながら本を読んでいると、アナウンサーか声優のような惚れ惚れする美声で、なにやら弁舌爽やかに滔々とまくし立てる大きな声が聞こえてきた。

 (ん?
 どっかで聞いたような美声だな・・・?)

 と振り返ってみると、驚いた事にあのダテメガネのサギ男ではないか!

 例によって、胡散臭い黒縁のダテメガネを斜めにずり下ろしたインチキ臭い風貌で、数人の女子に囲まれながら、立て板に水の如くに熱弁を振るっていた。

 実に、この男の話術こそは天才的であった。単に異常なまでに通りの良い声質だけでなく、弁舌爽やかかつ計算され尽くされたような心地よいテンポの関西弁は、まさに詐欺師かデマゴーグ特有の天才的な雄弁の主と言えた。

 これがこの男の本性か、先日とはエライ違いだ。振り手振りで、綺麗な女子どもを相手に熱弁を振るっている姿は、さながら街頭演説で無垢な市民を手玉に取る悪玉政治屋を彷彿とさせる迫力だけに、聞き手の女子たちもうっとりと陶酔的な目を輝かせて見つめていた。

 

ところで、これはにゃべにとって最も許せないタイプなのは間違いない。さらに、この時期は誰からも相手にされず、関西村で孤立を深めていたころだ。これに対し、初対面では自分と同じく孤立してみえたこの男が、実は「関西村の村長」よろしく誰よりもデカい面をして、みなの喝采を浴びて悦に入っているかのように見えただけに、この男のお調子者ぶりが余計に許せなかったとしても無理はない。


 (あのサギヤローが、図に乗りおって!

まったく、口だけは達者なヤローだな。
 よし、いっちょ驚かしてやるわ・・・)

2005/06/25

サギ学生? (; ̄ー ̄)...ン?

毎日、学食の不味い食事ばかりではさすがに飽きが来るため、その日は珍しくワンランク上のレストランで食事をしていた。

 

食後のコーヒーを飲みながら一服していると、目の前の席に陣取っていた三人組の男子学生らが、なにやら揉めている。三人のうちこちら向きに座っていた男が、オーバーな身振り手振りで目の前の二人を説得しようとしている様子だった。

 

「ホンマに忘れたんやって・・・誰が、たかだか600円の定食くらいなものを、たかろうとするかいな」

 

「いつもの手やな・・・」

「そやそや・・・前にもこの手で、いっぱい食わされたし・・・立て替えた金も、結局ウヤムヤになてもうたわ」

「計画的犯行ちゅーやっちゃで」

「アホ抜かせ・・・」


 どうやら、聞こえてくるやり取りから類推するに、こちら向きになっているダテメガネのオトコが財布を忘れたため、連れの二人に立て替えを頼んでいる様子だったが、前の二人は頭から「計画的犯行」と決め付け、まったく取り合っていなかった。


 三人の親しげな感じから、おそらく高校の同窓で過去にも「前科」があったのかもしれない。そうした先入主のせいか、ダテメガネにしか見えないような黒縁を斜めにずり降ろして引っ掛けているその男は、見るからに人を騙しそうなインチキ臭いイメージが漂っていた。

 

 「金があれば奢ってやるとこやが、生憎オレも持ち合わせがないよってな・・・こうなりゃ得意の口八丁で、(食堂の)オヤジを丸め込むこっちゃな・・・」

 と捨て台詞を吐くと、連れの2人は荒々しく席を蹴って帰って行った。

 こうして友人に見捨てられた、惨めな男は

 「連れ甲斐のないヤツラや (Д´)y-~~ちっ」

 と、捨て台詞を残し消えていった。

 京都に来てまだ友人がまったく出来ないまま日々寂しい思いをしていた男は、目の前で展開されているこのやり取りを「関西村」という別世界の出来事として、ボンヤリ眺めていた。

 ところが少し経ってからレジに向かうと、先のダテメガネのサギオトコが、今度はレジのオヤジと揉めているではないか (゜艸゜;)フ゛ッ

 「いや、ホンマに忘れてん・・・そやから明日持ってくる、ゆーとるやん・・・今日の分はつけにしといてーな」

 「飲み屋やあるまいし、学食でツケなんてできるかいな・・・なにゆーてんのや・・・」

 どうやら、本当に忘れたのかどうかはさておいて、男が金を持っていないのは事実らしかった。

 いくらなんでも、最初から踏み倒そうという計画でもないだろうから、忘れたという事自体は満更、嘘ではなかったのかもしれない。

 「そこまで言うんやったら、なんなら学生証かて見せてもえーで、オっちゃんよー」

 と尚も賢明に食い下がっていたが、こうしたやり取りに慣れているのか、或いは元々クソ度胸が据わっているのか一歩も引くつもりはないらしく、感心するほど堂々たるものだ。このやり取りのあおりで、しばらく待たされる格好になった男は、次第に誰からも信用されないこの男が、なんだか気の毒に思えてきた。

 「よーよー分からず屋のオヤジやな・・・」

 「オマエこそ、よーよー口の減らん学生やで」

 と両者のやり取りも、いつの間にか激烈なものに変って来ており、傍目にも最早収拾は難しい展開に思えた。

 「じゃあその金は、オレが立て替えておくよ・・・」
フォームの終わり


 サギ男とオヤジが、同時にキョトンとした顔で振り返った (  ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!

 元々、このようなバカゲタ義侠心があるわけではないし、ましてや見知らぬ男の食事代を肩代わりするほど、懐が潤っていたわけでもない。それどころか仕送りの貧乏学生の身だから、懐は常にピーピーしていた。

 では何故この時、ガラにもない義侠心を起こして、見知らぬサギ男の食事代を立て替えようという気になったのか?

 その解は、実に簡単である。京都という見知らぬ地に来て、友人も出来ず日々寂しい思いをしていた事が、その要因に尽きる。この初めて見るダテメガネのサギオトコが実際にどんな学生なのか知る由もないが、皆から信用されず窮地に追い込まれているこの男の姿(実は、まったく誤解をしていたことが後に判明する)が、その時の心境においてシンパシーを感じずにはいられなかったのである。

 言ってみれば彼の四面楚歌の状況が、
その時の自分の置かれている立場にそっくりではないか、と感じたのである。そのような軽はずみで、自分でも気づいた時に普段ではありえないような、先の行動に出ていたのだった。

 「学生はん・・・そらアカンわ・・・」

 「なんで? 
 財布忘れる事くらいあるよ、オレだって」

 「しかし・・・」

 親父が


(これは忘れたのではなく、計画的な犯行だからね)


と言いたげなのは、もちろん理解している。


「せやけどダンさんもヘッタクレモあるかい・・・アンタは帳尻さえ合やー、そんでえーんやろ・・・これ以上グダグダゆーとったら、教授に報告やるで」 

 とサギ男は捨て台詞を残すと、店を出て行った。

2005/06/22

ハイドン 交響曲第100番『軍隊』(第4楽章)

 


ザロモンによる口説き落としによって、1791年、1792年、1794年の3年間にハイドンを指揮者に招いてのザロモン演奏会が行われることになった。

 

ハイドンも、その演奏会のため93番から104番に至る多くの名作、いわゆる「ザロモン・セット」と呼ばれる交響曲を生み出したわけだから、後世の我々はザロモンに対して、どれほどの感謝を捧げたとしても捧げすぎるということはない。

 

この曲の『軍隊』というサブタイトルの由来となったのは第2楽章だが、最大の聞きどころは同じく軍楽太鼓が活躍する最終楽章とも言われる。

 

ソナタ形式による完璧な造形は、最後の作品となった第104番『ロンドン』と並び、ハイドンが書いたもっとも充実した音楽の一つと言える(その後のモーツァルト、ベートーヴェンという巨人の登場によって、その輝きがいささか色褪せて見えてしまっているが)

 

全編ハイドンらしい親しみやすいメロディに溢れ「さすが名人!」といいたくなるような、非常にバランスの良い美しい曲なのである。

2005/06/21

ド忘れの達人ミスター(偉大なる奇人変人・ミスターpart2)

 まずミスターのパーソナリティで、最もミスターらしいところといえば、この「
ド外れた物忘れの達人」という点に尽きるでしょう。

.「二オカ、打たなくて良いぞー!」事件
上原ルーキーの年の話です。この年ルーキーながら、20勝を上げるという破竹の快進撃を続け最多勝、沢村賞を始め投手タイトルを総ナメにした上原。同じドラフトで、この上原に続く2位に指名されたのが、ショートの二岡でした。

「二オカは、将来クリーンアップを打てるような逸材だよ。久々の大型ショートストップだ」

と当初から、ミスターは絶賛しておりました。そして八面六臂の大活躍を見せた上原の蔭に隠れはしたものの、ショートとして1年目から、まずまず期待通りの活躍をしたのが、この二岡でした。

その年のシーズンも終盤に入り、球場には時折冷たい秋風が吹く消化試合の時期を迎えた頃の事です。点差の開いた展開で、この日も好投を続けていた上原に、打順が廻って来ました。通常こうしたケースのピッチャー打者は、怪我をしないようにベースから遠く離れてただボーっと立っていれば良いところですが、ルーキーでありまたバッティングの好きな上原だから、欲を出して打ちにいって怪我をされてはと気を廻したミスターが、ベンチからバッターボックスの上原に大声で怒鳴ったまでは良かったのですが・・・

「オーイ、ここは打たなくていいからなー。打たなくて良いぞー、二オカー!」

ルーキーながらそこそこの働きを見せ、すっかり皆から名前も憶えられて来たと思っていただろう、ミスターの隣に座っていた二岡選手の胸中に、冷たい隙間風が吹き込んできたであろう消化ゲームのヒトコマでした(*´m`)

.勝手に人名創作
自軍の選手の、しかもバリバリのレギュラークラスの名前すら満足に憶えているかどうかも怪しいミスターだから、他チームの選手の名前に至ってはかなりシッチャカメッチャカであったりします。2003年に圧倒的な強さで、リーグを制覇した阪神のゲームでゲスト解説に招かれたミスターは、例の甲高い口調で阪神の強さを分析していました。

「(前略)・・・それと、今年の阪神は他チームから移籍してきた選手が良く働きましたねー。バッターボックスに入るカタオカ然り、そしてピッチャーで言えば『イラベ』然り・・・」

え? イラベ?  そんなヤツいたっけ? ( ´艸`)ムププ

.堀内投手牽制暴投事件
ミスターが現役時代の話で、マウンドにはエースの堀内投手が三塁にランナーを背負ったピンチという場面。サードのミスターが、堀内投手の所へと駆け寄り

「オイ、ホリ! 三塁ランナーのリードが大きいから、オレの方を良く見ていろ。オレが帽子の庇にさりげなく手をやったら、牽制のサインだからな・・・」

と、耳打ちしていきました。

当時のミスターいえば、いうまでもなく後輩から見れば神様みたいな存在ですから、さしものやんちゃな悪太郎といえど「わかりました!」と素直に頷くと、改めてセットポジションに入ります。そこでサードに眼をやれば、早速ミスターが帽子に手をやっていました。

堀内投手は言われた通りに素早く牽制をしますが、何故か当のミスターは知らぬ顔で棒立ちのままだったからたまらない。悪送球となったボールは、転々とファウルグラウンドに転がっていき、その間にサードランナーは労せずしてホームへ還り、手を叩いて悦んでいます。

すると、どうしたことでしょうか。
すかさず血相変えたミスターが、鬼の形相で脱兎の如くマウンドに駆け寄ってくるや

「コラ、ナ二やってんだ、オマエは! 勝手に牽制など投げるんじゃない!」
と怒鳴り始めたから、たまらない。これには、さすがに悪太郎も激怒し

「だって長嶋さんが帽子をさわったら、牽制しろって言ったんじゃないですか! サイン通り投げたんだから、ちゃんと捕って下さいよー」

とクレームを付けた事は、言うまでもありませんが

「バカを言うな! オレは、そんな事を言った憶えはない!」

と、当のミスターは平気の平左でどこ吹く風とばかり、まったく取り合ってくれません。

結局、記録的には「堀内投手の悪送球」として処理され、哀れ悪太郎はこの「悪送球」が痛恨の決勝点となって、敗戦投手の憂き目を見る事になってしまったのでした
TT