2012/11/28

回想(秋の乱part4)

同じK社長から、次に舞い込んで来たのは携帯キャリアの案件だ。

 

前回しつこく誘ってきていたのとは別の、ライバル関係にあるキャリアである。スマホやLTEなどの需要増の関係から、携帯キャリアの求人はあちこちから来ていた


 これはK社長がしっかりと伝えてくれたようで、得意のマネージメントに特化したPM案件だった。ようやく方向性にマッチする案件だったこともあり、面接で大風呂敷を広げてみせると、即座に


 「ぜひ、お願いしたい」


 と、その場で金額提示も含めた即答があった。


 この日は金曜だったが


 「月曜の午前中までに返事を下さい」


 とのことだ。

 

大手キャリアのPM、そして条件も悪くなく内容的に文句はない。ただ気になるのが、現場がやや遠いことだった。あとは、常々


 「うちは薄利多売だから・・・」


 と口にしていたK社長が、どの程度の額を提示してくるかだったが、K社長の提示してきた額は驚くほど下がっていた!


 (こんなに抜いていたのか・・・これの、どこが「薄利多売」だ!
 ということは以前の仕事の時も、こんなに抜いていたのかよ、チクショーめ!)


 と激怒したタイミングで、例のもうひとつの携帯キャリアの案件が再度復活してきたのである。

 「今の現場は10月で終わりと聞いていましたが・・・例の携帯キャリアの件で、またラブコールがありましたよ・・・その後の状況は、いかがですか?」
 

と聞かれた。
 

以前にも書いたように、この件については現場が1か月延長が決まった時に


 1か月も先まで待てないと言っている」


 と言ってきたため


 「別に待ってもらう必要はない。そもそもあの件は面接後に辞退したので、自分の選択肢にはない」


 と宣言していた。


 その後も、このT社長からは幾つか別件の紹介があったが、どれもがイマイチだった。


 ところが、延長した「1か月」が終わりに近づいたタイミングで


 「またしてもラブコールが来まして・・・11月からでも是非にということで、なにせこっちはすでにOKが出ているのだから、あとはにゃべさん次第で11月から即決まりの話です・・・」


 ということだ。


 とはいえ、前回の面接時とはポジションや役割がまったく異なるわけだから、怪しい部分もあった。


 「前回面接で聞いた内容とあまりにもかけ離れているので、もう一度話を聞いてみないことには・・・」


 と伝える。


 「それ以前に、あれから色々とお誘いがあって、かなり状況も変わっているのが現状です。今日も午前中に面接に行った携帯キャリアから、その場でOKが出たし・・・」


 「それで・・・そっちの方は、どうでしたか?」


 「正直、どうしようか迷っているところですが、月曜の午前中までに回答しないといけないので」


 と告げると


 「では、こちらの方も早急に面接の設定を」


 と大慌てて電話を切ると、土曜の面接を設定してきた。

 

 ところでX社の案件と言えば、4年前に関わったことがある。その時は、次のような経緯があった。


 この時は、最初に話を持ってきた営業が怪しいヤツで、かなりの金額を抜いていたため条件が合わず辞退した。


 ところが、その後に上の会社から


 「面接をした元請から是非と言われていて、断ったら自分の顔が潰れるから、考え直してくれないか」


 と請われた。


 「内容としては自分も興味はあるが、単価が合わなかったので・・・」


 と伝えると


 「そんな気がしていましたよ。それに関して、ぜひとも相談したい・・・」


 と、新宿に呼ばれる。


 中村屋のカレーバイキングをご馳走になり、さて本題に入った。

2012/11/21

携帯キャリア(秋の乱part3)

 「ならば、たとえば部長の補佐のような形で、マネージメントをやるというのならやりますか?」


 と、なおもF社長からはしつこく食い下がられたものの、紹介元のT社長には辞退のメールを入れ、この話はここで終わった・・・はずだった。


 が、まだ話は終わらなかった。


 面接を担当した部長というのが現場リーダーだったが、この部長に大いに気に入られたらしく


 「是非とも来ていただきたいので、意向を踏まえた上で先日とは別の上のポジションを用意します・・・」


 と、F社長経由でしつこいくらいにメールが来る。


 紹介元のT社長などは


 「熱心なラブコールが来ていますので、再度考えてもらえないか?」


 とは言うものの、前回の面接の時から180℃話が変わっているから、これを俄かに信じるわけにもいかない。なにより、今の現場をスンナリと辞められるかどうかの方が、先決問題であった。


 その現場の方では、今後M証券がらみの案件はK氏を担当とし、某県庁リプレースという大規模案件のマネージメントを任せるので、しばらく延長してほしいという話になった。


 「今度はマネージメント案件だから」


 というのに対し


 「取り敢えずは1か月延長して、様子を見ながら11月以降のことを決めてみてはどうか?」


 という所属会社の顔を立てる形で合意したものの、マネージメント案件とは名ばかりで、やはり中身はConfigや手順書作成といった実作業がやたらと多かった。


 例の携帯キャリア案件を紹介してきたT社長に「1か月延長」の旨を伝えると


 「延長ですか・・・」


 と、明らかに気落ちした様子で


 「確認したところ、やはり10月頭から来て欲しいとのことで、1か月は待てないと・・・」


 「あの件は、こちらの方で辞退した話なので、特に待ってもらう必要性はない。 他の件同様に選択肢の一つに過ぎないし、他にも紹介してくれる会社は幾つかありますので」


 と告げると


 「折角、いい話だと思ったんですけどねー」


 と、あくまでその話に執着していた。

 

とにもかくにも、1か月の延長期間を勤め上げた。その間も、元請の営業から


 「案件途中で抜けられるのは問題がある。せめて、12月末まで続けてもらえないか」


 と何度も要請されたが


 「事前に聞いていた内容と違うので、10月一杯で辞める意向は変わらない」


 と突っぱねてきた。


 そうこうするうち、幾つかかの面接依頼が舞い込んできた。まずは、以前からの知り合いのK社長から指定された京橋の会社を訪ねる。


 (以前に来たことがある気がするが・・・)


 と思っていると、案の定数か月前に面接に来たのと同じ、ちょび髭の小柄な担当者が現れた。


 「いやー、お久しぶりですね・・・」


 という担当者が切り出したのは、前に勤めていた某大手金融機関の大規模プロジェクトの件である。

 

この職場には、5月にPMOとして参画していたが、PMがダメなヤツだった。本来、PMOというのはPMとは別に機能するもののはずだが、PM補佐的なこともやらされた。


 このPMが作ったPJ計画書の出来が悪く


 「修正してくれないか」


 と言われたのをいいことに、大幅に作り替えたことで益々関係が悪化していた。


 最後は、喧嘩別れのような形で


 (あんな会社は、どうせ次工程で失注に違いない!)


 と方々に言い触らしながら、ケツをまくって辞めた経緯があった。実際に次工程の受注は、かなり怪しい状況だった。


 面接で話を聞いていると、かつてやっていた要件定義~基本設計を大手コンサルファームが作成しているというから、やはりあの会社は「失注」した模様だ。


 このプロジェクトは、顧客となる某金融機関お抱えのSI担当者が相当な難物らしく、元請の世界最大コンサルファームA社も相当に頭を悩ませていた。確かに数か月前の面接では、この大手金融プロジェクトとは別に銀行系や損保統合など、A社が抱えるいくつかの案件があるという話だった。
 が、今回は募集は、大手金融機関の大規模プロジェクトのみに限定されていたことからも、人が定着せずにいかにそのPJが難しいかを物語っているようだった。

 

さらに話を詰めていくと、自分が携わっていた数か月前と同じ「要件定義~基本設計に移るところ」というから、数か月前から話がまったく進んでいないのである。かつて自分がPMOとして関わっていたプロジェクトだから、話を聞いただけでいかに停滞しているのか、つまりはいかに酷い状況になっているかが手に取るようにわかった


 またそんな状況だからこそ、内情に詳しいこちらに対し殊更に


 「それだからこそ、逆にやりがいがありませんか?」


 などと、熱心に奨めるのである。その場で即座に断りを入れてもいいが、この様子ではしつこく誘われそうで面倒だと思い


 「検討して、営業経由で回答します」


 と逃げを打っておく。面接後も、事情を知らない間に入った営業は


 「是非来て欲しいという感触でしたが、いかがでしょうか?」


 と、単純に喜んでいたが、しつこい誘いを振り切って即座にK社長に断りを入れた。


 が、嫌な予感は的中し、すぐにK社長から


 「先方は大変に乗り気で、にゃべさんが誤解をしているようだから、もう一度考え直してもらえないかとしつこく言ってきております」


 というメールが舞い込んできたが


 「誤解などはしておらず、あの仕事を受けるつもりはない!」


 と、キッパリと振り切った。

2012/11/18

後悔(歯医者地獄)(7)

(そもそも、セラミックが「永久に虫歯にならない」という保証があるのか?

「永久」などといっても、未来のことなどどうなるかわからないではないか。虫歯になったら、金を返してくれるのか?

そんなことはあるまい。そうなったら、なんだかんだで別の理由をつけてくるに違いない。

虫歯までは行かないまでも、入れたセラミックが取れないという保証はない。そんな場合はおそらく、使い方が悪いと言ったような別の理由をつけてくるのだろう。そもそも、この医師が信用できるのかどうかも甚だ疑問である)

 

と、そんなことを考えていると

「もし、そのような治療をお望みなら、どこか他院でということになるかと思います・・・」

という言葉が返ってきた。

 

「ちょっと、考えておきますよ・・・」

と言葉を濁して、出口のドアのところを見上げると、そこには

《当院は、永久に虫歯にならないファインセラミック治療のため、安心です。「卑金属」の治療は行っておりません》

という看板が掲げられていた。

 

上のようなもっともらしい理由を幾つも並べたが、実はそれ以前にもっと根本的な問題が存在した。そもそも「40」という治療費が払えない、と言うことだ。勿論、払おうと思えば払えないことはないが、元々想定外の額だけにいきなり言われて「ハイ、そうですか」とおいそれと払えるような額ではない。仮にセラミック自体や医師が信頼できたとしても、これだけの金額を準備するには、ある程度の計画は必要だ。

 

これが中途半端に小金でも溜めていれば迷ったかもしれないが、幸いにして自分の場合はあれこれと悩む必要がないのは、この際不幸中の幸いだった。

 

40万など、払えるわけがないじゃないか」

というだけで、初めから結論が出ていたのだから。となると、今更ながら2回分の治療費「2万円弱」がなんとも惜しまれた。

 

最初の説明では、セラミックを推奨していたのは事実だが、それでも治療法方は選べるように聞こえたしそれが普通のはずで、よもや保険内治療が出来ないなどは考え及ばなかった。

 

(こんなことなら最初から別の歯科に行っていれば、恐らく半額以下で済んだろうから1万円は余計に取られた)

 

と、後悔する気持ちが強かった。もっとも、この歯科の治療は他院に比べ非常に「大掛かり」だった。通常は30分でひとコマというケースが多いから、大抵の治療は30分以内で終るものだが、この歯科の場合は2回とも1時間以上掛かった。初回などは、予約していたにもかかわらず30分以上も待たされた挙句、治療に1時間を要したくらいだ。

 

確かに、あの歯科の設備は充実しているように見えた。治療に当たっては、顎が疲れるとの理由で拘束具を嵌められたり、麻酔も数段階で行われるなど、他の歯科ではお目にかかったことのない設備は確かである。さらにアイドルタレントのような、若く奇麗な衛生士が大勢揃っており、初回の「根幹治療」の時などは、当日の午前最後の患者ということも関係したかもしれないが、衛生士が34人掛かりだったことを思えば、人件費もかなり乗せられているのだろう。

 

さらには、2ちゃんねるのクチコミで「取り敢えず麻酔」と書いてあったように、最初に必ず麻酔を打つので痛みはまったくない。が、いかに腕が良いにしろ、前歯ならともかく奥歯に40万もの大枚を叩いてセラミックを入れる必要はないように思えた。が、よくよく考えてみれば、あのバカ高い治療費を取る「H歯科」が「クチコミナンバーワン」だったというのは、なんとも不可解である。

 

確かに、治療費があのようにバカ高いとは書いてなかったし、書いてあれば最初から行くわけがない。クチコミでナンバーワンになるくらいに評判が良いのに、なぜあのバカ高い治療費に誰も触れていないのかが不可解ではないか。

 

が、今更そのようなことを言ったところで、それこそ「アフターカーニバル」に過ぎぬ。現実問題として、穴が開いた状態になってしまったブリッジのところを早く埋めないことには、不自由極まりない。再度、ネットのクチコミを漁ることになったが、前回のようにクチコミナンバーワンに誘われて行ったにもかかわらず失敗した例が、やはり頭に引っかかっていた。さりとて他に情報源がないのも事実で、まったく知らないところに飛び込むのはやはリスクが大きいのである。

 

そんな折に、たまたま髪の毛が伸びてきたタイミングで、行きつけの床屋へ行ったので

「この辺りで、いい歯医者はないかな?」

と聞いてみると、例の「H歯科」の直ぐ近くにある別の歯科に通っていて

「あの先生は、なかなかいいですよ」

と言うことだった。

 

「この通りだと、数件あるけどね」

「Hさん、Oさん、Kさん・・・あと、まだあったかな。Hさんは、以前に痛い目に遭ったから、今はずっとOさんにやってもらってますよ」

 

と「衝撃の告白」が始まった (  ゜ ;)エッ!!

2012/11/14

フェードアウト(秋の乱part2)

現場では、どうしたわけか上手い具合に隣の席のむさ苦しい男が、常に暇を持て余していた。この時は、ちょうど担当する案件がなかったらしく、ちょこちょこと色々な担当者の手伝いをしていた。

 

このK氏は、毎日判で捺したように定時の17時半になると帰っていく。17時を回ると、そわそわと帰り支度を始めるのである。一度など、17時過ぎにある担当者から

 

「ちょっと手伝ってもらえませんか?

急ぎで、今日中にやって欲しい」

 

と頼まれ時などは、目に見えて不機嫌になった。

 

「手伝うのはいいけど、なんでこんな時間になってから言ってくるんだ!」

 

と、ぶつくさと文句を垂れながらも、それでも18時前には仕上げるとそそくさと帰って行った。それは傍目にも、いい加減な「やっつけ仕事」であるのが歴然だった。とはいえ普段はいつも暇そうにしているから、この男に手伝ってもらうことにした。

 

スキルが低くて遊んでいるのではなく、案外と高いスキルを持っていた。最初はわからないところを教えてくれという程度だったが、隣席の誼で言葉を交わしていくうちに次第に親しくなっていった。ちょこちょこと質問したり手伝いを頼んでいたが、そのうちに

 

「暇だから、手伝いましょうか・・・」

 

と言ってくれたのを幸い、主に細かい技術的なところを任せていた。

 

K氏の場合、元々ベンダー畑が長いだけに、Config作成など詳細設計は得意のようだった。そのころには、既に口は悪いが気さくなタイプの現場リーダーとも、かなり親しくなっており、喫煙場で

 

「Kさんが暇そうにしてるから、手伝ってもらってますよ」

 

と告げると

 

「Kさんですか・・・自分は苦手なタイプですよ・・・」

 

と苦虫をかみ殺すような表情をしていた。毎日、判で捺したように定時の17時半になると誰よりも早く帰っていくK氏が、リーダーには気に食わなかったらしい。

 

「いつも親切に手伝ってくれるし、いい人だと思うけど」

 

と言うと

 

「どうせ暇なんだろうから、手伝ってもらうのはいいですけど・・・あまり彼のことは信用しない方がいいですよ。バイト感覚で来ているような人だから・・・」

 

などと、ボロクソに扱き下ろしていた。

 

ともあれK氏の働きもあって、証券系の案件はなんとかうまく完了することができた。 実際には「K氏の手伝い」というより、途中からはK氏をメインにして自分はフェードアウトしていた。これを機に

 

「やはり、自分はこのような細かい作業は向いていない」

 

と契約の切れ目で終了を希望し、あっさり認められると思ったものの、案に相違して延長依頼が来てしまった。

 

何をトチ狂ったか、普段から面と向かってボロクソに扱き下ろしてきた現場リーダーに評価されていた模様だ。面接を担当した上司の部長や次長は本社勤務で、現場には滅多に来なかったから、正しい評価はリーダーしかできないのである。

 

所属会社を通じて

 

「契約の切れる9月で退場とさせてもらいたい」

 

と宣言したが

 

「ぜひ、継続してもらいたい・・・」

 

というトンチンカンな回答が返って来た。そうは言っても、契約は契約だ。

 

「求められるスキルが合わず、契約切れ目なので終了とさせて欲しい」

 

と上位会社に告げたが

 

「あくまで長期前提の契約であり、また前の案件は気に入らないというから、今度は希望通りのマネージメント案件をアサインした。これで、スキルが合わないということはないはずだ」

 

と、相手も譲らなかった。

 

が、こちらとしてはあくまで「契約切れ目」で辞めるつもりで、転職活動を開始する。まずは大手携帯キャリアへ面接に行くと、これまたマネージメントで希望を出していたにも関わらず、実態は100%実作業のワーカーだった。

 

「とにかく人手が足らなくて困っていまして・・・幾つかのチームがあって、好きなところでいいですから、是非とも協力願いたい・・・」

 

と懇願せんばかりだったが

 

「方向性が違いますね。自分はマネージメント希望であり、そう聞いてここへ来たのですが・・・」

 

と、辞退のハラは固まっていた。

 

その場で断ろうかとも思ったが、面接担当の部長が

 

「是非とも、来ていただきたいと思っています。なにとぞ、よろしくお願いします」

 

と、やけに頭が低く、また間に入ったF社長の立場も考慮し

 

「ひと晩考えて、所属経由で回答します」

 

と、その場は逃げておいたが、実際には面接開始直後から辞退のハラは決まっていた。帰りの道中も、間に入ったF社長から

 

「あれだけ熱心に誘われたことでもあるし、私としても是非ともやっていただきたいが・・・正直なところ、どんな感じですか?」

 

と聞かれたので

 

「正直言って、お伝えしている通り自分はマネージメント希望なので、あのような実作業は希望していません」

 

と、辞退の意思を伝えた。

2012/11/07

ボタンの掛け違い(秋の乱part1)

この現場は、当初から「ボタンの掛け違い」があったのだ。こちらとしては面接でも、当初からあくまで「マネージメント希望」の意思を強く伝えていた。ユーザーの大手SIerは、過去に2度ほど面接に行っていたが、やはり「SIer」だけあって技術的な要求が高かった。

 

その時の感触から

 

(やはりSIerでの仕事は、自分には向かない)

 

と考えていた(「SIer」とは「System Integration」の略称「SI」に「~する人」を意味する「-er」をつけて「System Integrater」とした造語である。System Integrationとは、個別企業のために情報システムを構築することであり、戦略立案から、企画、設計、開発、運用・保全までトータルに提供する SIerもある)

 

それだけに今回話があった時も、即座に断りを入れていた。が、知り合いの営業U氏から

 

「断わってもいいので、とにかく面接だけでも行ってくれないか」

 

と熱心に請われ

 

(まあ、行くだけなら)

 

と、重い腰を上げたのが間違いだった。

 

窓口となっているU氏の会社と元請との間には1社が入っていた。その営業には、面接前に

 

「自分はあくまでマネージメントが希望であり、実作業は希望していない」

 

とハッキリ意思を伝えた上で、元請の営業と合流する。

 

元請営業との引き渡しの際、中間会社の営業が

 

「最近の経歴としてはマネージメントが中心であるため、本人はあくまでそのようなポジションを希望しており、実作業は希望していない」

 

と伝えたが、元請の営業は

 

「それを私に言われてもねー。面接の場で、ユーザーの担当者に直接伝えてほしい」

 

と言われた。

 

担当(部長と次長)の説明では、やはりCiscoルータやスイッチなどNW機器の構築がメインの仕事であり、その辺りを中心に過去の経歴を話して欲しいということだったが、そんな注文に構わず

 

「ここ数年はPMOなどマネージメントをメインにやってきているので、細かい実作業はしばらくやっていないし希望もしていない。希望は、あくまでマネージメントである」

 

ことを声高に宣言してきた。

 

(こりゃ、確実にNGだな・・・)

 

と苦笑いしつつ、またむしろ自分の方から辞退の連絡をしようかと迷っているところで、即座に営業のU氏から

 

「先方からは、是非お願いしたいとの回答が来ました」

 

という予想外の結果が出てしまった。

 

こちらとしては、やはり

 

「結局のところ、実作業をやらされるのではないか?」

 

というのが最も気がかりなところだから、再度自分の希望を伝えた上で認識違いがないか確認して欲しいとU氏に頼んだ。あくまで実作業が中心なら、辞退するつもりだった。

 

確認の結果は

 

「改めて確認しましたが、希望はちゃんと伝わっていますよ。N社は大きな会社なので、案件がたくさんあります。なので、実際に案件にアサインする場合に、その都度相談して進めていくそうで、案件によっては多少は実作業をやってもらうこともあるかもしれませんが、あくまでマネージメントをメインで考えている」

 

という、上位会社からのメールを転送してきた。そうしてU氏の強い勧めもあり、遂に入場を決めた。

 

現場リーダーのO氏は、非常にスキルが高い人物で

 

「メンバーには、スキルの高いのがいない」

 

というのが口癖だった。そのO氏に、面接した部長や次長からどのように話が伝わっていたかは定かではないが、どこで話が捻じ曲がったのかO氏からはやけに期待されている様子だった。

 

「スキルの高い人には、それにあった案件を担当してもらわないと」

 

ということで、某大手証券会社のリプレース案件の担当にアサインされる。ここで最初に、ユーザー担当からヒアリングを受けた際にも

 

「自分はマネージメントが得意だが、実作業はあまり好きではない」

 

と、やはりハッキリと伝えておいた。ところが実際の仕事はといえば、来る日も来る日も「Config作成、修正、チェック」ばかりだ。

 

手順書作成は自信があったが、ここで作る手順書というのは

 

「実行、確認するConfigが、素人でもわかるレベルで書かれていなければならない」

 

という技術的な細かい仕事ばかりであり、また悪いことにユーザー側の担当者が「エキスパート」の肩書を持つ人物で、レビューなどの指摘は実にうんざりするほどに詳細を極めた。

 

これまで担当してきた工程は、主に要件定義や基本設計といった上流工程だったから、ここでやるような詳細設計や構築といった下流工程は原則ベンダーがにやっていた。が、今回は自分がその「ベンダー側」に回っているだけに、戸惑うことが多かった。 これまで使ってきた立場から、おおよそどのようなことをやるかは想像がついていたものの、想像以上に詳細を極めた。が、技術的なことは簡単に考えているらしいリーダーのO氏は

 

「最初は誰も戸惑いますけど、こんなものは1回やればすぐにできるようになりますよ。 これまでと違うというのも、いい経験になって良いでしょう?」

 

などと、どこか面白がっているようなところがあった。

2012/11/03

秋の乱(2012年11月版)

某大手SI(システム・インテグレータ)から熱心なお誘いを受けて入ったものの、さすがはベンダーだけあってあまりに「(細かい)技術偏重」に過ぎた社風が肌に合わず、また事前に聞いていた職務内容とも違っていた。そこで契約の切れ目で

 

(こんな仕事はやってられん!)

 

と三行半を突きつけ、あっさり辞められるハズだった。

 

ところが何を勘違いしたか、普段から面と向かってボロクソに扱き下ろしてきた現場リーダーの評価が高かったらしく

 

「ぜひ、継続してもらいたい・・・」

 

というトンチンカンな依頼が来た。

 

契約の切れ目となる9月末で辞めるつもりで、面接に行った某携帯キャリアの方も  「方向性が違う」と辞退したものの

 

「是非とも来ていただきたいので、上のポジションを用意しています・・・」

 

と、しつこいくらいにメールが来る。辞めるつもりだった現場は某県の県庁システム・リプレースという大規模案件のマネージメントを用意してきた。仕方なく1か月だけ延長し、面倒な技術面は隣の席で遊んでいたスキルの高いモノグサ男を利用し、どうにか上手い具合に乗り切った。

 

(さあ、今度こそは自分のやりたい方向へと進むのだ!)

 

という思いを新たに活動を始めると、早速別の携帯キャリアや外資の大手生保からのお誘いも来た。さらには、まだ諦めていなかった某携帯キャリアも復活し

 

「是非ともPMとして・・・」

 

と再びのお誘いは、破格の条件を伴ってきていた。

 

今の現場では

 

「途中で抜けるんなら、12月分までの仕事を全部片付けて行ってからにしてくれよ!」

 

と無茶ぶりをされたが、こうなれば意地で暇そうなメンバー数名を総動員して12月分までの仕事を完了させたから、相手も驚きながら納得すまいことか。

 

(これで、大手を振って辞められる)

 

11月は紅葉見物でもしながら、ゆっくり次の仕事を探そうかと言う計画は脆くも潰えた。 携帯キャリア2社から、矢継ぎ早にお誘いを受けるという急展開だ。他にも外資系の生保会社からも以前から度々お誘いがあったが、ひと月以上も前から最も熱心だったN社に決定。

 

N社と言えば、数年前は月額希望単価の25万以上も稼がせてもらったが、それはいつの間にやら使い果たしていた。今回は、当時よりもベース給与が上がっているから前回ほどの上り幅は望むべくもないが、それでもかなりの額はアップする見通しである。もっとも、お蔭でのんびりする青写真は潰えてしまったが・・・

 

そんな中、この日は受診できていなかった眼科健診を受け、先日の健診に続き異常なしの診断を貰い、来週からの「激務」の準備は整った。