2012/12/31

2012の激動

2011末~2012

昨年秋以降、某金融機関でのNW移行設計に携わってきた。60歳前後でキャリア数10年という大ベテランB氏の後任として、PMなど現場の期待は大きかった。いきなりB氏の代わりは無理にしても、それなりの成果は上げた。が、技術スキルもヒューマンスキルも低い所属会社のリーダー社員との関係が悪化し、営業サイドからの継続依頼をソデにし、3末で退プロを決めた (-o-)

 

5

1か月のブランクを経て、5月からは「世界規模の金融機関U」の大プロジェクトにPMOとして参画することに。案件規模に相応しく、元請も「世界最大のコンサルファーム」として知られる超有名企業である。ところが参画当初から、気難し屋のPMとの折り合いが悪かった。PMの作成するプロジェクト計画書のクオリティの低さが我慢ならず、大幅に作り替えたことでさらに関係が悪化し、僅か1か月ちょいで見切りをつける (-_-)~┻━┻

 

夏~秋

夏からは大手SIerで某県庁システムリプレースに従事。面接からプロジェクト管理希望を声高に主張してきたものの、SIer特有の細かい技術的な要素ばかりを求められるのに嫌気がさし、早々に退プロ希望を出すもなかなか辞めさせてもらえず。

「案件途中で抜けるというなら、数百拠点分の手順書を全て作ってからにしてくれ!」 と所属会社リーダーからは無理難題を吹っかけられたが、Excelのマクロや関数を駆使して暇そうなメンバーのみならずPMにも手伝わせ、1か月で全てを完了させての堂々の退プロとなった ー`)y─┛~~

 

秋以降

スマホ、LTEなど需要増が続く携帯キャリア大手3社のうち、2社からPLのお誘いがかかった。他にも経営統合の外資系生保や、予想通り5月以降も迷走を続けていた「世界規模の金融機関U」の大プロジェクト」からも、再び声がかかる。

 

「世界規模の金融機関U」の大プロジェクトは真っ先に門前払いした上、携帯2社のどちらにすべきか迷った末、数か月前から熱心に誘われていた某社に決定した。勤務地が近いことも大きな決定要素だったが、これがとんでもなく忙しい現場だった。終電近くまでの勤務が前提であり、日付が変わる前に帰宅できれば御の字という毎日である。それでもサブリーダーの自分はまだマシな方で、ワーカーは毎週のように休出をさせられているから大変だ(スキルが高くないせいもあるが)

過去相場と比べ、1020万の増額となったのがせめてもの救いと言える。

 

こんなに働いているのだから、せめて増えた収入で旅行に出たり旨いものをたらふく食べてやろうかと目論んだ矢先に、嫌なことを思い出した。この冬、マンションの更新時期を迎える。毎回、更新の度に「そろそろ引っ越しをしよう」と考えながら面倒が先立っていたが、今回は本気だった。が、皮肉にも忙しくて物件を探している暇がない。最早、このタイミングでの引っ越しは諦めたが、2月には更新費用を払わなければならず、さらにそれと重なるようにして確定申告が待ち受けている。今年はそこそこの収入があっただけに、所得税がン十万はかかってくるハズで、さらに頼んでもいない「予定納税」も払わされる。収入アップしたとはいえ、ウキウキしてはいられない状況なのだった ε-(д)

2012/12/16

脱税(歯医者地獄)(8)

「酷い目とは・・・?」

 

「いやね・・・以前に抜いた後に、差し歯を入れる時の話なんですけどね・・・抜いたところが化膿してたんですよ。それでも1週間後が予約になってたから一応、行ったんですけどね・・・それで、まだ膿んでいて痛いから今回は入れるのは止めて欲しい、と申し入れたんだけどね」

 

「ふむふむ・・・で?」

 

「大丈夫だと言って、無理矢理入れられた。痛いから途中でも止めてくれといったのに、無理矢理だよ、ムリヤリ。それで痛くて痛くて、2日も店を休んだんですよ。あれはホント、酷い目に遭ったなー。こっちの方が、賠償して欲しいくらいだよ」

 

と、激怒していた。

 

「それは、いつごろの話?」

 

「もう10年くらい前かなー」

 

「なに? 10年前?」

 

と、驚いたのには理由があった。

 

というのも今のマンションに入居したのが8年位前だったが、その時は確かにあの場所に歯医者があった記憶がないのである。当時は三鷹にあるDCへの自転車通勤で、この道は毎日通っていたのだ。入居後しばらくして初めて見かけて

 

(へー、こんな近くに歯医者が出来たんだ・・・)

 

と思った記憶が確かにあった。

 

その疑問をオヤジにぶつけると

 

「いや、あの歯医者はずっと前からありますよ・・・私がここで店を始めたのが10年位前だけど、その時にはもうあったからね」

 

ということで、どうも摩訶不思議な話である。

 

その疑問は一旦は置いておくことにして、前回の顛末を語り

 

「とにかく高いんだ・・・保険外治療ってのは頼んでもいないんだが・・・」

 

と水を向けると

 

「そりゃ、高いなー。自分が行ってた時は、そんなに高いことはなかったけどねー。あそこは以前に脱税でやられて、しばらく休んでたからね。あれから保険外とか、金儲けに走っちゃったのかな・・・」

 

と驚いていた。

 

と言うことは、自分が越してきた時が、まさにその「脱税」で休んでいた時期であり、また「開院」と見えたのが「別荘帰り?」の時だったのか。

 

いずれにしても、そのような他人の事情など詮索しても仕方がない。なにより、空いた穴を早く埋めることが先決だ。例によってクチコミで評判を漁っていくと「H歯科」に代わって「クチコミナンバーワン」となっていたのが「K歯科」である。Webページで見た「K歯科」は、あの「H歯科」以上に最新設備が充実しているらしい。どうにかWebでの予約が取れて行ってみると、予約したにもかかわらずかなり待たされた挙句

 

「予約されましたか?」と、確認までされたので「Webから予約したけど、取れてないとか?」と聞くと「少々、お待ちください・・・」と奥へ引っ込んで、そのまま30分以上も待たされた。

 

その間、次々と治療を終えた患者が出てくる。支払いを済ませ、次の予約をしているのが聞こえてくるのだが、驚いたことに、どれもが1か月も先の予約なのである。確かに4月半ばという時期の関係上、GWの休みに入るとはいえ、これでは間が空き過ぎる。

 

ある患者の

 

「土曜日だと、いつが空いてますか?」

 

という質問には

 

「土曜日ですと、GWが入りますので5月半ば以降となります」

 

という回答を耳にして

 

「こりゃ、やめた方がいいかな・・・」

 

と、ちょうど腰を浮かしかけたタイミングで、ようやく名前を呼ばれた。診察室は綺麗な個室で、目の前が大スクリーンになっている。椅子に寝ていると、衛生士らしい女性が来て「まもなく担当の先生が来られます・・・」といって出て行こうとしたのを捕まえた。

 

「さっき受付で待っている間に、他の人の予約の状況が聞こえてきたけど、みんなかなり先のようだったが。予約は、かなり取り難いですかね?」

 

「そうですね・・・今ですと、かなり予約が埋まっている状況ですので、1か月とか先になってしまいますね・・・」

 

「今日は初診だけで、治療はなし?」

 

「基本はそうです。ただ、診てみないとわからないですけど、もし治療を希望されるのであれば先生にご相談ください」

 

「仮に、今日は初診だけだとして、次回の治療が1か月も先になるってこと? 取り敢えず、今はすぐに治療が始まらないと困るんだけどね・・・」

 

「では、予約の状況を確認してきます」

 

と、戻ってくると

 

「やはりGWの休みが入ってしまいますので、GW明けは予約がいっぱいの状況です・・・」

 

とのこと。これは、冗談ではない。

 

「じゃあ今日の予約は一旦、キャンセルさせてもらおう」

 

と、何もせずに出てきた。

 

続いて「クチコミランキング」で上位の常連だった「T歯科」に聞いてみると、これも予想した通り

 

5月中旬までは予約が一杯です」

 

ということだった。

2012/12/05

決定(秋の乱part5)

  「結果としてですが・・・話を持ってきたN社ではなく、上の会社とやるというのは後味が悪いというか・・・」


 「いや、それは違いますな。最初に話を持ってきたN社とは条件が合わずに断わったのだから、その時点でN社の案件としては消滅しています」


 「確かに・・・」


 「で、新たにうちの案件として、ウチからオファーを出した。それは、面接をした元請から『是非とも』と要請を受けてのもので、これは新しい依頼です。だから前回とは別ルートで、別案件と思ってもらえばいいのではないですか?」


 当然ながら、エンジニアとしては紹介元の会社を飛び越して上の会社と直接取引をすることは「ルール違反」、あるいは「仁義に反する」と言える。


 が、この場合は、こちらから持ちかけたわけではない。純粋に「条件が合わずに断わった」ら「別の会社から、新たなお誘いが来た」ということもできる。


 こうしたケースはよくあることで、特にX社くらいの大規模プロジェクトになると、あちこちに声をかけているから、Aルートでは書類選考でNGとなったのに、別のBルートから面接依頼が来るようなことも珍しくはない


 そうとでも考えなければ、たとえばX社の仕事をやりたい場合は、N社の営業が搾取した不当に低い単金で我慢してやらなければならないという、なんともおかしな話になるのである


 そうしてA社から提示された額は、時給でなんとN社を1000円近くも上回っていた!


 仮に月200時間働けば、20万の増額となるのである。


 「それだと希望金額と比べても多すぎるから、xxxxくらいで結構ですが」


 と、時給で500円アップで良いと言ったものの


 「いやいや・・・一度出したものを引っ込めるわけにはいかないよ。是非、この条件を吞んで欲しい」


 ということで、過去最高の破格契約となったのである。


 今は当時よりもベース給与が上がっているから、前回ほどの上り幅は望むべくもないが、それでもかなりの額はアップすることは間違いなかった。

 

 こうして数年前までは、面接に行ってもなかなかOKの出なかった携帯キャリア3社のうち2社から、面接の場で


 「持ち帰ってなんてことは言いません・・・ぜひ、この場でお願いしたい・・・」


 と、熱烈歓迎を受けるという誤算が重なった。


 (11月はしばらくのんびり紅葉見物でもしながら、ゆっくり仕事を探そう・・・)


 などと考えていたのが、両社ともに


 「111日から出て欲しい」


 という、矢のような催促だ。


 土曜に品川で面接をした元請の部長には


 「前回は実作業と聞きましたので辞退しましたが・・・あくまでマネージメント希望と伝えましたし、今もそれは変わりませんが」


 と伝えると


 「マネージメントをやっていただきます・・・ただ、どうしても忙しい時は、実作業をやってもらうこともあるかもしれません・・・」


 「いや、実作業はやりたくない」


 「わかりました・・・では、実作業は私がやりましょう」


 ポジションや業務内容的にはどちらも似たようなものだが、単価はK社長が多く抜いているK社案件よりD社案件がかなり上になった。また立地的にもK社案件は神奈川と遠いが、D社案件は赤坂だから通勤時間は僅か30分程度と近く、朝も9時半出社だから楽である。またD社案件は、元請から再三に渡ってラブコールを受けていたし、元請の部長とも2度話をして


 「実作業はやりたくない」


 という本音もハッキリぶつけているから、あらゆる点から見てD社案件を選ぶのが妥当だった。


 現場では、元請会社のリーダーから


 「途中で抜けるんなら、12月分までの仕事を全部片付けて行ってからにしてくれよ!」


 と無理を承知の無茶ぶりをされたが、こうなれば意地だ。


 周辺の席にいる暇そうなメンバー数名を総動員し、12月分までの仕事をすべて完了させたから、相手も仕方なく納得するしかなくなった


 (これで、大手を振って辞められる)


 急転直下により、温泉に浸かりながらのんびりする青写真は潰えてしまったが・・・


 そんな中、この日は受診できていなかった眼科健診を受け、先日の健診に続き異常なしの診断を貰い、いよいよ「戦闘準備」は整った (≧Д≦)ノ オー!!

2012/11/28

回想(秋の乱part4)

同じK社長から、次に舞い込んで来たのは携帯キャリアの案件だ。

 

前回しつこく誘ってきていたのとは別の、ライバル関係にあるキャリアである。スマホやLTEなどの需要増の関係から、携帯キャリアの求人はあちこちから来ていた


 これはK社長がしっかりと伝えてくれたようで、得意のマネージメントに特化したPM案件だった。ようやく方向性にマッチする案件だったこともあり、面接で大風呂敷を広げてみせると、即座に


 「ぜひ、お願いしたい」


 と、その場で金額提示も含めた即答があった。


 この日は金曜だったが


 「月曜の午前中までに返事を下さい」


 とのことだ。

 

大手キャリアのPM、そして条件も悪くなく内容的に文句はない。ただ気になるのが、現場がやや遠いことだった。あとは、常々


 「うちは薄利多売だから・・・」


 と口にしていたK社長が、どの程度の額を提示してくるかだったが、K社長の提示してきた額は驚くほど下がっていた!


 (こんなに抜いていたのか・・・これの、どこが「薄利多売」だ!
 ということは以前の仕事の時も、こんなに抜いていたのかよ、チクショーめ!)


 と激怒したタイミングで、例のもうひとつの携帯キャリアの案件が再度復活してきたのである。

 「今の現場は10月で終わりと聞いていましたが・・・例の携帯キャリアの件で、またラブコールがありましたよ・・・その後の状況は、いかがですか?」
 

と聞かれた。
 

以前にも書いたように、この件については現場が1か月延長が決まった時に


 1か月も先まで待てないと言っている」


 と言ってきたため


 「別に待ってもらう必要はない。そもそもあの件は面接後に辞退したので、自分の選択肢にはない」


 と宣言していた。


 その後も、このT社長からは幾つか別件の紹介があったが、どれもがイマイチだった。


 ところが、延長した「1か月」が終わりに近づいたタイミングで


 「またしてもラブコールが来まして・・・11月からでも是非にということで、なにせこっちはすでにOKが出ているのだから、あとはにゃべさん次第で11月から即決まりの話です・・・」


 ということだ。


 とはいえ、前回の面接時とはポジションや役割がまったく異なるわけだから、怪しい部分もあった。


 「前回面接で聞いた内容とあまりにもかけ離れているので、もう一度話を聞いてみないことには・・・」


 と伝える。


 「それ以前に、あれから色々とお誘いがあって、かなり状況も変わっているのが現状です。今日も午前中に面接に行った携帯キャリアから、その場でOKが出たし・・・」


 「それで・・・そっちの方は、どうでしたか?」


 「正直、どうしようか迷っているところですが、月曜の午前中までに回答しないといけないので」


 と告げると


 「では、こちらの方も早急に面接の設定を」


 と大慌てて電話を切ると、土曜の面接を設定してきた。

 

 ところでX社の案件と言えば、4年前に関わったことがある。その時は、次のような経緯があった。


 この時は、最初に話を持ってきた営業が怪しいヤツで、かなりの金額を抜いていたため条件が合わず辞退した。


 ところが、その後に上の会社から


 「面接をした元請から是非と言われていて、断ったら自分の顔が潰れるから、考え直してくれないか」


 と請われた。


 「内容としては自分も興味はあるが、単価が合わなかったので・・・」


 と伝えると


 「そんな気がしていましたよ。それに関して、ぜひとも相談したい・・・」


 と、新宿に呼ばれる。


 中村屋のカレーバイキングをご馳走になり、さて本題に入った。

2012/11/21

携帯キャリア(秋の乱part3)

 「ならば、たとえば部長の補佐のような形で、マネージメントをやるというのならやりますか?」


 と、なおもF社長からはしつこく食い下がられたものの、紹介元のT社長には辞退のメールを入れ、この話はここで終わった・・・はずだった。


 が、まだ話は終わらなかった。


 面接を担当した部長というのが現場リーダーだったが、この部長に大いに気に入られたらしく


 「是非とも来ていただきたいので、意向を踏まえた上で先日とは別の上のポジションを用意します・・・」


 と、F社長経由でしつこいくらいにメールが来る。


 紹介元のT社長などは


 「熱心なラブコールが来ていますので、再度考えてもらえないか?」


 とは言うものの、前回の面接の時から180℃話が変わっているから、これを俄かに信じるわけにもいかない。なにより、今の現場をスンナリと辞められるかどうかの方が、先決問題であった。


 その現場の方では、今後M証券がらみの案件はK氏を担当とし、某県庁リプレースという大規模案件のマネージメントを任せるので、しばらく延長してほしいという話になった。


 「今度はマネージメント案件だから」


 というのに対し


 「取り敢えずは1か月延長して、様子を見ながら11月以降のことを決めてみてはどうか?」


 という所属会社の顔を立てる形で合意したものの、マネージメント案件とは名ばかりで、やはり中身はConfigや手順書作成といった実作業がやたらと多かった。


 例の携帯キャリア案件を紹介してきたT社長に「1か月延長」の旨を伝えると


 「延長ですか・・・」


 と、明らかに気落ちした様子で


 「確認したところ、やはり10月頭から来て欲しいとのことで、1か月は待てないと・・・」


 「あの件は、こちらの方で辞退した話なので、特に待ってもらう必要性はない。 他の件同様に選択肢の一つに過ぎないし、他にも紹介してくれる会社は幾つかありますので」


 と告げると


 「折角、いい話だと思ったんですけどねー」


 と、あくまでその話に執着していた。

 

とにもかくにも、1か月の延長期間を勤め上げた。その間も、元請の営業から


 「案件途中で抜けられるのは問題がある。せめて、12月末まで続けてもらえないか」


 と何度も要請されたが


 「事前に聞いていた内容と違うので、10月一杯で辞める意向は変わらない」


 と突っぱねてきた。


 そうこうするうち、幾つかかの面接依頼が舞い込んできた。まずは、以前からの知り合いのK社長から指定された京橋の会社を訪ねる。


 (以前に来たことがある気がするが・・・)


 と思っていると、案の定数か月前に面接に来たのと同じ、ちょび髭の小柄な担当者が現れた。


 「いやー、お久しぶりですね・・・」


 という担当者が切り出したのは、前に勤めていた某大手金融機関の大規模プロジェクトの件である。

 

この職場には、5月にPMOとして参画していたが、PMがダメなヤツだった。本来、PMOというのはPMとは別に機能するもののはずだが、PM補佐的なこともやらされた。


 このPMが作ったPJ計画書の出来が悪く


 「修正してくれないか」


 と言われたのをいいことに、大幅に作り替えたことで益々関係が悪化していた。


 最後は、喧嘩別れのような形で


 (あんな会社は、どうせ次工程で失注に違いない!)


 と方々に言い触らしながら、ケツをまくって辞めた経緯があった。実際に次工程の受注は、かなり怪しい状況だった。


 面接で話を聞いていると、かつてやっていた要件定義~基本設計を大手コンサルファームが作成しているというから、やはりあの会社は「失注」した模様だ。


 このプロジェクトは、顧客となる某金融機関お抱えのSI担当者が相当な難物らしく、元請の世界最大コンサルファームA社も相当に頭を悩ませていた。確かに数か月前の面接では、この大手金融プロジェクトとは別に銀行系や損保統合など、A社が抱えるいくつかの案件があるという話だった。
 が、今回は募集は、大手金融機関の大規模プロジェクトのみに限定されていたことからも、人が定着せずにいかにそのPJが難しいかを物語っているようだった。

 

さらに話を詰めていくと、自分が携わっていた数か月前と同じ「要件定義~基本設計に移るところ」というから、数か月前から話がまったく進んでいないのである。かつて自分がPMOとして関わっていたプロジェクトだから、話を聞いただけでいかに停滞しているのか、つまりはいかに酷い状況になっているかが手に取るようにわかった


 またそんな状況だからこそ、内情に詳しいこちらに対し殊更に


 「それだからこそ、逆にやりがいがありませんか?」


 などと、熱心に奨めるのである。その場で即座に断りを入れてもいいが、この様子ではしつこく誘われそうで面倒だと思い


 「検討して、営業経由で回答します」


 と逃げを打っておく。面接後も、事情を知らない間に入った営業は


 「是非来て欲しいという感触でしたが、いかがでしょうか?」


 と、単純に喜んでいたが、しつこい誘いを振り切って即座にK社長に断りを入れた。


 が、嫌な予感は的中し、すぐにK社長から


 「先方は大変に乗り気で、にゃべさんが誤解をしているようだから、もう一度考え直してもらえないかとしつこく言ってきております」


 というメールが舞い込んできたが


 「誤解などはしておらず、あの仕事を受けるつもりはない!」


 と、キッパリと振り切った。

2012/11/18

後悔(歯医者地獄)(7)

(そもそも、セラミックが「永久に虫歯にならない」という保証があるのか?

「永久」などといっても、未来のことなどどうなるかわからないではないか。虫歯になったら、金を返してくれるのか?

そんなことはあるまい。そうなったら、なんだかんだで別の理由をつけてくるに違いない。

虫歯までは行かないまでも、入れたセラミックが取れないという保証はない。そんな場合はおそらく、使い方が悪いと言ったような別の理由をつけてくるのだろう。そもそも、この医師が信用できるのかどうかも甚だ疑問である)

 

と、そんなことを考えていると

「もし、そのような治療をお望みなら、どこか他院でということになるかと思います・・・」

という言葉が返ってきた。

 

「ちょっと、考えておきますよ・・・」

と言葉を濁して、出口のドアのところを見上げると、そこには

《当院は、永久に虫歯にならないファインセラミック治療のため、安心です。「卑金属」の治療は行っておりません》

という看板が掲げられていた。

 

上のようなもっともらしい理由を幾つも並べたが、実はそれ以前にもっと根本的な問題が存在した。そもそも「40」という治療費が払えない、と言うことだ。勿論、払おうと思えば払えないことはないが、元々想定外の額だけにいきなり言われて「ハイ、そうですか」とおいそれと払えるような額ではない。仮にセラミック自体や医師が信頼できたとしても、これだけの金額を準備するには、ある程度の計画は必要だ。

 

これが中途半端に小金でも溜めていれば迷ったかもしれないが、幸いにして自分の場合はあれこれと悩む必要がないのは、この際不幸中の幸いだった。

 

40万など、払えるわけがないじゃないか」

というだけで、初めから結論が出ていたのだから。となると、今更ながら2回分の治療費「2万円弱」がなんとも惜しまれた。

 

最初の説明では、セラミックを推奨していたのは事実だが、それでも治療法方は選べるように聞こえたしそれが普通のはずで、よもや保険内治療が出来ないなどは考え及ばなかった。

 

(こんなことなら最初から別の歯科に行っていれば、恐らく半額以下で済んだろうから1万円は余計に取られた)

 

と、後悔する気持ちが強かった。もっとも、この歯科の治療は他院に比べ非常に「大掛かり」だった。通常は30分でひとコマというケースが多いから、大抵の治療は30分以内で終るものだが、この歯科の場合は2回とも1時間以上掛かった。初回などは、予約していたにもかかわらず30分以上も待たされた挙句、治療に1時間を要したくらいだ。

 

確かに、あの歯科の設備は充実しているように見えた。治療に当たっては、顎が疲れるとの理由で拘束具を嵌められたり、麻酔も数段階で行われるなど、他の歯科ではお目にかかったことのない設備は確かである。さらにアイドルタレントのような、若く奇麗な衛生士が大勢揃っており、初回の「根幹治療」の時などは、当日の午前最後の患者ということも関係したかもしれないが、衛生士が34人掛かりだったことを思えば、人件費もかなり乗せられているのだろう。

 

さらには、2ちゃんねるのクチコミで「取り敢えず麻酔」と書いてあったように、最初に必ず麻酔を打つので痛みはまったくない。が、いかに腕が良いにしろ、前歯ならともかく奥歯に40万もの大枚を叩いてセラミックを入れる必要はないように思えた。が、よくよく考えてみれば、あのバカ高い治療費を取る「H歯科」が「クチコミナンバーワン」だったというのは、なんとも不可解である。

 

確かに、治療費があのようにバカ高いとは書いてなかったし、書いてあれば最初から行くわけがない。クチコミでナンバーワンになるくらいに評判が良いのに、なぜあのバカ高い治療費に誰も触れていないのかが不可解ではないか。

 

が、今更そのようなことを言ったところで、それこそ「アフターカーニバル」に過ぎぬ。現実問題として、穴が開いた状態になってしまったブリッジのところを早く埋めないことには、不自由極まりない。再度、ネットのクチコミを漁ることになったが、前回のようにクチコミナンバーワンに誘われて行ったにもかかわらず失敗した例が、やはり頭に引っかかっていた。さりとて他に情報源がないのも事実で、まったく知らないところに飛び込むのはやはリスクが大きいのである。

 

そんな折に、たまたま髪の毛が伸びてきたタイミングで、行きつけの床屋へ行ったので

「この辺りで、いい歯医者はないかな?」

と聞いてみると、例の「H歯科」の直ぐ近くにある別の歯科に通っていて

「あの先生は、なかなかいいですよ」

と言うことだった。

 

「この通りだと、数件あるけどね」

「Hさん、Oさん、Kさん・・・あと、まだあったかな。Hさんは、以前に痛い目に遭ったから、今はずっとOさんにやってもらってますよ」

 

と「衝撃の告白」が始まった (  ゜ ;)エッ!!

2012/11/14

フェードアウト(秋の乱part2)

現場では、どうしたわけか上手い具合に隣の席のむさ苦しい男が、常に暇を持て余していた。この時は、ちょうど担当する案件がなかったらしく、ちょこちょこと色々な担当者の手伝いをしていた。

 

このK氏は、毎日判で捺したように定時の17時半になると帰っていく。17時を回ると、そわそわと帰り支度を始めるのである。一度など、17時過ぎにある担当者から

 

「ちょっと手伝ってもらえませんか?

急ぎで、今日中にやって欲しい」

 

と頼まれ時などは、目に見えて不機嫌になった。

 

「手伝うのはいいけど、なんでこんな時間になってから言ってくるんだ!」

 

と、ぶつくさと文句を垂れながらも、それでも18時前には仕上げるとそそくさと帰って行った。それは傍目にも、いい加減な「やっつけ仕事」であるのが歴然だった。とはいえ普段はいつも暇そうにしているから、この男に手伝ってもらうことにした。

 

スキルが低くて遊んでいるのではなく、案外と高いスキルを持っていた。最初はわからないところを教えてくれという程度だったが、隣席の誼で言葉を交わしていくうちに次第に親しくなっていった。ちょこちょこと質問したり手伝いを頼んでいたが、そのうちに

 

「暇だから、手伝いましょうか・・・」

 

と言ってくれたのを幸い、主に細かい技術的なところを任せていた。

 

K氏の場合、元々ベンダー畑が長いだけに、Config作成など詳細設計は得意のようだった。そのころには、既に口は悪いが気さくなタイプの現場リーダーとも、かなり親しくなっており、喫煙場で

 

「Kさんが暇そうにしてるから、手伝ってもらってますよ」

 

と告げると

 

「Kさんですか・・・自分は苦手なタイプですよ・・・」

 

と苦虫をかみ殺すような表情をしていた。毎日、判で捺したように定時の17時半になると誰よりも早く帰っていくK氏が、リーダーには気に食わなかったらしい。

 

「いつも親切に手伝ってくれるし、いい人だと思うけど」

 

と言うと

 

「どうせ暇なんだろうから、手伝ってもらうのはいいですけど・・・あまり彼のことは信用しない方がいいですよ。バイト感覚で来ているような人だから・・・」

 

などと、ボロクソに扱き下ろしていた。

 

ともあれK氏の働きもあって、証券系の案件はなんとかうまく完了することができた。 実際には「K氏の手伝い」というより、途中からはK氏をメインにして自分はフェードアウトしていた。これを機に

 

「やはり、自分はこのような細かい作業は向いていない」

 

と契約の切れ目で終了を希望し、あっさり認められると思ったものの、案に相違して延長依頼が来てしまった。

 

何をトチ狂ったか、普段から面と向かってボロクソに扱き下ろしてきた現場リーダーに評価されていた模様だ。面接を担当した上司の部長や次長は本社勤務で、現場には滅多に来なかったから、正しい評価はリーダーしかできないのである。

 

所属会社を通じて

 

「契約の切れる9月で退場とさせてもらいたい」

 

と宣言したが

 

「ぜひ、継続してもらいたい・・・」

 

というトンチンカンな回答が返って来た。そうは言っても、契約は契約だ。

 

「求められるスキルが合わず、契約切れ目なので終了とさせて欲しい」

 

と上位会社に告げたが

 

「あくまで長期前提の契約であり、また前の案件は気に入らないというから、今度は希望通りのマネージメント案件をアサインした。これで、スキルが合わないということはないはずだ」

 

と、相手も譲らなかった。

 

が、こちらとしてはあくまで「契約切れ目」で辞めるつもりで、転職活動を開始する。まずは大手携帯キャリアへ面接に行くと、これまたマネージメントで希望を出していたにも関わらず、実態は100%実作業のワーカーだった。

 

「とにかく人手が足らなくて困っていまして・・・幾つかのチームがあって、好きなところでいいですから、是非とも協力願いたい・・・」

 

と懇願せんばかりだったが

 

「方向性が違いますね。自分はマネージメント希望であり、そう聞いてここへ来たのですが・・・」

 

と、辞退のハラは固まっていた。

 

その場で断ろうかとも思ったが、面接担当の部長が

 

「是非とも、来ていただきたいと思っています。なにとぞ、よろしくお願いします」

 

と、やけに頭が低く、また間に入ったF社長の立場も考慮し

 

「ひと晩考えて、所属経由で回答します」

 

と、その場は逃げておいたが、実際には面接開始直後から辞退のハラは決まっていた。帰りの道中も、間に入ったF社長から

 

「あれだけ熱心に誘われたことでもあるし、私としても是非ともやっていただきたいが・・・正直なところ、どんな感じですか?」

 

と聞かれたので

 

「正直言って、お伝えしている通り自分はマネージメント希望なので、あのような実作業は希望していません」

 

と、辞退の意思を伝えた。

2012/11/07

ボタンの掛け違い(秋の乱part1)

この現場は、当初から「ボタンの掛け違い」があったのだ。こちらとしては面接でも、当初からあくまで「マネージメント希望」の意思を強く伝えていた。ユーザーの大手SIerは、過去に2度ほど面接に行っていたが、やはり「SIer」だけあって技術的な要求が高かった。

 

その時の感触から

 

(やはりSIerでの仕事は、自分には向かない)

 

と考えていた(「SIer」とは「System Integration」の略称「SI」に「~する人」を意味する「-er」をつけて「System Integrater」とした造語である。System Integrationとは、個別企業のために情報システムを構築することであり、戦略立案から、企画、設計、開発、運用・保全までトータルに提供する SIerもある)

 

それだけに今回話があった時も、即座に断りを入れていた。が、知り合いの営業U氏から

 

「断わってもいいので、とにかく面接だけでも行ってくれないか」

 

と熱心に請われ

 

(まあ、行くだけなら)

 

と、重い腰を上げたのが間違いだった。

 

窓口となっているU氏の会社と元請との間には1社が入っていた。その営業には、面接前に

 

「自分はあくまでマネージメントが希望であり、実作業は希望していない」

 

とハッキリ意思を伝えた上で、元請の営業と合流する。

 

元請営業との引き渡しの際、中間会社の営業が

 

「最近の経歴としてはマネージメントが中心であるため、本人はあくまでそのようなポジションを希望しており、実作業は希望していない」

 

と伝えたが、元請の営業は

 

「それを私に言われてもねー。面接の場で、ユーザーの担当者に直接伝えてほしい」

 

と言われた。

 

担当(部長と次長)の説明では、やはりCiscoルータやスイッチなどNW機器の構築がメインの仕事であり、その辺りを中心に過去の経歴を話して欲しいということだったが、そんな注文に構わず

 

「ここ数年はPMOなどマネージメントをメインにやってきているので、細かい実作業はしばらくやっていないし希望もしていない。希望は、あくまでマネージメントである」

 

ことを声高に宣言してきた。

 

(こりゃ、確実にNGだな・・・)

 

と苦笑いしつつ、またむしろ自分の方から辞退の連絡をしようかと迷っているところで、即座に営業のU氏から

 

「先方からは、是非お願いしたいとの回答が来ました」

 

という予想外の結果が出てしまった。

 

こちらとしては、やはり

 

「結局のところ、実作業をやらされるのではないか?」

 

というのが最も気がかりなところだから、再度自分の希望を伝えた上で認識違いがないか確認して欲しいとU氏に頼んだ。あくまで実作業が中心なら、辞退するつもりだった。

 

確認の結果は

 

「改めて確認しましたが、希望はちゃんと伝わっていますよ。N社は大きな会社なので、案件がたくさんあります。なので、実際に案件にアサインする場合に、その都度相談して進めていくそうで、案件によっては多少は実作業をやってもらうこともあるかもしれませんが、あくまでマネージメントをメインで考えている」

 

という、上位会社からのメールを転送してきた。そうしてU氏の強い勧めもあり、遂に入場を決めた。

 

現場リーダーのO氏は、非常にスキルが高い人物で

 

「メンバーには、スキルの高いのがいない」

 

というのが口癖だった。そのO氏に、面接した部長や次長からどのように話が伝わっていたかは定かではないが、どこで話が捻じ曲がったのかO氏からはやけに期待されている様子だった。

 

「スキルの高い人には、それにあった案件を担当してもらわないと」

 

ということで、某大手証券会社のリプレース案件の担当にアサインされる。ここで最初に、ユーザー担当からヒアリングを受けた際にも

 

「自分はマネージメントが得意だが、実作業はあまり好きではない」

 

と、やはりハッキリと伝えておいた。ところが実際の仕事はといえば、来る日も来る日も「Config作成、修正、チェック」ばかりだ。

 

手順書作成は自信があったが、ここで作る手順書というのは

 

「実行、確認するConfigが、素人でもわかるレベルで書かれていなければならない」

 

という技術的な細かい仕事ばかりであり、また悪いことにユーザー側の担当者が「エキスパート」の肩書を持つ人物で、レビューなどの指摘は実にうんざりするほどに詳細を極めた。

 

これまで担当してきた工程は、主に要件定義や基本設計といった上流工程だったから、ここでやるような詳細設計や構築といった下流工程は原則ベンダーがにやっていた。が、今回は自分がその「ベンダー側」に回っているだけに、戸惑うことが多かった。 これまで使ってきた立場から、おおよそどのようなことをやるかは想像がついていたものの、想像以上に詳細を極めた。が、技術的なことは簡単に考えているらしいリーダーのO氏は

 

「最初は誰も戸惑いますけど、こんなものは1回やればすぐにできるようになりますよ。 これまでと違うというのも、いい経験になって良いでしょう?」

 

などと、どこか面白がっているようなところがあった。