2004/06/30

県大会で大暴れ(中学サッカー県大会)

 地区大会で、優勝候補の筆頭に挙げられていた怪物ドージマ率いる『A中』との血の雨降る死闘を制し、遂に念願の県大会出場権をもぎ取った『B中』サッカー部。続く県大会でも地区優勝の勢いは衰えることなく、並み居るライバルを次々に撃破し、いよいよ「全国大会」が目前にちらついて来た。

「これは『B中』の歴史に残るような快挙になるかも知れんぞー。オマエらの力なら、絶対に優勝も出来るはずだ・・・」

若きガンゾー監督も思わぬ快進撃を目の当たりにし、顔を真っ赤にして相当に興奮気味だ。約束どおり『A中』のキャプテン・ドージマばかりか、チームメイト数人も応援に駆けつけてくれていたのには驚いた。

「オオ充分、堪能させてもらってるぜ。サッカーをこんなに楽しんで観るのって、生まれて初めてだよ。あー、サッカーって、本当におもしろいなー」

「勝て」とか「頑張れ」というような、押し付けがましいセリフが一切出てこないところが、やはりドージマらしかった。

最大のヤマ場と目された準々決勝の相手は、優勝候補筆頭にその名が挙げられる強豪校。

「この相手に勝てば、優勝したようなもんだ・・・次の事は考えず、死ぬ気でいけー!」

かつて『A中』時代に、県大会に進出した経験を持つというガンゾーは、今にもグランドに飛び込んできそうな勢いである。そんなガンゾーの執念が乗り移ったか、キックオフ早々にゃべ得意の速攻で、先制のゴールが綺麗に決まった。

「さすがは、にゃべ!
この試合もらったーぞー、イケイケー!」

ガンゾーを先頭に、ベンチのボルテージも最高潮に達したが、さすがに相手は強豪として揉まれてきた百戦錬磨のチームだけに、やはり底力が違った。

時間の経過とともに、ジワジワと地力を発揮してきた相手に押され始めると、後半は防戦一方のツケからディフェンダーの足が止まり始め、なす術もなく逆転を許したところで、終了のホイッスルが虚しく響き渡った。

結果は、昨年の『A中』と同じ準々決勝敗退。強豪相手に惜敗は大健闘とはいえ、目標だった決勝へのキップを逃し中学サッカー有終を飾れぬまま、クラブを卒業する事となった。

「いいゲームを楽しませてもらったよ」

と、ドージマから労われたが

「チクショウ! このチームなら、絶対優勝できると思ったのにー!」

「しゃーねーよ。勝負は時の運もあるし、済んだ事はもう言いっこなしだ・・・」

などと、悔しさの中でも健闘を称え合う仲間たち。

「来年からは皆バラバラになるが、それぞれの高校で国立(全国大会)を目指して、頑張ろうじゃねーか!」

というイモ主将の挨拶で、激しく燃焼した3年間の活動にピリオドが打たれた。

シューマン チェロ協奏曲(第1楽章)



 一流ピアニストの腕を持ちながら、ヴィルトゥオーソ(超一流演奏家)が派手に活躍するような華美な音楽を嫌ったのがシューマンである。

ヴィルトゥオーソの超絶技巧」と言う以前に、そもそも派手なものが嫌いというべきで「三大」に数え上げられているピアノ協奏曲ですら「ピアノの目立たない協奏曲」として有名なくらいだ。

このチェロ協奏曲も、シューマンらしい滋味溢れる曲である。チェロ協奏曲自体少数である中、全楽章切れ目なく綴られるなど構成的に異彩を放っており、ロマン派協奏曲の中では取り上げられることも多い。なお作者の協奏曲作品は他にピアノ、遺作であるヴァイオリンの3つしかない。
出典Wikipedia

この曲の初演データは、はっきりしていない。1854年に楽譜が出版されたものの、作曲家の生前には演奏されなかったようである。シューマンがデュッセルドルフ市の音楽監督に就任した直後の精神的に安定した時期に作曲された曲である。シューマン自身、チェロの音に強く魅力を感じていたことを反映してか、全曲に渡りロマン的な憂愁を湛えている。

当時、チェロ協奏曲という分野は一般的ではなく、この曲もシューマンの生前に演奏された記録は残っていない。

ドヴォルザーク、ハイドンのチェロ協奏曲と並んで「三大チェロ協奏曲」と呼ばれることのある割には、現在でもそれほど生で演奏される機会は多くない曲といえる。それでも、チェロの重要なレパートリーであることは間違いがない。
出典 http://www.oekfan.com/note/

2004/06/29

ロッカールーム(中学生図鑑part16)


 記憶にある限り、イモとは『B小』時代は1度も同じクラスになったことがない。中学も含めた9年間でも、同級になったのは僅かに1度だけで、出逢いは『B中』サッカー部からだった。

同学年の『B中』サッカー部員は『B小』サッカークラブに属していたメンバーが6人に、小学校時代は別のクラブだったイモとタケウチの8人で、タケウチは練習に付いていけず直ぐに脱落した。残った7人の中で、イモだけが水泳クラブからの「移籍」だけに、唯一中学から初めて同僚となった男だが、どういうわけか最初からウマが合った。

最初に声をかけたのは、自分から方だった。イモによれば

「なんせ、オマエは『神童にゃべ』だったし、小学生時代は遥かに仰ぎ見るような存在だったからな。多分、オレだけじゃねー、他の連中も同じだろう。同じクラスになったことはなくても、散々に噂は聞いてたし名前はよく知ってたが」

とのことで、そのせいか最初のうちは話し掛けると引き攣ったような表情でポツリ、ポツリと返事を返してくる程度だったから、こっちとしては単に

(無口なヤローだ・・・)

くらいに思っていた。が、サッカーの実力にかけては、こちらとも遜色なかったことで、自然と気安くなっていった。この辺りが、スポーツの素晴らしさだ。

「あの『神童にゃべ』と、こんなに軽口が訊けるようになるとはな・・・オマエ方はバカにしてたんだろうが・・・」

「オイオイ。バカにしたことなんて、あるわけねーだろーが」

「そりゃ、ホンマかいな?」

「中学までオマエの存在すら知らなかったオレが、どーやってバカにできるんだ?」

「ヒデーな。存在すら知らんとは、呆れてモノが言えん」

「だって一緒のクラスになったことがないんだから、知らないのがフツーだろ」

といった調子で、何を言われても笑い飛ばしてしまう寛容なところが、この友の最大の長所だ。

ところで『B中』サッカー部といえば、当然大エースのにゃべがキャプテンになるものと誰もが思っていたに違いないが、実際に前キャプテンから新キャプテンに任命されたのは、このイモだった。級長や生徒会長には、それほど魅力は感じなかったが「サッカー部主将」に対しては大いに野心があったし、また当然自分がなるものと思っていただけに、これにはかなりショックを受けた。

激怒して前キャプテンに詰め寄ったのは、およそ1年前だ。

 「なんで、イモがキャプテンなのか? ハッキリ言って人格・力量ともに、オレの方が数段上だと思うんだが・・・」

前キャプテンは笑っていたが、ニベもなく言い放った。

「いや、オマエよりイモの方が、キャプテンに相応しいよ。オマエはいつも自分のことだけを考えて、周囲の事を考える余裕がないからな・・・」

当時を振り返って、ある時イモに

「あのバカなセリフだけは、今でもオレは許しとらんぞ!」

と息巻いてみせると、イモは呆気に取られた表情だ。

「オマエ・・・それって、マジで言ってたりする?」

「当然だろーが!」

「てことは・・・あれがキャプテンの真意だと、もしや今でも思っているって・・・?」

「何だと・・・違うとでも言うのか・・・」

すると、イモが腹を抱えて大爆笑を始めた。

「オイオイ、世の中にオマエくらい賢いのはいないと思ってたが、案外とアホだったんだな。オレなんぞは、最初からキャプテンのハラは、ミエミエに見え透いていたぞ」

「キャプテンのハラも、ヘッタクレもねーだろーが・・・」

「あんなの逆説に決まってるだろ!」

「逆説・・・だと? 一体、何を言ってるんだ・・・」

「オマエには、周囲に捕われず好き勝手に暴れて欲しいんだと・・・それがオマエの欠点でもあり、また美点でもあるわけだが・・・キャプテンとしては、それがチームの勝利に一番いいと判断したわけさ。それで面倒な雑務が多いキャプテン業は、ワキ役のオレに押し付けやがったんだ・・・」

「それは・・・オマエがこの場凌ぎの思いつきで、創作した話じゃねーのか?」

「チッ! どこまでも、疑い深いヤローだな」

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 「オレがキャプテン? やっぱオレより、にゃべの方が・・・第一、オレのキャプテンなど、アイツが納得するはずがないし・・・」

「納得するも何も、もう決めたことだ。実際、キャプテンってのは格好いいモンじゃねーんだ。面倒な雑務が多くてな。済まんが、我慢してくれ・・・にゃべには、プレーに専念してもらいたい。アイツは、オマエと違ってワガママだから、キャプテンのような雑務は似つかわしくない・・・」

よくぞ、このイモがサッカー部にいてくれたものだ。