2012/04/05

スランプ(プロジェクトJ)(4)

ところで肝心の詳細設計書の方だが、実はこれが難航していた。正確には「難航」というよりも、全く書けなくなっていたのである。

 

(そんな馬鹿な・・・あれだけ高品質の開発計画書を作った俺に書けないわけがないではないか!

なにも難しく考えることはない。あの続きを書けばいいだけなのだ・・・)

 

と自らを叱咤するも「あの続き」が、どうにも書けないのである。

 

それでも期日は決まっているから、どにもかくにも無理やりにでも書き始めたのだが、どうにも筆が進まぬ。こうして苦闘しているうちに「なぜ書けないか」の原因がわかって来た。

 

そう、「書けない」のではなく「書くことが無い」のだ。では、なぜ「書くことが無い」のかといえば、それは開発計画書にすべて書ききってしまったから・・・

 

いまさら気付いてみれば「開発計画書」というのは基本(概要)設計書的な位置づけであるが、その開発計画書にあまりに細かいことまで書いてしまったため、詳細設計書作成の段になって、ここで描くべきことをすでに開発計画書で描き切ってしまっていたことに気づいた。そうなのだ、あの開発計画書は基本設計と詳細設計の1冊で書ききっていたのである。だからこそ、あれだけの高品質が実現したのであり、高い評価も得られたわけだ。

 

そうなのだ。あの時

 

「開発計画書を作成してください」

 

と言われた時に「基本設計書を作ってください」と言われていれば、当然のことながらその先に「詳細設計書作成」というタスクが控えているというイメージが出来上がっていたはずだったが、現実は「開発計画書」というネットワーカーの自分としては耳慣れない名称だったため、この後に詳細設計書作成のタスクが続くということは全く念頭になかった。

 

ネットワークチームでタバコを吸うのはワタクシとK氏のみである。ということは、当然ながら狭い喫煙所のスペースでK氏と顔を合わせる機会は多いから、ある時

 

「いやー、詳細設計書の作成が難航してますよ・・・開発計画書にすべて書ききってしまったので、今更欠くことが無くなってしまって・・・参った」

 

とぼやくと

 

「ああ、そうですね・・・あの開発計画書は、内容的にだいぶ細かったからねー。書くことなければ、あれは詳細設計書も兼ねているってことでいいんじゃないの?」

 

と、ひそかに期待した助け舟を出してくれる気配すらなかった。

 

当然ながら、元請けS社のNリーダーやT君からも

 

「タイミング的に、そろそろ詳細設計書のレビューをしないとですが・・・作成状況は、どんなもんでしょうか?」

 

と聞かれ

 

「それが、難航してましてね・・・」

 

と苦し紛れに答えるしかなかったが

 

「まあ、とにかくできるとこまでで良いので書ききってもらって、まずは我々でレビューしましょう」

 

と、無理矢理レビュー日程を決められてしまった。

 

まあ、我々技術者には「納期」があるから、苦しみながらもとにもかくにも納期までにどうにか体裁を整えるところまでは持って行ったが、内容の薄さは否めない。開発計画書で触れなかったネタを探して、無理矢理水増ししたような内容のものが出来上がった。

 

後から振り返って見れば、あれで良くレビューに出したものだと汗顔の至りではあるが、その時は納期に間に合わせないといけないという事情もあるから

 

「一応、それなりに見られるレベルにはなったはず・・・」

 

という勘違いもあった。

 

「なにしろ、この前の開発計画書が細かいところまで書ききってしまったせいで、どうも書くことがないような状態で・・・ほかに何を書けばいいでしょうかね?」

 

と聞いてみたものの、T君からもK氏からも

 

「こういうことを書いたら?」

 

というアドバイスは出ずに

 

「ともかく時間もないので、一旦これでSさんレビューに出してみましょう。レビューすれば、なにかこういうことが足りないとかの意見が出るかもしれないので・・・」

 

と、リーダーN氏にせかされるようにして、渋々ながらユーザー担当者のS氏レビューに進むことになった。

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