このような状況から、歯学部入学希望者は減少傾向にあり、2009年入学試験においては私立歯科大学への受験者総数は前年に比べ約2800人減少し4973人(延人数)となった(前年比、約36%減少)。その結果、国公立大学歯学部の1学部(1名欠員、北海道大学歯学部、辞退理由は私立大医学部医学科に進学のため。辞退時期が遅すぎて大学側で欠員補充できず)、私立大学の11学部で定員割れが生じている。中には北海道医療大学歯学部(欠員率31.3%)、岩手医科大学歯学部(欠員率25.0%)、奥羽大学歯学部(欠員率44.8%)、日本歯科大学新潟生
命歯学部(欠員率40.6%)、松本歯科大学歯学部(欠員率43.8%)といった欠員率が25.0%以上となる学部もあった。また地方では、長期的に見れば投下した学費や開業費用などを回収する見込みが立たないこともあり進出が難しく、リスクがあっても都市部で開業せざるをえない事情もある。
かつて薬局や銭湯が競合と偏在を避けるために配置基準(距離基準)が設けられていたように、都市部に歯科医師が偏在すれば地域的な供給過剰や過当競争が発生するのは必然であり、過剰問題と偏在問題については緊密な関係が認められるため、総合的な解決策が望まれる。
歯科の場合は、以下のような問題点がある。
・ 小規模な個人開業医が多数を占めるため、診療・研鑽・経営等の負担が過重になる傾向があること
・予防・早期治療・再発防止などに重点を置くほど利益が上がらなくなり、経営を圧迫するという出来高制の矛盾が指摘されていること
・経営優先の重圧感が齎す悪影響(患者に分かりにくい範囲での治療の劣悪化など)も軽視できないこと
・消費者である患者からの医療の質に対する評価が、必ずしも容易とは言えない(安かろう悪かろうといった判断がしづらい)こと
このように、供給過剰であるほど低廉な費用で良い治療に直結するとは容易にならないところに、歯科医師過剰問題の難しさがある。また医師と違う点は、医師に比べて過剰状態にあることであり、現在開業後3年目に約30%の新規歯科医院が経営的危機、閉鎖している。既存医院の競争(窓口負担の値引き等)も認められる。加えて、現状の問題点として以前から指摘されていることではあるが、日本人の約9割は痛くなったり自覚的な問題が起きないと受診せず、酷くなってから(酷いところを溜めておいて)受診する傾向が高い。
日本の医療制度は出来高払いだから、治療の程度が重くなるほど点数も上がる。 結果、欧米より遥かに料金設定が安くても、一人当たりの平均歯科医療費が高くなりがちとなる(当然ながら多少の地域差・患者層の差はある)
受診を我慢して病気が重症化する方が、結果的に医療費は高くつくことになることから早期受診・早期治療こそ、医療費を抑える効果的な方法と言える。必要最小限の定期健診は、義務化(罰則なし)するとさらに効果的となる。こういった政策が実現すれば、医療の充実化と受診を活発化することで、歯科医師過剰問題をも一挙に解決する可能性を持っている。
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