2012/03/15

面接(プロジェクトJ)(1)

面接を受けたのは、ユーザーの大手信託銀行が入っている晴海トリトンスクウェアのCaféだった。

 

面接は、二次請けと三次請けの現場担当者とで行われたが、三次請けの担当者がNWチームの担当ということで、もっぱらこの出しゃばり男が喋っていた。

 

現状、NWチームの中心となっている人物が高齢のため、体調の関係で週に2~3日出勤の半稼働となっている。ところが、最近体調が悪化したのに伴い後任者に1か月程度引き継いだうえ、プロジェクトを退きたいということらしく、その後任者として白羽の矢が立てられたのである。

 

半稼働とはいえ、かなりのベテランだけにK氏のスキルは高いらしく、当然ながら後任となる人材には、それを補うレベルのスキルが求められるということだった(この時点では、面接で偉そうにしていたS君もそれなりのスキルがあって、K氏とコンビを組んでいるものと勘違いしていた)

 

一次面接は二次請けL社のサーバ担当T氏と、三次請けのI社のネットワーク担当S氏に加え営業のA氏が同席した。ネットワーク担当ということからか、はたまた単に押しが強い性格からか、業務の説明や必須となるスキルについての説明はもっぱらS氏が喋っていた。

 

この一次面接はすんなりと通り、次は元請けの大手SIerであるS社リーダーとの面接で合否が決まるという。晴海トリトンというのが通勤には正直面倒ではあったものの、一次面接で聞いた限りは、それほど難易度が高いという感じではなかったため、ともかく最終面接に進むことにした。

 

面接は、やはり現場のトリトンの会議室で行われたが、元請け大手SIerのS社リーダーのN氏が気さくな人柄なのに加え、年齢が同じとあって

 

「私と同い年ですね・・・」

 

というところから始まると、極めてとんとん拍子に話が進んだ。

 

一次面接の時と同じ二次請けL社のT氏と三次請けI社のS氏に加え、元請けS社からはリーダーのS氏だけでなくNWチームのT氏も同席して来た。

 

こうして面接が進んでいる中

 

「大体の話は、してもらったんだよね?」

 

とN氏から確認されたS君は

 

「はい。Kさんの代わりということで、Kさんのスキルや担当業務をひと通り説明しております。まあ、いきなりKさんの代わりは無理なので、私もフォローしながら一緒にKさんの穴をカバーしていければと・・・」

 

というと、リーダーのS氏が

 

「Kさんの代わりはSさんじゃなく、にゃべさんだからね・・・」

 

と釘を刺したが、この時点ではその意味はわからなかった。

 

丁度という、このタイミングでS氏の携帯が鳴り

 

「おっと・・・

ちょっと失礼・・・」

 

とS氏が席を外すと、面接者のN氏がやおら身を乗り出して来た。

 

「実は・・・本来ならSさんがKさんの代わりになってくれると良いんだが、彼のスキルではKさんの代わりは到底務まらなくてね。今回来てもらう人には、Kさんの代わりとして来てもらいたいわけですよ・・・」

 

「ああ、そういうことですか。まあ、話を聞いた限りは、なんとか対応できるのではないかと・・・」

 

というと、

 

「そうですよね。Kさんは大ベテランだから、かなりスキルは高いですが、経歴などから見てにゃべさんなら代わりが務まりそうかなと。少しは、Kさんの引継ぎもありますしね・・・まあ、半稼働だから、実質2週間程度にはなるでしょうが・・・」

 

ということで、図らずもS氏の中座により瓢箪から駒のようにリーダーS氏の本音が聞かれた。

 

「まあ、Kさんが辞めた後も自分がいるので、必要ならフォローしますよ」

 

と、同席しているS社のT氏が優しく言った。

 

さて、なにも知らぬS君が戻ってくると、リーダーS氏が

 

「正式な結果は追って連絡しますが、今話を聞いた限りではKさんの代わりとしても十分に行けるんじゃないかという感触を持ちましたので、前向きに回答させていただきます。Tは、どうだ?」

 

と、NW担当のT氏の見解を求めると

 

「私も、大丈夫と思いました・・・」

 

ということで、殆ど決まったようなものだった。

 

そして、その日の夜のうちに早速、所属のF社から

 

「トリトンの案件で、ぜひ参画願いたいといってきていますが、いかがしますか?」

 

と確認の電話が入り、承諾したのだった。

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