今治
今治の焼き鳥は「串付き肉を網の上で焼く」という一般的によく見られる方法ではなく「肉や野菜を鉄板の上で焼く」という一見風変わりなもの。これは商売人が多く、せっかちで待つのが嫌いな気質と言われる今治の人を満足させることから、約50年前に考案されたと言われている。
「早い」「安い」「旨い」の三拍子が揃った今治焼き鳥は、多くの支持を得、現在は市内に約70店舗ある。また、人口あたりの焼き鳥店舗数が日本一(平成10年5月タウンページ)であったことから、平成11年3月には「焼き鳥日本一宣言」をした。
平成11年8月には「今治ヤキトリ料飲組合」も結成され、毎年8月10日を「焼き鳥の日」と定め『やきとりの街今治』をPRしている。
●鉄板の上で焼くのが今治焼鳥
熱々の鉄板の上から大きな鉄のコテで肉を押さえ、ジュージューと豪快に焼く個性的なスタイルの今治焼き鳥。特に個性的なメニューと言えるのが「皮焼き」である。
皮のみを焼く店もあれば、少し肉を残した皮を提供する店もあり「皮焼き」は食感も味も、それぞれの店のこだわりを楽しむことができる。またタレも、トロリとした甘辛醤油タレ、さらりとしたタレ、おろしタレ、からしタレといったように、店ごとのこだわりを楽しむことができる。自分に合ったタレの味を見つけるのも「今治焼き鳥」を楽しむ方法の一つと言える。
「皮」に始まり「せんざんき」で終わる、というのが今治焼き鳥通の食べ方らしい。「せんざんき」というのは、この地域に昔から伝わる郷土料理で、下味を付けた唐揚げのことを指す。名前の由来は
・鳥肉を千に小さく切ることから「千斬切」
・きじ肉を最初に使ったことから「せんざん雉」
・中国料理の「軟炸鶏(えんざーち)」
と諸説あり、味付けや揚げ方もその店々で違いがある。
久留米
久留米の焼きとりは、屋台で出されたのが始まりとされている。現在、焼きとり専門店として最古参の屋台は、1963年(昭和38)に開業した屋台である。店主は、久留米焼きとりについてこう話します。
「焼きとりは、うちが開業する前から久留米の屋台で出されていました。それでも開業した頃、焼きとりを出していた屋台は10軒ほどでしたし、今ほど品数はありませんでした。例えば、ダルム(豚・牛・馬の腸)や豚バラ、鶏の砂ずりなどで、鶏肉は手に入らなかったものです」
久留米市史によれば
『我が国の経済は昭和30年代後半から40年代にかけて高度成長を維持し続け、本市はやや後れながらも躍進期を迎えた』とあります。
その頃、久留米市では、いわゆる「ゴム3社」のブリヂストンタイヤ(株式会社ブリヂストン)や日本ゴム(株式会社アサヒコーポレーション)、月星化成(株式会社ムーンスター)が技術革新によって業績を伸ばし、街は賑わっていた。
その頃を振り返り、店主はこう話します。
「工場などで働く人々が、屋台の開店前から並んでいたものです。久留米には昔から肉屋、内臓屋といった専門業者がいましたので、豚や牛、馬の材料を手に入れやすかったように思います。それもあって焼きとりファンが自ら屋台や店舗を構え、店の数が増えていったのです」
現在、久留米市には焼きとりを出す店は、約200軒あるといわれている。
久留米焼きとりの特徴は、その品数の多さだ。

鶏や豚、牛、馬、魚介類、野菜、巻物などを竹串にさし、炭火でじっくりと焼きあげる。また内臓ものの品数が多いのも、久留米焼きとりの特徴である。
「現代用語の基礎知識2007」では、久留米焼きとりの特徴をこう紹介している。
『店ではまず酢ダレのかかったキャベツが出る。基本は塩焼きで、肉の間に玉ねぎが挟まれている。豚、牛、鶏が混在したスタイルで、創作巻物も豊富。珍しいメニューに「ダルム」(ドイツ語で馬の小腸)(左画像)やセンポコ(主に牛の大動脈)など』
「全や連総本店
東京」は、大手町サンケイビルの地下にある。店内は各地域出店のブースに分かれており、どこでも好きなところが利用できる。
ビジネス街という場所柄、平日は仕事帰りのサラリーマンで賑わいそうだが、土日は穴場であろうとの見立て通り、ある土曜日などどのブースも人が少なく「貸切」状態だった。
最初に行った時には「全や盛15本」(1980円)というのを食して満足したが、2回目にはすでにこのコースはなくなっていた。
「量が多すぎるため、廃止しました」という説明だったが、2人で15本はちょうど良かったし、価格も手ごろだっただけに惜しまれる。
お薦めの「ご当地食べ比べセット」(7本、1280円)は、その名の通り各地の名物が1本ずつ入ったセットだ。
今回まで5回に渡り紹介してきたが、再度おさらいしておく。
・鶏の内臓すべてを1本の串に刺し、たまねぎをはさむ北海道の「美唄やきとり」
・豚肉にたまねぎを挟み、洋ガラシをつけて食べる北海道の「室蘭やきとり」
・伊達赤鶏などを使ったストロングスタイルの福島県「福島やきとり」
・豚のカシラ肉などをピリ辛の味噌だれで食べる埼玉県の「東村山やきとり」
・厚い鉄板で鳥皮を焼く、串に刺さないスタイルの愛媛県「今治やきとり」
・ガーリックパウダーや唐辛子を振りかけて食べる山口県の「長門やきとり」
・そして、豚、鶏から馬肉までなんでも刺してしまう福岡県の「久留米やきとり」
「本日のご当地地酒3種飲み比べ」という日替わりメニューの地酒と生ビールをおともに、片っ端から各地の名物をオーダーしていった。
個人的には、やはり串焼きはサッパリとした鶏が好きだ。ブタはやはりくどいし、東松山(埼玉)では立地的にも近くて有難味に欠けるし、久留米のダルムなどもやはり自分にはくどい。今治の鉄板焼きは酒のおともには悪くはないが、やはり焼き鳥は串焼きが良いし、福島のはオーソドックスすぎて面白みに欠ける。
ということで、気に入ったのは美唄、室蘭、長門だが、色々食べた結果で最も旨いと思ったのは美唄である。もっとも散々飲んだ後だったせいかもしれないが、締めに食べたイカ墨パスタのような美唄の「石炭焼きそば」は、ひたすら濃厚な味わいではあったが ( ´艸`)ムププ