2013/12/15

笛吹川と釜無川

『昔、三富の里に日原権三郎という若者が母と二人で暮らしていました。二人は都から戦に出た父親を探しにきて、三富に住むようになったのでした。権三郎は笛がたいそう上手でした。苦労が重なって眼が見えなくなった母親は、権三郎が吹いてくれる笛が何よりもの慰めでした。

 

ある年、大洪水があり権三郎は母とともにねとり川の濁流に飲まれましたが、やっとのことで大岩によじ登り助かりました。しかし母は権三郎の名を呼びながら、流されてしまったのです。それからというもの、権三郎は昼も夜も笛を吹きながら、川岸を上ったり下ったりして母の行方を探しました。雨の日も風の日も、母を探す権三郎の笛の音が聞こえていました。

 

ある日のことでした、石和に近い川下に権三郎の遺体が流れ着いたのです。母を探しているうちに、川に落ちたのでしょう。それからも夜になると、川の方から笛の音が聞こえてきました。村人たちは権三郎が死んでからもまだ、母親を探しているのだと言いあって哀れに思いました。そしていつからか、この川を【笛吹川(ふえふきがわ)】と呼ぶようになったと伝えられています』

 

このような伝説を持つ笛吹川は、秩父山系の甲武信ヶ岳が源流となっています。流域には、笛吹川フルーツ公園(山梨市)や石和温泉(石和町)などがあります。田富町で「釜無川」と合流します。

 

「フエ・フキ」、HUE-HUKI(hue=calabash,gourd;huki=spit,stick in as feathers in the hair)、「ひょうたん(のような盆地)を・貫いて流れる(川)」

 

釜無川の名前の由来は他にも色々説があるそうですが、巨摩(こま)地方で第一の川という意味の「巨摩の兄(せ)川」がなまったと言う説もあります。また上流の「釜無山」にちなむというものや「水量が豊富で流れが速いため、釜を洗おうとするとすぐに流されて無くなってしまうから」という伝承に近いものなどが挙げられる。

 

その中でも有力視されているのが、絶え間なく流れる様子を表した「クマナシ(隈無し)」に由来しているというものである。

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