一汁三菜は、汁物1品とおかずを3品(主菜1品+副菜2品)にした構成である。
本膳料理の中でももっとも簡素な形式で、懐石では向付(刺身や昆布締め、膾など)、煮物、焼物で三菜となる。
■1人ずつのお膳
和食の基本形とされるのが一汁三菜(ご飯と汁物、おかず、漬物の組み合わせ)だ。平安時代の食事風景を描いた絵巻物にもあり
「文献に一汁三菜という言葉はないが、平安時代には武家や平民は、銘銘(めいめい)膳(1人ずつのお膳)を持ち、庶民の食事の形態としてあったと考えられる」
一方、食文化の頂点に立つ、おもてなし料理。室町時代に武家社会で確立した「本膳料理」(一の膳、二の膳、三の膳と順番に膳に載せた料理が提供されるスタイル)は、小さな膳(銘銘膳)に載せる料理の数に限界があるため、膳の数を増やしたと考えられる。江戸時代には「二の膳つき」(二汁五菜)が定着し、食べ切れない料理は持ち帰った。
あり余る料理を提供する本膳料理に対し「茶の湯」から生まれたのが「懐石」だ。 「全部食べ切る」、「できたてをその都度、運ぶ」、「季節感や祝いの心など言葉にならないメッセージを伝える」などが特徴で、現在の伝統的な和食のルーツとされる。
「おもてなしでは一の膳、二の膳と続くが、一般的な食事は一の膳だけ。1つの膳に載せるには、ご飯と漬物、お汁1つとお菜(おかず)が限界。しかし、現代は銘銘膳ではないので、一汁三菜でも四菜でもいい」
◆独特の口中調味
さらに和食を特徴づけるのが、断熱性の高い器を用いた食べ方だ。器の中で混ぜず、器を手に持ち、箸でご飯とおかずを1口ずつ取り、口の中で混ぜ合わせて調味する。おかずの量を調節しながら、味付けを決める食べ方「口中調味」は日本人独特とされる。
興味深いアンケートがある。辻調理師専門学校などが運営する「辻調グループ」が昨年10月、全国の20~60代の男女572人にインターネットで調査したところ、22.7%が「カレーライス」を「和食だと思う」と答えた。カレーライスが和食かどうかはともかく、食べ方には和食の伝統が色濃く残る。皿で混ぜ合わせず、ご飯の上にカレーを載せて食べるのは口中調味、ご飯の横に福神漬けなどを添えるのは一汁三菜の影響だ。
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