2014/04/20

高遠桜の絶景

夕食と同様、朝食も昨晩と同じ料亭個室で堪能し、2日目が幕を開けた。

 

2日目は、この旅の最大のお目当てである天下に聞こえた「高遠の桜」だ。なにしろ交通の便の悪いところだから、電車の時刻はしつこいくらいにチェックしていた。ところが伊那市まではスムーズに9時半くらいに着いたものの、一つしかない高遠行のバスは1040分と1時間以上も待たないといけない。他に見どころもあればまだしも時間を潰せると思ったが、見事になにもない「ただの田舎」である。

 

(こりゃ、困った・・・高遠までタクシーだと45000円はキツイしな・・・)

 

などと悩んでいる間に、バス停の前に続々と高遠に行くらしき観光客がやってくる。爺さん、婆さんが目に付く中、チャラチャラとした若いカップルの姿が目に付いた。見るからに、金を持っていそうにない。しばらく観察していると、やがてタクシー運転手と交渉を始めたが難航している様子を見すまして、徐に近寄っていく。普通の状況であれば絶対に近寄りもしない、金髪のチャラチャラした坊やだったが、ここはミッション達成が重要だ。ガラの悪い運転手は、相手がチャラい若造と言うことも手伝ってか、横柄な口調で

 

45000円くらいだな」

 

などと怒鳴っている。

 

「高遠に行かれるんですか?」

 

救いを求めるような、若者の表情に得たりと

 

「じゃあオレが半分払って、半分ずつでもいい?」

 

と持ちかけると、チャラい金髪(相棒の女も)が愁眉を開き

 

「いいんですか?」

 

と言う間もなく、運転手は

 

「よーし、決まった! 一番エエところまで行ったる! バスなんかじゃ遥か手前で降ろされるが、公園まで行ちゃる!」

 

と息巻いて、いざ出発・・・という寸でのところへまた一人、切羽詰ったような表情の男が、今にも腕を掴まんばかりの勢いで走り寄ってくると

 

「高遠に行かれるんですよね?」

 

と、決めつけるような喧嘩腰だ。

 

「そうだけど」

 

と返す間もなく、ガラの悪い運転手の

 

「よーし、決まった! これで11000円になったぞ!」

 

という怒声が響き渡る。呉越同舟となった3人の同行者を後部席に乗せ、自分は助手席でガラの悪い運転手の案内を聞きつつ相手を務めながら、なんとか高遠城址公園に到着だ。

 


「天下の高遠桜」という言葉は散々聞いて来たし、これまでずっと行きたいと思っていただけでなく、去年など何度も計画しながら終ぞ実現しなかった高遠が、こうして遂に眼前の景色となった。

 


 そして目の前にある、山一面が鮮やかなピンクのコヒガンザクラに彩られた景観は、噂に違わぬ息をのむような絶景としか言いようがなかった。

 


 前日の難行による足の痛みは、温泉の効果もなくピークに達してはいたものの、あまりの美しさに見惚れて気付けば場内を何周もしていた。高遠湖を望む「さくらホテル」で、日帰り温泉に入る。前日と併せ4つのホテルの温泉を堪能したが、もしかするとここが最高だったかもしれないという高遠の湯を堪能し、スーパーあずさで東京へ帰還した。

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