フィギュアスケートのグランプリ・シリーズ最終戦・NHK杯(カッコ悪・・・せめて「ジャパン・カップ」とかに変えて貰いたい)で、浅田真央選手が優勝した。
この浅田を筆頭に鈴木明子、中野友加里と、日本選手が表彰台を独占した。
出典https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/200811300002-spnavi
<浅田は、2週間前のフランス大会での大失敗から、どこまで調子を取り戻しているかに、誰もが注目をしていた。トリプルアクセル2回。判定では、2度目のコンビネーションはダウングレードで、記録の上では認められていない。しかし観客の目にも浅田自身にとっても、この日のフリーは
「トリプルアクセルを2回成功させた、素晴らしい演技」
だった。
一度目のトリプルアクセルは、ふわりと軽い跳躍で心なしかいつもより滞空時間が長く見えるほどで、美しいものにうっとりする目で、私たちはそれを見た。そして2度目のアクセルは、ダブルトウループをつけたコンビネーション。
「ほんとに、二つ跳んじゃった!」
信じられないものを見たような驚きの目で、私たちはそれを見た。続けて、フリップからの3回転-2回転-2回転を難なく跳んでしまうと、もう後は浅田の世界を楽しむだけだ。
ステップの難しさも、繋ぎのスケーティングの巧みさ、細かい上手さや美しさを挙げていけば、きりがない。しかしそれ以上に、この日の観客を圧倒したのは彼女自身の強さ、スケールの大きさだ。
大音響で鳴る豪快な名曲「仮面舞踏会」を、華奢な女の子がお伴のように従えている。10000人近い大観衆の総ての視線、総ての期待を一身に引き受けパワーとして吸収しオーラとして解き放っている。
「普通に滑っても、すごく大変なプログラム。そこにアクセル2回入れちゃったから、最後の方は体力も限界にきていました。でも最後まで、倒れるくらいまで滑ったら……本当に最後、倒れちゃいましたね(笑)」
まさに、渾身の演技。何度転んでも不調に泣いても、最後にはこれだけのものを見せてくれるから、浅田を見ることはやめられないのだ>
<浅田のちょっと人間離れした演技さえも、また練習のたまもの。あそこまでの演技を見せるためにすることさえも、人間の身体と人間の精神が出来る努力、それだけなのだ。
真っ白な氷の上、煌びやかな衣装をまとい、流れるような動作で優雅に舞う。フィギュアスケートは、ファンタジックで現実離れした雰囲気のあるスポーツだ。彼女たちがよく「氷上の妖精」などと喩えられるように、きれいなお嬢さんたちが優雅に楽しんでいるもの、そんな印象がどうしてもつきまとう。
しかし、この夜に日の丸を掲げた3人。強く美しい日本の女性たちが、皆一様に口にした言葉は「練習」だった。三者三様、立場はそれぞれ違い課題も違う。それでも、日の丸を掲げたこの夜にたどり着くために、煌びやかでも優雅でもない日々の練習、鍛錬を積んできたことは同じだ。彼女たちは氷上で、苦悶の表情も飛び散る汗も土に汚れたユニフォームも見せることはない(見せてはいけない)
こうして総てを見せずに笑っていることが、実は一番難しいことではないだろうか>