2009/09/15

イチローが9年連続200安打の快挙

イチローが「9年連続200安打」という快挙を達成した。

 

9年連続200安打」は、1894年から1901年にかけてウィリー・キーラーという選手が達成した「8年連続」の記録を、実に108年ぶりに塗り替えるという大記録であり、MLBの記録である通算4256安打のピート・ローズや鉄人ゲーリックを始め、100年を超える長いMLBの歴史で、世界中のどんな天才も成しえなかった「大金字塔」である。

 

あの天才的な打撃技術もさることながら、イチローの最も素晴らしいところは、なんと言っても休まずにゲームに出続けている事だ。今季こそ、開幕後の胃潰瘍の8試合を含め計16試合に欠場したが、これがニュースになるくらいに、これまでイチローが休んだという話だけは、滅多に聞いたことがなかった。

 

イチロー後に鳴り物入りでMLBに移籍した松井や松坂などに限らず、日本選手はどれもこれもが怪我で離脱ばかりしているが、イチローに限っては長期離脱はおろか、欠場という話さえ滅多に訊いたことがない。それもそのはずで、長期離脱などしていたら毎年200本を超える安打数を残すことも、通算3000本超えという大記録も生まれようがないのであるから、いかに優秀な能力を備えていようと、「無事これ名馬」でゲームに出ないことには意味がないのである。今季は特に「WBC後遺症」と言われるほどに、WBC参戦組の長期離脱や不振が目に付いたが、それらの選手の「WBCによる、調整の難しさ」などというタワゴトは、イチローの巨大な存在が許さないのである。

 

その天才も、シーズン前のWBCでは思わぬ不振に喘いだ。WBCの行われる春先は、ベテラン勢はまだ体が出来あがっていないため、総じて外国人投手のスピードに体がついて行けない傾向が見えたが、これはイチローとて例外ではなかった。加えて日本代表のリーダー格としても、想像以上のプレッシャーを感じていたようだった。その結果が胃潰瘍となって表れ、初めて経験するDL(故障者リスト)入りからのスタートとなり

 

「イチローも、そろそろ歳かな・・・」

 

と密かに危惧したものだが、復帰すると同時に通算3085安打の日本記録をあっさりと更新した。さらには先日のMLB通算2000本安打の達成も、これまたアル・シモンズの1390試合に次ぐ、史上2番目の速さ(1402試合目)というとてつもない記録であった。

 

さらには、71試合目で早々に両リーグ100安打一番乗りを果たすと、遂には自身の出場128試合目での200安打達成である。2004年には、ジョージ・シスラーの記録を85年ぶりに更新する、MLB史上最多の「シーズン262安打」を記録したイチローだが、その記録にも迫ろうかというハイペースなのだから、36歳という年齢にして衰えを知らぬところは驚異的ですらある(打率も、ずっと35分を超えている)

 

そもそもMLBの日程の過酷さは、とても日本の比ではない。日本では、基本的に最低週に1日は休養日が設けられ、北海道や九州に移動する場合は2日間試合がない場合もあるが、MLBではデーゲーム終了後にすぐに移動し、翌日も試合というケースも珍しくはない。月間28試合くらいは当たり前で、8月などは2日しか休みがなく29試合という殺人的なスケジュールだ。

 

日本とは違い、移動もチャーター機を使うので待ち時間自体は短いとはいえ、広い国だから東西で数時間の時差があり、南北では気温が20度以上違ったりするのである。 また連戦は日本の場合、長くても9試合くらいが最高だがMLBでは10連戦以上は珍しくないし、日本の場合は雨で30分くらい中断すれば試合が中止になるが、MLBは数時間単位で開始を遅らせたり中断したりで、中止になれば翌日はダブルヘッダーで穴埋め、といった過酷さである。

 

延長にしても日本は12回で打ち切りだが、MLBは原則として無制限である。さらに細かい話をすれば、日本ではデッドボールや怪我の際には試合を中断してコールドスプレーをかけたり、ダッグアウトで治療してからプレーに戻ったりするのが当たり前の光景だが、MLBではすぐにプレーに戻るかダメなら交代するのが原則だ。

 

このような過酷なMLBにおいて、毎年ほとんど休まずにゲームに出続けるだけでも驚異的なことだが、その中で常にハイレベルな結果を残し続けているのだから、これはもう神懸りとしか言いようがない。恐らく、イチローという選手は野球が好きで好きで溜まらなく、野球をするのが楽しくて仕方がないのだろう。ちょっとした怪我で休んでばかりいる近頃の選手とは、野球に取り組む姿勢や愛着がまったく比較にならないと思うし、単なる記録と言うにとどまらず心技体どこから見ても傑出した、巨大な存在といえる。

0 件のコメント:

コメントを投稿