プロ野球の「クライマックスシリーズ(以降「CS」と記す)」のおかしさは、これまでにも散々書いてきた。このヘンテコリンな制度は、MLBのポストシーズンを真似たものなのだろうが、いつも言っているようにあらゆる条件がまったく違うMLBを真似るなど、愚の骨頂である。
そもそもリーグで6つのチームしかないのに、3位になれば無条件でCSに進出できるというところからして、まったくおかしいのだ。今年は、その欠陥制度の弊害がモロに出てしまい、なんと勝率5割にも満たないヘッポコチームが、CSに進出するという醜態が発生した(71勝72敗のヤクルト)
「1年のトータルで負け越したチームが、日本一を決める舞台への出場権を賭けた戦い」に参加してくるというのだから、世界広しといえどこれほどバカゲタ制度があろうか?
2位の中日に「10」ゲームもの差を付けられ、勝率5割にも満たないヤクルトが、第1ステージではまったく同じ条件で、3試合のうち「運良くたった2勝」してしまうだけで、決勝ラウンドに進んでしまうのだ。さらに、決勝ラウンドに進んだ場合は「22ゲーム差」という天文学的な大差をつけた巨人に与えられるアドバンテージが「たったの1」という大バカヤローな制度なのである。
中日とヤクルトとは「10ゲーム」もの差があるのだから、単純計算でも10戦全勝でようやくイーブンであり、また「22ゲーム差」の巨人とヤクルトに至っては「22勝分のアドバンテージ」をつけない限り、この制度は「出来損ない」としか言いようがない。これが3~5ゲーム程度の差であれば、長いシーズンでは「誤差」の範囲と見ることも出来なくはないから、CSの出場資格としては、せめて「首位と5ゲーム差以内」程度の規定は最低限必要であるし、ましてや勝率5割にも満たないチームなどは、まったく論外とすべきなのである。これは大相撲に喩えれば、7勝8敗で負け越した力士が優勝決定戦に出ることと同じで、いかに愚の骨頂であるかがわかろうと言うものである。
しかも短期決戦では、必ずしも実力が反映するとは限らないから怖いのだ。たとえ「22ゲーム差」の実力差があっても、たまたまこの時期の選手のコンディションや勢いなどによって、どう転ぶかわからないのが勝負事である。ましてや今年のように、早々に優勝を決め1ヶ月もの間が空く事で緊張感が欠けてしまうであろう巨人と、低次元とはいえ最後まで3位を争ってきたヤクルトでは、モチベーションがかなり違うはずである。 だからこその6ヶ月、144試合という長丁場のシーズンを通して「極力運などの要素を排除した、真の総合的な実力を競う制度」になっているはずなのに、これでは「何のために半年間もかけて、144試合も戦って来たか」の意味がまったくなくなってしまう。それどころか僅か数試合の偶然の結果で、144試合もの努力の結晶をひっくり返そうという「劣悪な制度」としか言いようがないのである。
無論、プロ野球はエンターテイメントであるからには、ファンを歓ばせる事こそが第一義であるのは間違いない。だからこそ、これまで人気に胡坐をかいていたセリーグも、バカにしていたはずのパリーグを真似て二番煎じの恩恵に肖ろうという、さもしい発想に便乗してきたのだろうし、現実に興行としては成功しているのが、さらにこの問題を厄介にしている。人気凋落が叫ばれて久しい中にあって、苦肉の策として金儲けの余興としてやることにまで敢えて反対はしないが、単なる拝金主義で終わってしまっては見識がなさ過ぎると言うものだ。
結論的には、あくまでペナントレースの延長線上に存在しなければ意味がないし、そうでなければサッカーの天皇杯のようにペナントレースとは別に存在する、トーナメント形式のお祭りにすべきなのである。どうしても今のような、ペナントレースの延長線上という形式を続けるのであれば、先に触れたようにゲーム差を考慮した適切なハンデを設けるなり、セ・パに関係なく「勝率上位4球団+ワイルドカード」にするなり、また少なくとも先に触れたように勝率5割5分以上というような「出場資格」を設定しなければ、世界中の笑いものである(誰もこんなバカに注目してないだろうが・・・