2010/06/26

日本が決勝トーナメントへ(サッカーW杯2010南アフリカ大会)(3)


 W杯の予選リーグが終了した。

 

「世界の格差」が縮まったのを証明するかのように、決勝トーナメント進出が疑われもしなかった強豪国が、予選で軒並み苦戦した。それを象徴するのが前回優勝国イタリアと、準優勝国フランスの予選リーグ敗退だ。それも、単なる敗退ではない。どちらも「死のグループ」と称されるほど厳しいグループだったわけでないにもかかわらず、イタリアは「1敗2分」、フランスに至っては「2敗1分」の上に内紛騒動まで勃発し、あのスタイリッシュな国が世界に恥の上塗りを披露した。

 

前回大会の決勝進出2チームが、ともに予選リーグで敗退」だけでも前代未聞だが、揃いも揃って1勝も出来なかったばかりか、長いW杯観戦歴においてもこんなにも弱く魅力のない両国を見るのは、まったく初めてである。その予選でリーグでは、さらに驚くべきことが起こった。

 

サッカー不毛の地」と言われ、長く「草刈り場」と見下されてきたアジア代表の2チームが、見事決勝トーナメント進出を決めたのだ。これまで何度も繰り返してきたように「例外的な大会」と見るべき2002日韓大会を除けば、予選リーグで1勝するのも奇跡と思われたのが、アジア代表である。それが、(K国の試合は殆ど観ていないが)少なくとも日本に関しては、真っ向勝負で堂々の「2勝1敗」だから、これほど予想外な結果はまたとない。「歴史的快挙」などという、トンデモなくご大層なフレーズを易々と口にする軽薄な風潮を常々苦々しく思ってはいるが、これこそは正真正銘の「歴史的快挙」というに相応しい。

 

振り返れば、カメルーンとの緒戦は相手があまりにも酷い出来だった上、偶然性の強いゴールに恵まれた「棚ボタ」のような勝利だったが、結果が総ての世界においてこの勝利の齎した自信は、とてつもなく大きかった。続くオランダ戦はスコアは「0-1」とは言え、必要以上に相手を怖がり過ぎて点が取れそうな雰囲気もまったくないまま、最も見どころのない内容に終わった。とは言え、元々大敗予想が圧倒的だった相手にしてこの結果は、ピッチレベルでは「互角に近い戦いが出来た」と勘違いを生んだことだろうし、さらに自信を深めたに違いない。その結果が格上と見られた、最後のデンマーク戦の圧勝に繋がった。

 

立ち上がりから、力と技術の差を見せ付けられながら素早く修正すると、その後は終始互角以上の内容を見せ、積極果敢な攻めで3点を捥ぎ取ったのには心底驚いた。 しかもデンマークのPKによる1点は、どう見ても「シミュレーション」にしか見えなかったから、実態は「3-0」に等しい。

 

これまで繰り返してきたし、今後も永久に続くだろうものと思われた「決定力の無さ」という評価を一気に覆し「これが本当に日本代表なのか?」と違うチームを観るような目を瞠る躍動ぶりは、あまり体格の大きくない欧州のチームを観るようで、まったく「自信」というものの恐ろしさを感じさせる。

 

2002年の日韓大会では、日本とK国の「疑惑の進出」により「決勝トーナメントがつまらなくなった」と嘆いたワタクシのようなヒネクレ者でさえ、今回に関しては

 

「日本代表は決勝トーナメントで、果たしてどんなサッカーを見せてくれるのか?」

「トーナメント緒戦に勝って準々決勝進出となれば、今大会の「台風の目」になる!」

 

などと、興味を持たずにはいられないではないか。久しぶりに日本に明るさが戻ってきたことが、何よりの収穫なのだ。

 

4年前の旧作を見ればわかるように、勝敗の行方をズバズバと的中させて最後にはイタリア優勝まで予言してみせはしたが、今回ばかりは予想が難しいくらいに各チームの実力が伯仲しており、どこが勝ち上がってもおかしくない情勢と言える。予選リーグは、苦もなく勝ち上がると思われたイングランドとポルトガルは1勝どまり、さらにスペイン、ドイツは敗戦をも喫した。逆に5カ国総てが決勝トーナメントに進んだ南米勢は、チリがスペインに喫した1敗のみの合計「10勝1敗4分」で、チリを除く4カ国はいずれも余裕のトップ通過である。一方、地元開催ながらアジアに代わって「草刈り場」と化したアフリカ勢は、3連敗のカメルーンなど出場6チーム全体で「3勝10敗5分」と揮わず、南アは「開催国予選敗退」の不名誉を記録した。

 

ここまでリーグ戦の篩にかけられて生き残った各チームだから、さほどの実力差はないはずで、これからは負ければ終わりの一発勝負だけに、何が起こるかはまったくわからない。いかに実力で勝っていようとも怪我や予期せぬ退場者が出たり、決着が付かない場合はPK戦というケースも増えてくるだろう事を考えれば、これまで以上に「運」といった複雑な要素も大きく絡んでくる。

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