2014/05/03

出雲

天平5年(733年)に完成した『出雲国風土記』の冒頭に

 

「所以號出雲者。八束水臣津野命。詔八雲立語之。故云八雲立出雲。」

いづもとなづくるゆえは、やつかみずおみつぬのみことの、やくもたつのみことをのりたまひき、かれやくもたついづもといふ。

出雲と名付ける所以【理由】は、八束水臣津野命〔ヤツカミズオミツヌのミコト〕が、八雲立つのみこと〔御語〕を詔〔のり〕たまいき。故に『八雲立つ出雲』という。

 

島根半島を『国引き』して本土に結びつけたと言われている八束水臣津野命が「八雲立つ」と申されて以来「八雲立つ出雲」と呼ぶようになったそうだ。

 

「出雲」の名前の語源については、82代出雲国造〔こくそう〕の千家尊統氏の著書『出雲大社』の中に面白い説が紹介されている。

 

・出雲とは「美しい藻」

これは柳田國男の弟、松岡静雄氏の説で「イツ」は美称、「」は海中の藻です。『出雲国風土記』には、海松〔ミル〕や黒珊瑚などの材料となる藻を産する、とあるそうです。

 

・「神聖な藻」という意味

これは「イヅ」は「厳、いつき〔斎〕・神聖な」な藻ということです。

 

・「五面イツオモ:五つの面から来た説

面〔オモ〕とは、市とか郡とかの一区域の土地。五面〔イツオモ〕とは、八束水臣津野命が『国引き』された支豆支〔きづき〕・狭田〔さだ〕・闇見〔くらみ〕・三穂〔みほ〕の四地域です。それに宍道湖・中海に南面する平野部を加えると「五面〔いつも〕」となる。

支豆支〔きづき〕は「杵築」の濱の杵築、狭田〔さだ〕は佐太神社。三穂〔みほ〕は美保の崎の美保。出雲とは、この五つの地域から成るという意味。

 

・アイヌ語の語源説

アイヌ語で「岬」は「エツetu」、「モイmoi」は「静かなところor港湾」から、エツモイからエツモ、さらにイヅモに変化したという説。金田一京助説では

「岬はアイヌ語でエンルムがイヅモになったという方が可能性がある」

と説いているそうです。

 

・「イヅモ」は「夕つ方〔も〕」の説

これは白鳥庫吉氏の説で、大和を中心にして見ると東国はアヅマというのですが「アヅマ」とは「朝つ方〔も〕・アサツモ」のこと。これに対して「イツモ」というは「夕つ方〔も〕」で「西の国」という意味。

 

・本居宣長の説

イデクモ〔出雲〕」の「デク」が縮まって「イヅモ」なったという説。または「イデクモ」の「ク」が脱落したという説があります。

 

『説文解字』11下には『山川の气なり』とあり、『出雲国風土記』にも「國之大体首震::尾坤:::。東南山西北属海」国のおおかた、ひむがし〔東〕をはじめとし、にしみなみ〔西南〕をおはりとす。東南は山、西北は海に属す」とあり、東南の山々、その間を流れる斐伊川などの河川、西北の日本海からの『山川の气』から、モクモクと雲が湧き立つ國・出雲という解釈になる。

 

「出雲」という国名の由来は、雲が湧き上がる様子を表した語「稜威母(イズモ)」という説、日本国母神「イザナミ」の尊厳への敬意を表す言葉からきた語、あるいは稜威藻という竜神信仰の藻草の神威凛然たることを示した語を、その源流とするという説がある。ただし歴史的仮名遣では「いづも」であり「出鉄(いづもの)」から来たという説もある。

 

出典http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/

島根県の東部に位置し、北は日本海に面する出雲半島、中央部に出雲平野、宍道湖、松江平野、中海を含む地峡部、南部に中国山地の山間部があり、東は伯耆国、南は備後国、西は石見国に接します。

 

出雲国は『日本書紀』推古紀25(617)年の記事が初見です。『出雲国風土記』には、意宇(いう)郡、嶋根(しまね)郡、秋鹿(あいか)郡、楯縫(たてぬい)郡、出雲(いずも)郡、神門(かんど)郡、飯石(いい し)郡、仁多(にた)郡、大原(おおはら)郡の9郡があり、後に意宇郡から能義(のぎ)郡が分かれて10郡となりました、とある。『和名抄』は「以豆毛(いずも)」と訓じています。

 

この「いずも」は

(1) 八束水臣津野命が「八雲立つ」といったことによる(『出雲国風土記』)

(2) 厳雲」から(吉田東伍『大日本地名辞書』)

(3) 出で雲」から

(4) 厳藻(いつも)」(美しい藻が生える土地)から

(5) 国引き神話にちなむ「五面」から

(6) 「イ(接頭語)・ツモ(ツマの転。端)」の意

(7) 「厳面」(崖のある地)の意

(8) アイヌ語「エツモイ(岬、入江)」から

 

などの諸説があります。

 

この「いずも」は、マオリ語の「イツ・マウ」、ITU-MAU(itu=side; mau=fixed,continuing,established,caught,captured,retained)、「国土を引いてきて固定した 場所のそば(の地域)」(「マウ」のAU音がO音に変化して「モ」となった)、または「イ・ツモウ」、I-TUMOU(i=beside,past tense;tumou,tumau=fixed,constant,permanent,slave)、「国土を引いてきて固定した場所のそば(の地域)」の転訛と解します。

 

なお「八雲立つ(やくもたつ)」は、マオリ語の「イア・クモウ・タツ」、IA-KUMOU-TATU(ia=indeed,current;kumou,komou=cover a fire with ashes or earth to keep it smouldering;tatu=reach the bottom,be at ease,be content)、「実に埋み火に灰を盛ったような(なだらかな)山がゆったりと休んでいる(国)」の転訛と解します。

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