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ヨーガの八支則(アシュタンガ・ヨーガ)
それでは、これら総合的なラージャヨーガの代表的な教典、パタンジャリの「ヨーガ・スートラ」に添ってヨーガの構造や行法を見ていきましょう。
この教典は、パタンジャリという聖人によって紀元前から綿々と受け継がれたヨーガを、紀元後4~6世紀頃に記述され、完成されたといわれている教典です。
八段階の積み重ねによって構成されているので、アシュタンガ(8つの部分=八支則の)ヨーガと云われています。
この総合的なヨーガの行法は、その目的に到達するために、日常の生活においての行動の規範である禁戒や勧戒を山の裾野にして、段階的に体を整え、呼吸を整えながら、順次に山の高みに上っていく道のようです。そして、この実践の過程において、先回お話した五つの鞘からなる総合的な私達の存在の各層に働きかけ、人間が本来備えている肉体と精神とそして霊性の資質や能力が高められ、バランスあるものとなり、心身の健康度が飛躍的に高まり,その人自身の生き方(自己実現)に多大な実りをもたらすものとなります。
第一段階 「禁戒(きんかい)」= ヤマ
心の平安を得るためには、他者とのエネルギーの交流の中に私達の存在が成立しているという事実にめざめ、自ら発する他者への行為を良好にする事が大切です。これは「出したエネルギーの質が、何らかの形で、同じ質のものが当人に帰ってくる」と云うカルマの法則を基盤にしています。
禁戒の後に勧戒という順序は、命に良い事をなす前に、まず命を害するものをとり除くという事が先決で、医学でいえば薬を飲む前に、毒を吐き出させるという事になります。これを「金剛律(ダイヤモンドの戒律)」の後に「黄金律(黄金の戒律)」という順序となります。
ヨーガ・スートラでは、次の最も基本的な五つの生活法則を示しています。
1)
非暴力(アヒンサ)…仏教では不殺生戒
生きとし生けるものに無用な暴力、殺生をくわえない。すると、害されなくなる。
2)
正直(サティア)…仏教では不妄語戒
言葉と行動を一致させ誠実なものとする。すると、信頼を得る。
3)
不盗(アステーヤ)…仏教では不盗戒
他人の物、時間、喜びなどを不当に盗らない。すると、豊かになる。
4)
梵行(ブラフマチャリヤ)…仏教では不邪淫戒
性的エネルギーを適切にコントロールする。すると、強健になる。
5)
非所有(アパリグラハ)…仏教では不貪戒(または不飲酒戒)
所有欲を克服し、ものに執着しない。すると、生の目的を悟る。
第二段階 「勧戒(かんかい)」= ニヤマ
この地上において、本来の自己を実現するためには、日々の暮らしの中での良い生活習慣の積み重ねが最も大切です。この勧戒は、自分自身の生活態度を改善し、心身ともに霊性を高める五つの生活法則「黄金律」が説かれています。
1)
清浄(シャウチャ)…ヨーガにおいての清浄とは、外面と内面双方における清潔さが求められています。肉体的な浄化法と心的な浄化法(慈悲喜捨)が、それにあたります。
2)
知足(サントーシャ)…与えられた環境・現状をまず受け入れ、感謝し肯定の姿勢から物事に対処していく態度です。
3)
精進(タパス)… 日常において、自らに課した「行」や仕事の積み重ねによって心身を強いものにして目標の実現力を高めます。
4)
読誦(スヴァーディヤーヤ)…常に聖典を読んだり、真言を唱え、「生命の智慧」の理解と学習を怠らない事です。
5)
自在神祈念(イーシュヴァラ・プラニダーナ)…各自を守っているハイヤーセルフともいうべき守護神に、人生における気高い目的の達成を常に祈り願う事です。
第三段階 「体位法(たいいほう)」= アーサナ
いよいよヨーガの特徴である、いわゆるポーズの段階になります。アーサナという名詞は、「座る」という動詞のアースから転化したもので、元来、「瞑想」を主な行法とするヨーガは、座ることが基本でした。およそアーサナ(座法=体位法)は大別して
①
瞑想の為のもの
②
リラックスの為のもの
③
身体を造る為のものとに分けられます。
一説ではシヴァ神は、8400万のアーサナを説いたと云われていますが、その中でも84のアーサナが優れていると云い、他のヨーガ教典では32種類のアーサナを説いています。現在でも、立位、座位、寝位のヴァリエーション(変形)を入れると、多くの種類になりますが、いずれにしても、ゆっくりとした呼吸と共に、身体のその一定の型を通して動く瞑想、体を使った祈りと云った状態をめざし、身体的な健康を実現します。この領域はアンナマヤ・コーシャ(食物鞘)の調整になります。
アーサナを日常生活の中で規則的に、一定の時間行じていくと、身体的には、血行を促し、筋肉、骨格、内臓器官、神経、ホルモン体などに良い影響を与え、ひいては、心の状態を安定させ、各人の性格や、生き方にも多大な影響を与えることとなります。
ヨーガスートラにおいては、このアーサナを以下のように定義しています。
ü 「座法(アーサナ)は安定していて、快適なものでなくてはならない」(Ⅱ-4)
ü 「緊張をゆるめ、心を無辺なものへ合一させなくてはならない。」(Ⅱ-47)
ü 「そのとき行者はもはや、寒熱、苦楽、毀誉、褒貶等の対立状況に害されない。
(Ⅱ-48)
※実際のアーサナの代表的な形と種類は後の「身心八統道」の項で説明いたしま す。
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