2010/07/04

これがサッカー、これがW杯だ!(サッカーW杯2010南アフリカ大会・準々決勝)(5)


予選グループで組み合わせに恵まれたり、運良く勝ち上がったチームがさらに淘汰され、8強によるスピーディかつ高度な技術の応酬は益々、一瞬たりとも目が離せない。

 

その中で「これが世界トップレベルのサッカーだ!」というような『オランダvsブラジル』

優勝候補最右翼と目され、またアルゼンチンとともに最も充実していると思われたブラジルが、ベスト8で呆気なく姿を消した。前半は防戦一方だったオランダは、後半に入るとあの予選の日本戦とは別のチームかと目を疑うような怒涛の攻めでブラジルを圧倒し、鮮やかな逆転勝利を飾った。

 

準々決勝4試合の中で、最も見応えがあったのは『ウルグアイvsガーナ』だ。40年ぶりの準決勝進出を狙うウルグアイと「アフリカ勢の悲願」である4強を狙うガーナの対戦は「1-1」で延長に縺れ込んだ。どちらも点が入らず、PK決着かという終了間際にガーナが決定的なシュートを放つが、なんとウルグアイの選手は「両手」を使ってこれを阻止するという、一発退場の反則プレー。しかし、この執念が乗り移ったか絶体絶命のPKをガーナが外し、勝負はPK決着へと縺れ込む。

 

ゴールに入るはずのボールを手で止めるなど、サッカーにあるまじき実に酷いインチキもいいところだが、良く言えばこうした咄嗟の機転と言うかハタマタ勝利への執念と言うべきか、こうしたプレーは日本人は絶対にやらないだろうし、またバカ正直な日本人には出来そうにもない。これが

「勝つためにW杯に来ているのだから、手段は選ばず」

の狡猾な世界トップの国々と、負けてもクリーンを潔しとする日本との違いであり、またこれが「8強」や「4強」とそれ以前のチームとを隔てる大きな壁なのだと痛感させるような、まことに象徴的なシーンであった。

 

PK戦はウルグアイ3人、ガーナ2人までは順当に決めたが、ガーナ3人目が失敗を皮切りに続くウルグアイ、ガーナと立て続けに3人続けて失敗という大荒れの中、ウルグアイの5人目の選手が決めてピリオドとなった。

 

大健闘したガーナは「アフリカ勢初の4強」という快挙を殆ど掌中にしながら、なんとも悔やみきれない幕切れである。まったくPKによる決着ほど、非情なものはない。決勝はともかくとして、次もある過酷な日程の中でサドンデスをやれとは言わないが、もう少しいい方法はないのだろうか。PK戦は時に切なくて観ていられなくなることもあるくらいだが、皮肉なことにあの刻一刻と移り変わっていくPK決着くらい、良くも悪くもあれほどドラマに溢れたものも、またとない。純粋サッカーファンとしては、日本のPK敗戦よりも120分の闘いで勝っていたはずのガーナが、なんとも気の毒で仕方がないのだが。

 

『オランダvsブラジル』と並ぶ屈指の好カードと期待された『アルゼンチンvsドイツ』は、まったく予想外の一方的な展開となってしまった。アルゼンチン有利の予想が多かったし、実際に後半途中までは1点ビハインドながら、一方的に攻めまくるアルゼンチンのペースだった。ところが恐ろしきは、ドイツのカウンター攻撃の壮絶さだ。イングランド戦でも再三見られたが、この日もアルゼンチンの多彩な攻めに防戦に回りながら、少ないチャンスであっという間にゴールまでボールを運ぶ速攻と、それを確実にモノにする決定力には目を瞠るしかない。

 

圧巻は後半の怒涛の攻めで、なんとイングランド戦に続く4得点を叩き出した。これまで伝統的に堅い守りで「つまらないサッカー」と言われてきたドイツだが、この大会では試合を重ねるごとに急激な進化を遂げているような脅威的な破壊力で、この試合を観ていると「8強」の顔ぶれの中にあってすら、他のチームとはレベルの違いさえ感じるほどだ。

 

準々決勝のトーナメント表を見て、単純に「ブラジルvsアルゼンチン」の決勝を予想したが、どちらもヨーロッパのチームに敗れた。結局、この大会無得点に終わったメッシは、ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドとともにまったくの評判倒れに終わり、アルゼンチンは魅力的なタレントを揃えながら、まさかの記録的な大敗に終わってしまった(あんな程度の選手をマラドーナと比較などは、まったく畏れ多い)

 

最後の『パラグアイvsスペイン』は、ともに決定的なPKのチャンスを相手GKに阻まれ「0-0」のまま息詰まる攻防が続く。オランダもそうだが、この日のパラグアイも予選リーグで日本相手に苦戦していたのとは同じチームとは思えない戦いぶりで、こうした一流国は最初から決勝トーナメントにピークを合わせて来ているのが、明らかである(だからこそ、日本がそこそこ接戦を演じられたとも言える)。優勝候補と言われながら、この日も苦しんだスペインが終了間際に1点を捥ぎ取ると、なんとか逃げ切って「60年ぶりの4強」に駒を進めた。

 

この結果、準決勝は以下の通りとなった。

 

ウルグアイvsオランダ

ドイツvsスペイン

 

1試合目は地力ではオランダが勝るだろうが、勢いと狡賢さを持つウルグアイも侮れない。2試合目は、決勝と言ってもおかしくないような注目の対戦だが、トーナメントに入って2試合で8得点というドイツのあの恐るべき破壊力を目の当たりにしては、スペインといえど迫力不足の感は否めず、決定力の差がかなりありそうに見える。今のドイツを見る限り、どこが来ても負けそうなイメージが湧いてこないとはいえ、毎回同じ調子をキープできるという保証はなく、また出場停止などもあるだけに何が起こるかわからないのが勝負の世界だ。勝敗予想は難しいが、いずれにしても頂点を目指した世界最高峰の戦いは残すところあと僅かとなった。

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