2011/07/13

失注?(プロジェクトU)(3)

ところがである。

 

1日置いた金曜日、それも夕方になってB社から連絡が来て

 

「まことに申し訳ございません・・・先日お伝えしていたUプロジェクトの件で、つい今しがた上位から連絡があり、来週から予定していたプロジェクトの開始が延期になりそうだとのことで・・・」

 

という青天の霹靂だ。

 

「延期?

それは、どの程度の延期なのか・・・?」

 

「はあ、それがどうも未定ということでして・・・」

 

「・・・」

 

「いずれにしても、1週間ずれるとか、そんなレベルではなさそうです・・・」

 

「ということは・・・延期ではなく、事実上中止ということなのかな?」

 

「はあ、あくまで延期としか聞いておらず、それ以上の詳細まではこちらではわかりかねますが・・・」

 

「今頃、そんなこと言われても困りますな。こっちはもう決定ということだから、他に進んでいた並行も全部ストップしてしまったし。これは一体、どうしてくれるのか?」

 

「まことに申し訳ございません・・・」

 

色々言いたいことはあったが、所詮は「四次請け」に過ぎないこの会社を相手に何を言ったところで事態が変わることはあり得ないから、悔しいがこれは泣き寝入りをするしかなかった。

 

要するに、これは受注を見込んでいたC社が失注したとしか思えなかった。実際に受注しているのであれば、入札時にプロジェクト期間が何時から何時までという条件を前提としているはずであり、その条件が数日の内に変わるはずがないのである。

 

昨日か今日に失注が判明したのだろうという見当は、恐らく間違っていないと思われたものの、相手は大手のC社だけに一技術者風情がクレームを言ったところで相手にされるはずはなかった。

 

またタイミングの悪いことに、連絡が来たのが金曜の夕方だった。数日前まで並行で動いていながらストップをかけた幾つかの案件を復活させるべく、慌てて連絡してみたものの、どこも連絡が取れなかったり、連絡が取れたところも当然ながら

 

「ああ、あれはもう他の技術者で決まってしまいましたね・・・」

 

「あの件は、充足しました」

 

という素っ気ない回答ばかりだ。なかには

 

「ストップということだったので、その後どうなっているかはモニタリングしてませんでしたが・・・・では、週明けにでも確認してみましょう」

 

と、一旦は断られた立場の先方からすれば「何をいまさら・・・」というのが口調からもありありで、最早すっかり熱意が冷めてしまっていたのも無理はない。

 

(こんなことでは、こっちも信用なくすわ・・・)

 

と、返す返すも慌ててストップをかけてしまったことが悔やまれるのだった。余談ながら、これを教訓にその後は契約書をもらうまでは並行を続ける方針を取っている。

 

翌週の月曜日になると、回答保留だった数社からも

 

「例の件は、もう充足したようです・・・」

 

とか、まだ連絡が取れていないところも

 

「仮にまだ案件が生きていたとしても、いったん断ってるからね~。再エントリーは難しいでしょうな・・・」

 

ということで、一縷の望みに期待したものの結果は全滅。返す返すも腹立たしいが、できることと言えば精々何人かの親しい営業に一連の顛末をぶちまけ、C社の悪口雑言を並べ立てるのが関の山だ。

 

もっとも、ある営業によれば

 

「ああ、受注見込みで大量募集をかけるのは、C社のような大手の常套手段ですよ」

 

と、なにをいまさらと言わんばかりだった。

 

「まあ、そういうケースは現行で入っていたりして、大抵はすんなり受注できる場合が多いですが、人材だけ先に確保しながら失注するケースもありますね。万一の時は、他にもたくさん似たような案件があって、どこも人手不足だからスライドできます、とか言うんですがね。実際は大手とは言ってもそう上手いタイミングで常に求人があるわけはないから、失注しちゃったら確保した人材は全部キャンセルですね」

 

と、まさに予想していた通りだ。

 

「実にケシカラン話じゃないか!

そんなことが許されていいのか・・・」

 

「許されるも何も、相手は大手ですからね~。我々下請け側からすれば、せめて待機保証くらいはして欲しいところですが、まさかC社に請求するわけにも行かないので、泣き寝入りですわ」

 

「なぜ?

請求すればいいのに?」

 

「だって、そんなこと請求しようものなら、次からうちには声かけてもらえなくなるじゃないですか。向こうは、どこに声をかけるかは選び放題ですからね。まあ、気持ちはわかるし同情はしますが、正直C社に限らず大手にそのような倫理観を求めても、八百屋に魚ですわ・・・」

 

と、そこはユーザーと直接取引のできる大手の元請けに対し、圧倒的に弱い立場の下請けの悲哀が込められていた。

 

つまるところ、腹立たしいが諦めてまた一から案件探しをやり直すしかない。なんとか気持ちをリセットして活動を再開したタイミングで、電話がかかって来た。

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