2013/03/08

Dプロジェクトとは?(プロジェクトD)(2)

Dプロジェクトとは?

このプロジェクトのユーザーは、携帯最大手の某社だ。

参画時期は、ちょうどスマートフォンのニーズが爆発的に増え始めたころで、それへの対応がこのプロジェクトである。

 

このキャリアでは、いわゆる「ガラケー」と言われるスマホが登場する前の時代から、

複数の大きなプラットフォームを所有し、それぞれ約800万のユーザーが収容可能だったが、これまでのIP接続サービスや第3世代移動通信システム(3G)に加え、新たにスマートフォン、Long Term EvolutionLTE、ロング・ターム・エボリューション)といった新サービスの提供に伴い、爆発的に需要が増加した。これにより、これまでのプラットフォームでは、とても急増したユーザーを捌けなくなりそうだということから、現状使っているプラットフォームの増強を含め、新技術を搭載したプラットフォームを構築する必要に迫られていた。

 

計画では、現状ではひとつのプラットフォーム(以降は「基盤」と記載)あたり約800万収容できるところを、より最新の高機能を備えた新しい機器に入れ替えることにより、ひとつの基盤で現行の倍となる1600万ユーザーを収容する。仮に現時点で3つの基盤があるとした場合、「800万×4」で3200万ユーザーまで収容可能だったものが、倍になれば「6400万」である(この数字は必ずしも実態を表したものではなく、あくまでフィクションである)

 

最大手のキャリアとしては、現行の「3200万」でも余裕があるというわけではなく、ましてや今後のスマホ普及による過去に例のない爆発的なニーズを視野に入れれば、「6400万」でもまだ心もとないのは素人目にも明らかで、当然ながらさらに先を見据えた計画を練っているところだった。

 

増強の計画として、まず既存の4つの基盤(A号~D号)に続く、5つ目の基盤となる「E号」の構築から始まる。とはいえ、この新基盤は、既存の基盤の倍のユーザーを収容できるものでなければならないから、現行踏襲ではなく様々な新機能を駆使したものでなければならない。まず、この1600万ユーザーが収容できる「E号」が構築出来次第、これを参考に既存の4つの基盤を「E号」と同じ最新技術満載の基盤に作り替えていく、というのが青写真だった。この時点の計画では、既存の4基盤の改修と並行し、さらに新機軸満載の「F号」を開発するところまでの青写真が描かれており、その完成は数年後だがここまで行けば「1億ユーザー」の収容まで視野に入るという、まことに気宇壮大というべきだが、しかしながら最大手キャリアの責務としては必須の計画である。


Dプロジェクトの規模

ここまでの話からだけでも大方の予測はつくだろうが、当然ながらプロジェクトの規模としては「超」の字が付きそうな大規模レベルである。

 

通常、プロジェクトの規模感を表す場合、一般的に「関係者の人数」や「予算総額」などで表現される。

 

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)による定義によれば、プロジェクト関係者の人数に対するプロジェクトの規模は、以下のように定義されている。

 

ü  小規模:30 名未満のプロジェクト

ü  中規模:30 名以上〜100 名未満のプロジェクト

ü  大規模:100 名以上のプロジェクト

ü   

このプロジェクトを当てはめてみると、まず「プロジェクト関係者の人数」は何人いるのか、まったくわからない。例えば、ワタクシが所属することになった「E号のLBチーム」というだけでも10名以上いて、その上に元請けである大手電機メーカーN社のLBチームがあり、ここだけでも実に50名ほどの所帯を構えていた。ただし、こちらの方はプロジェクト関係と言うよりは維持管理の方にカウントすべきだろうが、それにしても「LBチームだけで50名」というのは、なかなかお目にかかれない規模感であることに違いはない。

 

ちなみに「LB」というのはロードバランサ(負荷分散装置)とことで、通常のプロジェクトであれば大抵はNWチームの範疇に入るものだが、わざわざ「LBチーム」という単独のチームを構えていること自体、あまりお目にかかれない体制と言えた。もちろん、このプロジェクトが「スマホ」という、一般の不特定多数にサービスを提供している性格上、たとえ瞬断であっても通信断が発生することが許されない事情から、負荷分散の重要性が通常プロジェクトとは比較にならないくらいに高い事情を抱えてのことだが。

 

とはいえ、いわばNWとしては「傍流組」のLBチームだけでもこの大所帯なのだから、いわゆる「主流どころ」とされるネットワークやサーバ、アプリチームなどは、それぞれの機能やレイヤ単位でチームが細分化され、各チームに30人くらいはいそうだっただけに、ここまでですでに「大規模:100 名以上のプロジェクト」の定義はあっさりクリアしていた。

 

参画後、すぐに確認した「プロジェクト体制図」は、関係者の数が多過ぎるため、各チームのリーダーとサブリーダーのみ記載したものだったが、それでもチーム数が数十あることから、このマネージメントのメンバーの体制図だけでも100人近い名前が載っていた(ちなみに、ワタクシはLBチームのサブリーダーとなっていた)

 

関係者の人数とともに、プロジェクトの規模を表す要素として「予算」がある。こちらの方は、先のIPAガイドラインに示した人数のような規模感を図る指標値はなさそうだが、これまで数多くのプロジェクトに参画してきたワタクシの経験値から言えば、以下のような感じになるのではないか。

 

ü  小規模:百万以下

ü  中規模:千万以下

ü  大規模:億~数十億

ü  超大規模:百億以上

 

もっとも、ワタクシの場合は何故か過去にいくつもの「超大規模プロジェクト」に携わってきた。予算総額など書くわけにはいかないが、例をあげれば公的なものでは「某国営物流業の民営化」、「ハローワークのポータル移行」、「東証システム移行」、民間でも「世界のT社のポータル提供」など、いずれも数百億よりさらにひとケタ、あるいはそれ以上という「ウルトラ級」のプロジェクト言えたが、このDプロジェクトこそは人数、予算規模ともに、これらのビッグプロジェクトにもまったく引けを取らないレベルと言えた。

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