新しい現場は、携帯最大手キャリアのDプロジェクトだ。前の現場に入っている9月の時点から、熱心に誘われていたプロジェクトである。
非常に忙しい現場で人手が足らないということで、話を聞く限りではNW系のエンジニアが必要だということだったが、こちらとしては今更実務を中心にやるつもりはないから、「マネージメント希望だから」と辞退した。
最初の面接相手F氏の話では
「元請けからは幾つかのチームが入っているが、どこも人手が足らないから、こちらでどのチームでとか指定はしない。好きなところを選んでいただけるということだった」
ということだったが、どっちにしてもLB(ロードバランサ)かNW(ネットワーク)という技術系のチームになることに変わりはない。
当初は「来月から来ていただきたい」ということだったが、こちらとしては辞退しているから、既にそのことは念頭になかった。
それとは関係なく、どうやったら早く抜けられるかに腐心していたSプロジェクトの現場からしつこく延長要請が来たため、仕方なく10月の1か月だけは延長することが決まっていた。
すっかり諦めたと思って忘れていた、あのDプロジェクトの話が復活してきたのは、3か月延長をしつこく要請してくる元請けを振り払い、いよいよ次に向けた活動に本腰を入れ始めた時だった。
悪いことに、この話を持ってきたのが以前から親しいT社で、このT社とは過去のプロジェクトでも何度も契約をしてよく知った間であったし、当然ながらT社長とその右腕のような存在の営業K氏ともかなり親しかった。
そのT社長からは、連日のようにラブコールの電話が入る。
「次は、まだ決まってないんでしょう?
こっちの方は元請けの部長が、是非とも来ていただきたいといってるんだから、にゃべさんさえその気になれば、もう決まったようなもんですよ。単価も、他よりは絶対にいいと思うけどなぁ」
と、熱心だった。
「しかし、この前の話では実務をバリバリとやるエンジニアが欲しいという話だったから、断ったからねー」
「いや、それも今度はにゃべさんの希望を聞いて、PMOで是非と言ってきてるから。今度は実作業ではなく、あくまでマネージメントがメインですよ」
ということだった。
とはいえ、他の案件も完全にマネージメントに特化したものはなく、技術的な要素を求められている点では、あまり変わりはない。それなら、すでに面接で希望を伝えている上、なおかつ「好きなポジションを選んでいただく」とまで言っているからには、これから面接をする未知の相手よりは認識齟齬が少ないかもと思い直し
「どうも、あまりにも前回の面接時の話とはかけ離れていて、俄かには信じ難いところもあるので、もう一度話を聞いて認識相違がないか双方で確認する、ということでどうでしょう?」
「ああ、それがいいかもですね。では、早速調整してみますよ」
と、余程儲けのいい話なのか二つ返事でOKすると、T社長は電光石火の早業で二度目の面接設定をしてきた。
こうして、元請けC社のN部長と初めて顔を合わせたのは、土曜の品川駅構内にあるCafeだった。
「話は聞いていると思いますが、うちからはLBやNWなど、幾つかのチームで参画していますが、LBとNWではどちらが良いですか?」
と聞かれた。
「Fさんを通じてどっちも設計や構築のような実作業なら、希望ではないと伝えたとおりですが・・・」
PMOというのとは少し違うが、LBチームの場合はサブリーダーのポジションとなるため、マネージメントが主になるということだったので、ではそちらでと言うと
「どうしても忙しい時は、実作業も手伝ったもらうかもしれません」
というので
「実作業は、あまりやりたくない・・・」
というと
「じゃあ、実作業は私がやりますので、PMOに専念してもらいますよ」
と、その場で話が決まった。
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