住居の最寄り駅は、そこそこ繁栄している町にあった。
こうした町の常がそうであるように、駅前は「xx銀座」という名の商店街になっていた。
駅を降りて、客待ちのタクシーが屯するロータリーを通り過ぎると、すぐ目の前が「xx銀座商店街」である。
その商店街の(駅から歩いて)一番入り口のところに古臭いタバコ屋があったのが、駅前再開発の煽りで立ち退きの憂き目に遭ったのか、いつの間にか閉店していたのは少し前のことで、その跡地にたこ焼きチェーンの「京たこ」が出来るらしく、店は工事中ながらも「京たこ」の赤い看板が出ていた。
「京たこ」と言えば、毎日通っていた名古屋でしばしば見かけていて、馴染みもあっただけに
(ほー、あのタバコ屋の跡に「京たこ」が出来るのか・・・)
と思っていると、数日後には店がオープンしていた。
その日も、やはりこの数日と同様にあのストーカー「タコ坊」の姿がなく、そしてまたかつて「臆面もなく急所を圧しつけてきた」気色の悪いクソオヤジの姿もどこかに消えたこともあって、軽い足取りで駅を出ると「京たこ」の赤い看板が目に入った。
(試しに買っていくか・・・)
幸い、他の客が居ないから待つこともないだろうと店の前で足を止めると、申し訳のように小さく開いた窓から、あのたこ焼き独特の旨そうな匂いが漂ってきた。
窓の向こうでは、中年の店員が不景気そうなしかめっ面をして、たこ焼きを焼いているシルエットが、なんとなく見えている。
「一人前・・・」
というつもりで、店の前に立った途端
(えっ~~~~~~~、嘘だろ~?)
いきなり後頭部をガツーンと殴られたような衝撃で店の前を離れたが、勇を鼓して再度カウンターの奥に冷静に目を凝らして見ると・・・あの世の不幸を一身に背負ったような不景気な表情をした「タコ坊」が、ハゲ頭に捻り鉢巻をして、一心にたこ焼きを焼いていた! (/||| ̄▽)/ゲッ!!!
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