伝統的な食事の副食には、基本的な食事構成である飯、汁、おかず、漬物のうち飯以外のすべてを含んでいる。汁は、その実に季節ごとに様々な材料を組み合わせることが出来、儀礼食にも日常食にも各種の汁が作られ、地域により特徴ある汁も見られる。味付けには、みそ味および塩・しょうゆ味と大きく2種に分けられるが、うまみをいかに工夫するかがおいしさの鍵となる。
日本食の汁物、煮物などのうまみを引き出す出汁の材料には、鰹節、昆布、煮干し、しいたけなどが一般的であるが、地域により干しトビウオ等を用いるところもある。
さらに、これらを混合することで、うまみの相乗効果を得ることもできる。また、鯛や蛤のうしお汁に代表されるように、だしを取らず汁の実にする材料からのうまみを利用する場合もある。また、菜(おかず)となるものは、生のまま、煮る、焼く、蒸す、茹でるなどの調理法を組み合わせ、季節の野菜、豆、いも、魚介類を調理したもので、組み合わせによりバラエティーに富んだものとなる。
中でも煮物は、日本で最も多く作られてきた。鍋に材料とだし、または水を加えて煮て味付けすれば、殆どのものをおかずとすることが出来る上、火の管理などもそれほど技術を要せず、しかも一度に大量に作ることも出来る。とくに農村で野菜・いも類を栽培している場合では、たとえば筍の季節には、一度にたくさんの筍を掘ることになり、大鍋で大量に煮て、何日か食べ続けることも多い。そうすることで調理の時間の手間も省け、煮る調理をしている間は、時々火加減を調整するだけで、他の調理にかかることが出来る。
日常の煮物は、季節の野菜にうまみを加えるために、だしを兼ねて鶏肉、魚介類などを加えたものも多い。さらに、焼き物は、魚の塩焼きなど直火で焼く調理が多く、天火焼きやソテーのように油を用いたものは、伝統的な焼き物には少ない。また、蒸す、茹でる調理は、いずれも水を必要とする調理である。しかも、煮物とは異なり、調理後はその水を廃棄することが多く、水の少ない砂漠地帯などでは発達し得ない調理法ともいえる。
日本は地域にもよるが、比較的水に恵まれたところが多く、古くからこれらの調理法が使われてきた。また、野菜類を茹でて後、水で洗う調理法は、海外では一般的な調理法ではない。例えば、ほうれん草の下処理を各国の料理書からみてみると、殆どの国では茹でた後、水気を絞ることはあっても水で洗う方法がみられず、日本やK国に特徴的な方法といえる。刺身のように生の魚を食べる習慣も、良質な水の存在が可能にした調理であるといえよう。また、このように良質の水の存在は、豆腐、酒などの加工食品を独自のものに発展させることにもなった。
さらに茹でた材料、下煮した材料をすりごまで和える、酢で味付けするなどの和え物・酢の物は、季節ごとに材料も変化に富み、あえ衣に、ごまのほか、からし・みそ・砂糖、豆腐を用いた酢の物、白和えあえなど、実に多様な料理を生み出している。下記に、日本で伝統的に行われてきた、主な調理法の特徴を示す。
生もの
刺身など自然の香味、旨みを味わう。野菜類の生は漬物では食べるが、サラダのような野菜の生食は近代以降で、加熱調理が多い。しかし大根、山芋など、生のまま摺り下ろして食すものもある。
汁物
汁の旨みにより食欲を増す。鰹節、みそ汁とすまし汁がある。
煮物
食品に煮汁を加えて加熱し、醤油、砂糖、酒、味噌などで調味する。
焼き物
魚を直火で焼くなどが多く、油で焼く、天火で焼くなどの焼く調理は近代以降に普及する。
蒸し物
茶碗蒸しなど蒸し器に水を入れ水蒸気で加熱、型崩れしにくい。
茹で物
熱湯中で加熱することで、食品の軟化、加熱だけでなく、野菜などのあく抜きに適す。
酢の物
煮る茹でるなど下処理した材料をすりごま、すり豆腐、すり山椒などを衣にしてあえたもので、醤油、みそ、酢、砂糖、みりんなどで調味する。
揚げ物
油を使う調理は伝統的調理には少ないが、てんぷらなどや精進料理などで旨みの少ない野菜類に旨みを加えるために、揚げて煮る等の料理が発達した。
炒め物
油で食品を炒める方法。伝統的な調理には殆ど見られず近代以降、特に第二次大戦中以降に盛んに使われるようになった。前述した「日本人の食生活」(1981年調査)により、米飯を主食としていた夕食のおかずの内容をみると、サラダなどの生野菜、焼き魚、刺身、煮物、焼き肉が多くの家庭で作られている。また伝統的な料理について、普段よく食べているものの調査では、漬物が最も多く80%、以下、のり68%、大根おろし、おひたし各58%、酢の物55%、納豆46%で、近代の食事に度々登場した常備菜でもある煮豆28%、佃煮は22%である。
漬物は、野菜類に塩や酢などで漬けた保存食である。漬けている間に乳酸発酵することにより、保存性が高まるとともに独特の風味が加わる。漬物は古代から作られてきたが、江戸時代に白米食が普及することにより、糠を利用したたくあんが考案され、全国に普及した。そのほか、糠と塩を使ったぬか漬けも江戸時代以降、全国的に作られている代表的な漬物である。
梅干しは梅に塩を加えて漬け、それを干すことでさらに保存性が高まり、何年も保存できる。漬物は、どのような食事にも欠かせないため、各地域の産物で様々な地域特有の漬物が工夫された。特に冬雪に閉ざされ、野菜類が殆ど得られなくなる地域では、特徴ある漬物が作られてきた。漬物は通常、塩を15~20%も使うことで保存性を高めることが出来るが、長野県木曽地方のすんき漬けは、この地域の気候を利用した塩を加えない漬物である。塩だけでなくみそ、醤油、酢などに漬けるもの、酒粕、こうじを加える漬物など味も材料も多様である。
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