ヘラクレスの死
ヘラクレスの物語は、この後も延々と続いていく。後に続く物語の中で有名なものは「デルポイでの、神アポロンと神託の三脚台を巡っての抗争」「クレタ島の迷宮から脱出した後、翼を失い海へと墜落したイカロスの死体を拾い弔ってやり、その島をイカリアと呼ぶことにした、という現在のイカリア島の由来」「トロイ攻めと、その帰りヘラに邪魔されコス島に流され、それがもとでヘラがゼウスの怒りを買い、彼女が吊り下げられる、というホメロスの叙事詩にも出てくる話」「オリュンピアでペロプスの祭壇を築き、オリュンピア競技を開設した所以」、「ピュロスを攻め、ネストル以外の王族が全滅させられた話し」「その際、冥界の王ハデスが、ヘラクレスに傷つけられた話」などなどがある。
ヘラクレスの死
ヘラクレスの「死」については、エウリピデスの悲劇『ヘラクレス』のテーマともなっているものだが、それはヘラクレスの妻デイラネイラの悲劇でもあった。
1. かつて二人がある河を渡ろうとした時、ケンタウロス族のネッソスが「渡し守り」をしており、そこでヘラクレスは自分で河を渡る一方、このネッソスに妻のデイラネイラを渡してもらうよう頼む。ところが、このネッソスは途中で、こともあろうにデイラネイラを襲って、犯そうとしてきた。
2.悲鳴を聞きつけてヘラクレスは弓矢を取って、このネッソスを射殺す。しかし、ネッソスはデイラネイラに、自分の血は「媚薬」になるから、それを取っておき、ヘラクレスが浮気したときに使うと良い、と言い置いて死んでいく。
3. ネッソスは、自分の血がヘラクレスの毒矢によって「ヒュドラの毒」に化していたことを察知していて、復讐をたくらんだのだった。
4.デイアネイラはそれを信じ、その血をこっそり隠し持っていく。そして数年後、ヘラクレスは案の定イオレという娘に心を移してしまう。デイアネイラは、それを知りヘラクレスの心を取り戻そうと、例のネッソスの血を思い出し、それをヘラクレスの着物に塗ってしまう。
5.しかし、これは何人といえども癒せないヒュドラの血の毒であったので、ヘラクレスはのたうち回り、デイアネイラは悲しみと絶望のうちに首をくくって死んでいく。
6.ヘラクレスは火葬の準備をして、そこに身を横たえ通りかかったポイアスという男(一般には、ソポクレスの悲劇で有名なピロクテテスと紹介。ただし、このポイアスはピロクテテスの父親なので、いずれにせよヘラクレスの弓はピロクテテスのものになる)が火をつけてやり、ヘラクレスは彼に自分の弓を与えた。
7.こうして、彼は火炎と共に「天」に昇っていき、そこでやっとヘラと和解しその娘「青春の女神ヘベ」を妻にした。
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