2024/04/16

イスラム教(7)

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【飲酒について】

コーランには「お酒には良い面もあるよ。だけど賭け事や偶像崇拝や占いと同じ様に、夢中になって人同士がいがみ合ったり、うっかり日々の礼拝を忘れたりしかねない、まさに悪魔の仕業なんだ。結局、恩恵よりも背負う罪の方が重くなるだろうから止めといた方がいいよ。あと、酔ってる人はトーゼン礼拝禁止ね」(要約)となっており、その地域の戒律の厳しさにしたがって厳禁(鞭打ち刑)~公的な場所や過度な飲酒の禁止、とずいぶん差がある。

 

【タバコ】

ムハンマドの時代にはアラビアに存在せず、コーランで禁止されているわけではない。しかし「自らその身を危険にさらしちゃいけないよ。それに飲食は大事だけど、浪費はダメだからね」(要約)という記述や、ハディースを元に喫煙を禁止する厳格な地域もある。

しかし多くの地域では喫煙が広く容認されており、特に水タバコは水を通してヒンヤリと冷やされた煙を飲み込まずに(肺に入れずに)口腔や鼻腔でジックリ嗜むものであり、先の「危険」や「飲食」の記述に対する心理的抵抗も少ないために爆発的に普及している。

 

【コーヒー】

ムハンマドの時代には、その覚醒作用から一部の神秘主義的儀式で霊薬としてわずかに用いられたのみで、タバコと同様コーランでは規定されていないが、長らく酒に準じる扱いを受けて禁止されてきた(コーヒーを表すアラビア語カフワ(قهوة‎ qahwah)は、元々ワインを指していた) 。

13世紀ごろに焙煎法が確立して、嗜好品として密かに広まった後も「大衆を堕落させる毒」として一般庶民の飲用が禁止されていたが、15世紀半ばに「コーランに抵触しない」と正式に解禁されて以降、イスラム圏で爆発的に広まった。

 

【女性について】

身体の線や美しい部分を露出させて(≒男性を誘惑して)はいけないとされ、貞淑の象徴であるヒジャーブ(حجاب Hijaab, 「遮蔽物」。ヒジャブ、ヘジャブとも)で頭の先から爪先までを覆い隠すのが義務とされている。これは外国人も例外ではなく、時に違反者には国外退去などの重い処罰が下される場合もある。

日本でも、たまに巻きスカーフを身に付けたムスリム女性を見かけることがあるが、男性は物珍しいからといって決してガン見してはいけない。単にマナー違反だというだけでなく、「男性を誘惑する」という宗教上のタブーに及ぶ危険性があるからだ。

 

スタイルは地域や宗派により様々で、アラビア半島とその周辺ではニカーブ(نِقاب‎ niqaab, 眼以外をすっぽり覆うタイプの頭巾)にジルバーブ(جلباب jilbaab 、首から下を覆うゆったりした衣服)やアバーヤ(عباية ‘abaayah 、ローブ)等を合わせる。カスピ海南西岸を中心としたシーア派地域では、チャードル(ペルシア語: چادر chaador, 顔面と両手以外の全身を緩やかに覆う布衣)を纏い、特にアフガニスタンではブルカ(برقع burqu‘/burqa‘, 頭頂から上半身全体に被さるタイプの頭巾)を合わせる。北アフリカでは、巻きスカーフ(狭義のヒジャーブ)をジルバーブ等と合わせるのが一般的である。

 

「外ではダメでも身内や同性同士ならOK」という解釈もあり、特に富裕層ではゴージャスなドレスを仕立て、ホームパーティーでお披露目してファッションを楽しむ女性もいる。ヒジャーブの巻き方をアレンジして楽しむ女の子も多く、漫画やアニメのキャラを模した形のヒジャーブが次々編み出されるなど、戒律に抵触しない範囲でのお洒落を楽しんでいる。

またこれを支援するかのように、ドルチェ&ガッバーナがムスリムの女性向けにヒジャブ・アバーヤのブランドを発表するなど、少しずつ変化が生じている。

 

【経済】

利子を伴う物品の貸し借りや、利子は無くても見込みの不確かな取引は禁止されている。これでは、おおよそ近代的な金融業や保険業は成り立ちそうにないように見える。が、そこはよく出来たもので、例えば業者が仲介者となって投機性の無い事業や設備投資への出資を斡旋し、利益が上がった場合にそれを顧客へ分配する、などといった間接的な方法で、高い利率や高額の保険料こそ望めないものの、通常の金融・保険業とほぼ同様の業態を展開する事が可能となる。

 

その上、非イスラム圏とは独立した金融ネットワークであり、また大規模な投機も存在しないため、欧米中心の相場や政治政策の影響が比較的少なく安定性が高いのも強みで、近年高い注目を浴びつつある(産油国が石油供給を盾に、強気の政策を打ち出せる大きな理由の一つである)。

 

【偶像崇拝の禁止について】

最も重要なのが、偶像崇拝の禁止である。礼拝所であるモスクには、キリスト教の教会にある聖母マリア像が置かれている様なスペースに神の像も絵もない。ただ、メッカの方向を正面に広間があるだけである。これも国によって徹底さが異なるが、厳しい国では(神の絵が描いていなくても)絵画・彫刻などは収集も含めて禁止であり、日常において絵が必要な場合には、偶像ではなく単なる記号であることを示す印を入れる必要があるくらいである。

もちろん二次絵・フィギュアが厳禁な場合もあるのは言うまでもない。一方、預言者ムハンマドは幼いアーイシャが人形遊びをするのを認めたりもしている。

 

というのが従来の概念だったが、実は中近東では普通にアニメが放送され、漫画も流行している。これは90年代、日本から輸入したアニメをローカライズしてたくさん放送した為。偶像崇拝には当たらないという解釈が大半で、二次絵やフィギュアに対してもこっそり楽しんでいる層も多い。

 

特に「キャプテン翼」は「キャプテン・マージド」として広く親しまれており、戦争からの復興を目指すイラク・サマワにODA(政府開発援助)で給水車が派遣された際、タンクにイラスト(作者描きおろし)をプリントして回った所、大歓迎を受けたとか。他に「一休さん」も高い人気を誇っている。

 

日本に限らずアメコミも人気があり、戒律に従ってある程度の規制は存在するが、頭ごなしに禁止しているのは少数の原理主義というのが現状。戒律に厳しいとされるサウジアラビアに至っては、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子御自らがアニメ好きである。

 

石油産業に依存せずに発展を目指す計画「サウジ・ビジョン2030」は国策として積極的に進められており、エンターテインメント産業の発展に繋がる試みの一つとして、20172月、サウジアラビアでアニメ・漫画のイベント「コミックコンベンション」が初開催。細々とした規制はあったものの大きな混乱もなく、イベントは多くの人で賑わった。

このように、地域によりけりだが、比較的寛容な部分も存在する。

 

イスラム教国にはこれら戒律などを含めたイスラム法が存在し、またその取り締まりを行うための宗教警察が存在するのが普通である。不倫や同性愛などもビシビシ取り締まられる。

こうした国で最も有名かつ突き抜けているのが「我こそが聖地メッカの守護者である」と、ことある毎に主張する原理主義的サウード王家の国、サウジアラビアである。が前述の通り、徐々に「穏やかで開かれた国」へと方針が変わりつつあり、「イスラムだから」と決めつけてかからない柔軟な姿勢は重要である。

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