2024/12/21

アイヌ神話(4)

 ≪昔、この世に国も土地もまだ何もない時、ちょうど青海原の中の浮き油のような物ができ、これがやがて火の燃え上がるように、まるで炎が上がるように立ち昇って空となった。


 そして後に残った濁ったものが、次第に固まって島(現北海道)となった。

 島は長い間に大きく固まって島となったのであるが、その内、モヤモヤとした氣が集まって一柱の神(カムイ)が生まれ出た。

 一方、炎の立つように高く昇ったという清く明るい空の氣からも一柱の神が生まれ、その神が五色の雲に乗って地上に降って来た。

 「北海道アイヌ」とは別に、「千島アイヌ」には、千島列島全島を創造した柱であるコタンヌクルというカムイ(千島の創造神)の語りが伝えられており、アイヌの創造神話体系は一様ではない。

 この二柱の神達が、五色の雲の中の青い雲を(現在の)海の方に投げ入れ「水になれ」と言うと、海ができた。

 そして黄色の雲を投げて「地上の島を土で覆い尽くせ」と言い、赤い雲をまかれて「金銀珠玉の宝物になれ」、白い雲で「草木、鳥、獣、魚、虫になれ」と言うと、それぞれのモノができあがった。

 その後、天神・地神の二柱の神達は

 「この国を統率する神がいなくては困るが、どうしたものだろう」

 と考えていられるところへ、一羽のフクロウが飛んで来た。

 神達は「何だろう」と見ると、その鳥が目をパチパチして見せるので「これは面白い」と二柱の神達が何かしらをされ、沢山の神々を産まれたという。

 沢山の神々が生まれた中で、ペケレチュプ(日の神)、クンネチュプ(月の神)という二柱の光り輝く美しい神々は、この国(タンシリ)の霧(ウララ)の深く暗い所を照らそうと、ペケレチュプはマツネシリ(雌岳)からクンネチュプはピンネシリ(雄岳)からクンネニシ(黒雲)に乗って天に昇られたのである。

 また、この濁ったものが固まってできたモシリ(島根)の始まりが、今のシリベシの山(後方羊蹄山)であると言う。

 『蝦夷地奇観』では、ノツカマップ=根室半島の首長であるションコの話として、シリベシ山(後方羊蹄山)を「最初の創造陸地」としている点で伝承が同じである。

 多くのアイヌが、この地を始まりの地と認識していた事が分かる。

 ペケレは「明るい」を意味し、チュプは「太陽」を意味する。

 一方、クンネチュプは、直訳すれば、「黒い太陽」である。

 

 沢山生まれた神々は、火を作ったり、土を司る神となったりした(最初から役割が定まっていないのが特徴)

 火を作った神は、全ての食糧=アワ・ヒエ・キビの種子を土にまいて育てる事を教え、土を司る神は草木の事の全ての木の皮を剥いで、着物を作る事などを教えた。

 その他、水を司る神、金を司る神、人間を司る神などがいて、サケを取り、マスをやすで突き、ニシンを網で取ったり(この神は江差に祭られている姥神と考えられている)、色々と工夫をして、その子孫の神々に教えられた。

 こうしてアイヌモシリは創造され、次いで他の動物達も創造される。

 さらに神の姿に似せた「人間(アイヌ)」も創造される。

 その後は、神々の国と人間界とを仲介する人祖神アイヌラックル(オキクルミ・オイナカムイ)が登場する事となる(日本神話でいう「天孫降臨」に近い) 

 彼は沙流(サル)地方(現日高・平取町)に降りた。

 アイヌラックルに関する神話は、各地によって差異がある。

 沙流地方に降りたとする神話では、父母の神に頼みモシリ(国土)に降りたとする(初めから天神として語られている)

 この時、アイヌはまだ火の起こし方も知らなかったとされている≫

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