そんなタイミングで、なぜかサーバチームのPMからシステムテストの依頼が飛んで来た。
「今回のシステムテストは、既存の人間(T氏とチャイナ系の技術者)には頼らず、新規の人たち中心で対応して欲しい」
というムチャ振りをされた。
「新規の人」と言っても、Mは最初から戦力外だから事実上自分ひとりだ。しかも面倒なことに、よもや「M」があれだけ使えない前代未聞のバカモノであることは、外部の人間は誰一人として知る由もなかった(以前に一緒だったworkerは勿論、知っていたが)
先日の醜態で、てっきりMには「NG」の通達があるものと期待していたものの、期待に反して何故かそのまま居座っている。単純に「2人」でカウントされたが、事実上はひとりで試験計画を作ったり、試験項目の抽出などをやれというに等しかった。時間があれば、決してやれなくはないが
「IDCでの試験スケジュールは、1週間後で決まっている」
という非常識さだ。つまり1週間以内に試験計画書や試験項目抽出、仕様書、手順書などのドキュメント一式を整えなければならないという、まったく無謀なスケジュールだった。
そもそも、サーバチームのPMは実作業が出来ないやつだっただけに、ましてやネットワークのことなどわかっていないとしか思えないようなムチャ振りだ。一方、ネットワークチームのPMは無理なスケジュールは承知の上だから、狡猾にも直接ではなく関係のないサーバーチームのPMから、この依頼を出させたのだろうかとも思えた。元々、半分くらいは休んでいたルーズなT氏は、そもそも状況自体を把握できていなかった。
ともかく試験計画の整備から着手したものの、ひと通りの試験項目を見積もってみたところかなりのボリュームがあり、どう見ても実質「1.0/月」のリソースで1週間で終わるレベルではない。そこでPMとT氏に
「Yさんから、こんな依頼が来ましたが・・・正直、Mはまったく使えないし、自分ひとりではとても無理で、増員しなければ無理ですな・・・そもそも、なんでYさんから依頼が来るのかがわかりませんが」
と、文句を言うと
「そんな話、まったく初耳だ。Yのヤローが独走しやがった」
と惚けた。計画を説明すると
「そんなの出来っこねーじゃん」
ということになり、改めてサーバチームPMやユーザーに確認してみたところ、やはりYの勘違い(というか意図的な独走?)が判明し、実際にはまだハッキリとした線表が引かれているわけではなかった。
元々居た技術者がトンズラを決め込んだ後、代わりの技術者K君が入っていたが、こっちは暫くの間は現地での性能監視に取られていて使えない。この現場ではまだ実戦を経験しておらず、スキル的にもそれほど高くはなかったとはいえ、どう考えても「小学生レベル」のMよりは使えそうだっただけに
「性能監視は、現地に居るだけでいいのならK君ではなくMに代えて、K君に試験対応を手伝ってもらいたい」
とPMに申し入れたが「序列」に拘りのあるらしい頭の固いPMに却下された。チャイナ人技術者は他の作業で手一杯だけに当てに出来なかったが、休みがちとはいえ過去に何度も同じ作業を経験しているT氏を柱として、なんとか試験計画が整った。
そうして、いよいよIDCでの試験が始まる。IDCは多摩地区の奥にある通信キャリアの施設を借りていた。
例によってMは役に立たないから、実質的にはT氏と自分の2人だ。ここでも
「Mでは役に立たないから、K君と代えてくれないか」
とT氏に言うも
「もう入館申請を出しちゃったから、間に合わねーな・・・」
と、あえなく却下された。
当初T氏から聞いていた検証環境の構成と、実際の現地で確認した構成がまったく違っていて、苦労して調べながら準備した試験計画は使えないことが判明。そのため、初日の昼過ぎまでは環境作りのみに時間を取られ、試験が出来ないという誤算から始まった。しかも、このIDCはサーバルームのみならず、待機場所となるSEルームに入るためにもセキュリティカードが必要ということで、通常は使えそうなゲストカードはまったく役に立たず、登録者しか入れなかった。トイレに行くにもいちいちT氏に頼まなければならず、タバコも自由に吸えないという不自由さだ。
そんな中、最初の遅れを取り戻そうと躍起になったT氏に引き摺られる形で、食事も摂らずに遅れを回復したが気付けば23時近くになっていた。
「そろそろ出ないと、終電に乗り遅れる・・・」
と、終電のことなどはすっかり忘れているようなT氏に告げると
「あっ、もう23時か・・・そろそろ出ないとやばいな・・・」
と言うものの、動作の緩慢なT氏とMの片付けは一向に捗らなかった。駅までは15分の道程だったが、その近道は外灯もない真っ暗闇でとても歩けない。仕方なく大回りを余儀なくされ、駅までたっぷり30分以上掛かった挙句、着いた時にはすでに終電が出た後という間の悪さだった。
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