2012/11/21

携帯キャリア(秋の乱part3)

 「ならば、たとえば部長の補佐のような形で、マネージメントをやるというのならやりますか?」


 と、なおもF社長からはしつこく食い下がられたものの、紹介元のT社長には辞退のメールを入れ、この話はここで終わった・・・はずだった。


 が、まだ話は終わらなかった。


 面接を担当した部長というのが現場リーダーだったが、この部長に大いに気に入られたらしく


 「是非とも来ていただきたいので、意向を踏まえた上で先日とは別の上のポジションを用意します・・・」


 と、F社長経由でしつこいくらいにメールが来る。


 紹介元のT社長などは


 「熱心なラブコールが来ていますので、再度考えてもらえないか?」


 とは言うものの、前回の面接の時から180℃話が変わっているから、これを俄かに信じるわけにもいかない。なにより、今の現場をスンナリと辞められるかどうかの方が、先決問題であった。


 その現場の方では、今後M証券がらみの案件はK氏を担当とし、某県庁リプレースという大規模案件のマネージメントを任せるので、しばらく延長してほしいという話になった。


 「今度はマネージメント案件だから」


 というのに対し


 「取り敢えずは1か月延長して、様子を見ながら11月以降のことを決めてみてはどうか?」


 という所属会社の顔を立てる形で合意したものの、マネージメント案件とは名ばかりで、やはり中身はConfigや手順書作成といった実作業がやたらと多かった。


 例の携帯キャリア案件を紹介してきたT社長に「1か月延長」の旨を伝えると


 「延長ですか・・・」


 と、明らかに気落ちした様子で


 「確認したところ、やはり10月頭から来て欲しいとのことで、1か月は待てないと・・・」


 「あの件は、こちらの方で辞退した話なので、特に待ってもらう必要性はない。 他の件同様に選択肢の一つに過ぎないし、他にも紹介してくれる会社は幾つかありますので」


 と告げると


 「折角、いい話だと思ったんですけどねー」


 と、あくまでその話に執着していた。

 

とにもかくにも、1か月の延長期間を勤め上げた。その間も、元請の営業から


 「案件途中で抜けられるのは問題がある。せめて、12月末まで続けてもらえないか」


 と何度も要請されたが


 「事前に聞いていた内容と違うので、10月一杯で辞める意向は変わらない」


 と突っぱねてきた。


 そうこうするうち、幾つかかの面接依頼が舞い込んできた。まずは、以前からの知り合いのK社長から指定された京橋の会社を訪ねる。


 (以前に来たことがある気がするが・・・)


 と思っていると、案の定数か月前に面接に来たのと同じ、ちょび髭の小柄な担当者が現れた。


 「いやー、お久しぶりですね・・・」


 という担当者が切り出したのは、前に勤めていた某大手金融機関の大規模プロジェクトの件である。

 

この職場には、5月にPMOとして参画していたが、PMがダメなヤツだった。本来、PMOというのはPMとは別に機能するもののはずだが、PM補佐的なこともやらされた。


 このPMが作ったPJ計画書の出来が悪く


 「修正してくれないか」


 と言われたのをいいことに、大幅に作り替えたことで益々関係が悪化していた。


 最後は、喧嘩別れのような形で


 (あんな会社は、どうせ次工程で失注に違いない!)


 と方々に言い触らしながら、ケツをまくって辞めた経緯があった。実際に次工程の受注は、かなり怪しい状況だった。


 面接で話を聞いていると、かつてやっていた要件定義~基本設計を大手コンサルファームが作成しているというから、やはりあの会社は「失注」した模様だ。


 このプロジェクトは、顧客となる某金融機関お抱えのSI担当者が相当な難物らしく、元請の世界最大コンサルファームA社も相当に頭を悩ませていた。確かに数か月前の面接では、この大手金融プロジェクトとは別に銀行系や損保統合など、A社が抱えるいくつかの案件があるという話だった。
 が、今回は募集は、大手金融機関の大規模プロジェクトのみに限定されていたことからも、人が定着せずにいかにそのPJが難しいかを物語っているようだった。

 

さらに話を詰めていくと、自分が携わっていた数か月前と同じ「要件定義~基本設計に移るところ」というから、数か月前から話がまったく進んでいないのである。かつて自分がPMOとして関わっていたプロジェクトだから、話を聞いただけでいかに停滞しているのか、つまりはいかに酷い状況になっているかが手に取るようにわかった


 またそんな状況だからこそ、内情に詳しいこちらに対し殊更に


 「それだからこそ、逆にやりがいがありませんか?」


 などと、熱心に奨めるのである。その場で即座に断りを入れてもいいが、この様子ではしつこく誘われそうで面倒だと思い


 「検討して、営業経由で回答します」


 と逃げを打っておく。面接後も、事情を知らない間に入った営業は


 「是非来て欲しいという感触でしたが、いかがでしょうか?」


 と、単純に喜んでいたが、しつこい誘いを振り切って即座にK社長に断りを入れた。


 が、嫌な予感は的中し、すぐにK社長から


 「先方は大変に乗り気で、にゃべさんが誤解をしているようだから、もう一度考え直してもらえないかとしつこく言ってきております」


 というメールが舞い込んできたが


 「誤解などはしておらず、あの仕事を受けるつもりはない!」


 と、キッパリと振り切った。

0 件のコメント:

コメントを投稿