2013/04/12

通信革命(プロジェクトD)(7)

 ここまで記してきたように、このプロジェクトは「国内最大手携帯キャリアのスマホ導入対応」であり、ここに至ってワタクシも認識を改める必要に迫られた。

 

そもそもの成立ちとして、携帯電話というのは従来の固定電話に代わる「モバイル性」の便利さで普及したものだった。かつては、現実離れのしたアホみたいなバカでかいバッテリーをかついで「よっぽどの目立ちたがり屋か見栄坊」の間にしか普及しないだろうと蔭で冷笑していたものだった。

 

ところが案に相違して急速な小型化のみならず、価格面からもキャリア各社の競争激化による低価格競争の末

 

「旧来の不自由な固定電話に代わる、新たなコミュニケーションツール」

 

として、爆発的なまでに普及が加速したのである。

 

さらには

 

「さすがに、固定電話の代用とはなりえないだろう」

 

との予測をもあっさりと覆し、すっかり不自由な固定電話に代わる移動通信手段として、通信の「主役」になりおおせたばかりか、今や学生の身分でさえ当たり前に1台は所有するに至っていた。

 

これだけでも、通信業界にとっては十分に「革命的」ともいえる現象だったが、このスマホというのが従来の携帯電話のような、単なる「固定電話に代わる通信手段」に留まることなく、その多機能ぶりはPCの代用にもなりうるものまで進化したのだから、これこそは、まことに通信業界の「革命」としか言いようがないのである。

 

今、まさに通信手段の本流が「携帯電話」から「スマートフォン」へと変わりゆくこの時代にあって、幸か不幸か「携帯最大手キャリア」のスマホ導入対応というプロジェクトに関わってしまった「縁」の不思議さを思うのである。

 

もちろん、これだけの「革命」的な出来事なのだから、その対応に当たる技術者の方も「旧態依然」では追いつかず、日夜「新技術の習得」に追われることになっていた。とはいえ、ひとくちに「新技術の習得」と言っても、そう簡単なことではなく、それなりの技術的な下地と、新技術に対応できるだけの高度なセンスが求められるとあって、この現場の「二流技術者」風情が悪戦苦闘するのは当然の成り行きと言えた。

 

繰り返し触れてきたように、このプロジェクトは業界再大手のキャリアが、今後爆発的な需要増が確実に見込まれるスマホユーザー向けに、新たなプラットフォームを導入するとともに、既存のプラットフォームを増強するという巨大かつ難易度の高いものだ。当然ながら、このニーズを実現するためには最新技術を駆使したものにしなければならず、これまた当然ながらそれを実現するためには、最新技術を使いこなせる高度な技術や知見を備えた人材が必要になるわけだ。

 

ところが実態はどうだったかと言えば、これまで触れてきたように、我がLBチームの顔ぶれを見ただけでも、到底そのようなニーズに対応できる体制になっていないのが実情だった。しかしながら、携帯からスマホへの切り替えという世の中の流れを止めることはできず、またスマホの導入に関しても一刻も早い対応が求められていた。業界最大手とはいえ、強力なライバルが何社かあるだけに、生き残りのためには品質だけでなく、時流に対応した相応なスピード感が求められていた。

 

とはいえ、つまるところ人がやることであり、また人がやるからにはそこに携わるエンジニアの「能力」に応じた対応しかできず、いかにニーズがあるからとはいえ能力以上の対応はできない。つまるところは「能力」の足らない分は「努力」で補うしかなく、必然の成り行きとしてメンバーの作業負荷は高まる一方となっていく。

 

プロジェクトにはスケジュールがあり、スケジュールを守ることは必須であるから、一定の水準をクリアできるまでは仕事が終わらない。こんな負のサイクルにハマった「能力なき」メンバーたちは、連日朝から始まって終電ギリギリまでの「努力」に迫られていた。

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