2015/05/01

懐石(世界遺産登録記念・日本料理の魅力)(14)

●酒

客が汁を飲み切った頃合を見て、亭主が銚子(または燗鍋)と盃台(客の人数分の盃が乗っている)を運び、客に酒を注ぐ。客は、ここで向付の肴に手を付ける。酒は、懐石の中で3回ほど出される。

 

煮物

1献目の酒が出された後、一汁三菜の2菜目に当たる煮物碗が出される。煮物碗は、飯碗や汁碗よりやや大きめの蓋付き碗を用いる。煮物は懐石のメインに相当する料理であり、しんじょ、麩、湯葉、野菜などを色取りよく盛り、すまし汁仕立てにすることが多い。煮物の前か後に、飯次(飯器)が出される。人数分の飯が入っており、客は各自の飯碗にお替りの飯を付ける。また亭主から汁替えが勧められ、味噌汁のお替りが運ばれる。

 

焼物

焼物は一汁三菜の3菜目に当たる。煮物碗が客一人一人に配られるのに対し、焼物は大きめの鉢に盛った料理(焼魚など)を取り回す。取り箸は、青竹か白竹製で中節の取り箸を用いる。客は、鉢から銘々の食べる分を取り箸で取り分け、向付か煮物碗の蓋に取る。なお焼物は重箱(引重)で出す場合もあり、その場合は重箱の下の段に焼物、上の段に香の物を入れる。この辺りで2度目の飯次が出され、2度目の汁替えも勧められるが、汁替えは客の方で断るのが通例となっている。また、煮物の後か焼物の後に亭主が再び銚子を持ち出し、2献目の酒が勧められる。酒は客同士が注ぎ合う。

 

預け鉢

現代の茶事では、一汁三菜に加え「預け鉢」あるいは「進め鉢」と称して、もう1品、炊き合わせなどの料理が出されることが普通である。これも焼物と同様に、大きめの鉢に盛り合わせた料理を天節(止節、節が持ち手の端にあるもの)の取り箸で取り分ける。なお、流派によっては「強肴(しいざかな)」と称する場合もある。

 

吸物

客(末客)は空いた鉢、銚子、飯次などを給仕口の手前に返す。亭主は頃合いを見て、吸物椀を運ぶ。これは食事の最後に出される小さめの吸物で「箸洗い」、「すすぎ汁」とも称する。以後は盃事となる。なお吸物椀の蓋は、後ほど酒の肴を受けるために使用する。

 

八寸

八寸(約25cm)四方の杉の素木の角盆(これを八寸という)に、酒の肴となる珍味を2品(3品のこともある)、品よく盛り合わせる。2品の場合は、1つが海の幸ならもう1品は山の幸というように、変化をつけるのが慣わしである。亭主は正客の盃に酒を注ぎ、八寸に盛った肴を正客の吸物碗の蓋を器として取り分ける(両細の取り箸が用いられ、それぞれの端が酒肴によって使い分けられる)

 

酒と肴が末客まで行き渡ったところで、亭主は正客のところへ戻り「お流れを」と言って自分も盃を所望する。その後は、亭主と客が1つの盃で酒を注ぎ合う。亭主は、正客の盃を拝借するのが通例である。正客は自分の盃を懐紙で清め、亭主はその盃を受け取り、そこに次客が酒を注ぐ。その次は同じ盃を次客に渡し、亭主が次客に酒を注ぐ。以下、末客が亭主に、亭主が末客に酒を注ぎ合った後、亭主は正客に盃を返し再び酒を注ぐ。

 

このように盃が正客から亭主、亭主から次客、次客から亭主と回ることから、これを「千鳥の盃」と称する。客が上戸の場合は、さらに「強肴」(しいざかな)と称される珍味が出される場合もある(強肴は「預け鉢」の前後に出される場合もあり「預け鉢」そのものを「強肴」と称する流派もある)

 

●湯と香の物

納盃した後、湯桶(湯斗、湯次)と香の物が出される。湯桶には湯と共に「湯の子」が入っている。湯の子は飯の「おこげ」が本来だが、炒り米等で代用することもある。添えられた湯の子すくい(柄杓)で湯の子を取って飯碗と汁碗に入れた後、両碗に湯を注ぎ、飯碗に少量残しておいた飯で湯漬けをする。最後は湯を全部飲み切り、器を懐紙で清めて亭主に返す。これは禅寺の食事作法を採りいれたものである。

 

菓子(甘味)

食事の後に菓子が出される。菓子は縁高(ふちだか)と称する重箱に入っており、黒文字と称する木製の楊枝が添えられている。縁高は客の人数分重ねられ、1段に1個の菓子が入っている。正客は縁高の一番下の段を残し、残りを次客に送る(次客も同様にする)。菓子は懐紙に取り、黒文字を使って食する。

 

食器

利休時代までは主に漆器が用いられていたが、織部焼などの国産陶磁器の発達によって多彩な器が用いられるようになった。現在では、懐石料理に用いる器は陶器、磁器、漆器、木器、ガラス器などがある。このうち飯碗・汁碗などは漆器を用いるのが通例である。茶席においては主客より詰まで順次取り回し、八寸が出てのち亭主が同席して杯事がなされ、菓子ののち中立ちとなり、客はいったん待合へ退き銅鑼の合図で再び席入りするのが本来であるが、いわゆる大寄せ茶会においては別室で点心が供されることが多く、この場合中立ちなどは省かれる。

 

略式懐石

重箱を器として、懐石の一通りの献立を入れたもの。松花堂弁当も、これに該当する。おばんざい(お番菜、お晩菜、お万菜)とは、昔より京都の一般家庭で作られてきた惣菜の意味で使われる言葉である。「」の字は「常用、また粗品を示す語ともなる。番茶、番傘など」との意味がある(広辞林)。元来は京都料理に限らず、嘉永二年出版の献立集「年中番菜録」には

 

「民家の食事にて関東は惣菜といい、関西にてお雑用という日用の献立を集める。 珍しい料理、高価な料理は番菜にならないので除き、女房まかない女の思案に詰まった時の種本とする」

 

とあり、119種の献立を列挙する。しかし、実際は京都市民はこういう言い方はせず、単に「おかず」と呼ぶ。京言葉のように広まったのは、一説には昭和3914日から朝日新聞京都支局が「おばんざい」というタイトルの京都の家庭料理を紹介するコラムを連載したことからという。連載当時も、こういう言い方をする地元民は殆どいなかった。京都の伝統料理でも、家庭料理として作られるものを指す。専門に修行をした料理人が出す京都の料理は「京料理」と呼ばれ、日本各地で和食の標準的な地位を占めているが、そのような見た目を重視したり、手が込んだ料理は一般におばんざいとは認識されていない。

出典Wikipedia

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