ラッキーボーイの見立てでは、あのタコオヤジは「ホモ」に違いなかった。
これは、単なる推測の域を超えていた。
これまでに再三、ご紹介してきたように、なにせこちらは「ラッキーボーイ」であり、常に周囲に人々が寄ってくる「集客体質」なのは明らかだった。
これが(絶世の美男子で)女性ばかりがわんさと寄って来るのなら、まったく言うことはないが、現実はどちらかというとオバサンやオトコが多いのである。
実のところ、若いころはオバサンは言うに及ばず「ホモ系」と見られるオッサンに迫られたことも、一度や二度ではなかった。
こっちは、そのような趣味はないから、そのような「身の危険」を感じた時には、空手のキックや少林寺のデモンストレーションで追っ払って来ていたが、そうしたこともあって「ホモ系オヤジの体臭」には(マイナスの意味で)敏感になっていた。
勉強嫌いのグウタラといえど、ダテにユングやフロイトを読破してきたわけではないから、相手の表情や振る舞いから大凡の見当を付ける自信は、若いころから持っていた。
まずは、そのような「先入観」があっただけに、タコオヤジの「弁明」にまともに取り合うハズはない。
とはいえ、そこは「二枚腰」でもあるから、しばらくはタコオヤジの与太に付き合ってやる肚は決めていた。
「それで・・・?」
「その彼女とは・・・同じ駅から乗っていた・・・で、彼女は必ず、さりげない風を装いながら、アンタの傍に擦り寄って行った・・・」
「・・・」
「どんな愚鈍なヤツだろうと・・・いや、オレみたいな底辺高卒の愚か者にだって、彼女がアンタに惹かれていることは明らかだった・・・」
(まったく、オマエは愚鈍なヤローだよ・・・)
と、肚の中でせせら笑いながら
「愚鈍なヤツ」にしては、空想を逞しくしたもんだな・・・で、与太の続きは?」
と促すと
「あんたは、オレと違って賢いようだから、もうオレの言わんとするところはわかってるんだろう・・・オレのお目当ては・・・」
「つまりオレではなく、彼女だったと言いたいんだな・・・」
「つまり・・・そういうことだ・・・」
「それで・・・その女がオレの背後霊のようにくっ付いていたから、アンタは彼女を目当てにストーキングを続けていたが・・・結果的に、オレのストーキングとなっていた・・・と?」
「さすがに、察しがいいな・・・」
「こう見えても・・・」
とLARKを口に咥えたラッキーボーイは
「美人には、嗅覚が鋭い方なんだがな・・・そんな綺麗な女が傍に来れば、気付かんハズはないと思うが・・・」
「まあ『美女』の定義や好みは、人によって全く違うからな・・・それに・・・」
「・・・」 「アンタはオレにストーキングされているという「被害妄想の塊」だったから、オレにばかり気を取られて背後の彼女に意識が行かなかったんだろうな・・・」
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