2020/12/13

三国時代(1)

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三国時代

 後漢滅亡後、中国は長い分裂時代に入っていきます。一時的な統一の期間はありますが、だいたい350年ほど分裂がつづきます。

*        その最初が三国時代です。
 魏、呉、蜀という三つの国に分裂します。

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  まず「」(220~265)です。都は洛陽。これが後漢に取って代わった国です。中国北部を支配した。三国の中で最大最強です。建国者は曹操、曹丕(そうひ)。事実上は曹操がつくった国ですが、彼は皇帝にならずに死んで、息子の曹丕の代になって、後漢最後の皇帝から位を奪って魏の初代皇帝になる。だから、一応形式的には建国者は曹丕

 曹操は、もちろん豪族ですね。お爺さんが宦官で財産を築いた。宦官でも、養子をとって家を残すことがあるのです。黄巾の乱の鎮圧で頭角を現して、その他大勢の豪族を傘下に治めます。三国志の物語に出てくる彼の部下、武将や参謀、あれはみんな豪族だからね。それぞれ手勢を率いて、曹操の配下に加わってくるのです。

 曹操が強かった理由は、色々ある。例えば、後漢末の群雄割拠の時代に、
呂布(りょふ)というスーパーマンみたいに強い豪傑がいるんですが、なぜ彼が強いかというと匈奴兵を率いていたんですね。彼自身も現在の内モンゴル出身で、遊牧民族の血を引いていたのかもしれない。遊牧民は騎射に優れて勇猛です。その呂布が死んだ後、その軍隊を曹操はそっくりそのまま自分の軍隊に吸収します。
 それから青州兵という黄巾軍の残党まで、自軍に編成しています。何でも利用できるものは利用します。

 

 三国時代で、曹操は一番魅力的な人物です。彼の魅力の根本は、従来の儒学の道徳から解き放されているところにある。曹操は法家だともいわれます。先ほど、党錮の禁以来「逸民」的な生き方がブームになったといったけれど、逸民というのは世間から逸脱(いつだつ)しているのです。この逸脱、ということの中身には儒学的な道徳からの逸脱ということも含まれている。そういう意味では、法家的な曹操も逸民と同じ根っこを持っています。だから、その行動にも大胆不敵で爽快なイメージがつきまといます。

 政治、軍事だけでなく、文学の才能にもあふれた人でした。曹操だけでなく、息子の曹丕や曹植(そうしょく)も文才があって、「建安の文学」といって中国文学史上、黄金期のひとつに数えられる時代です。彼らはみな、その「建安の文学」を代表する詩人でもあります。

 曹操の詩をひとつ紹介しておこう。

短歌行 曹操

酒に対わば当に歌え
人生幾何やある
譬えば朝露にも如たり
去日苦も多きことよ
慨らば当にもって慷け
憂思忘れ難し
何に以てか憂を解さん
唯杜康有るのみ
……
山 高きを厭わず
海 深きを厭わず
周公哺を吐きたれば
天下心帰せたりとかや

さけにむかわばまさにうたえ
ひとのいくるやいくばくのときやある
たとえばあさつゆにもにたり
すぎにしひびさてもしげきことよ
おもいたぎらばまさにもってなげけ
こもれるおもいわすれがたし
なにによりてかむすぼれるおもいをけさん
ただうまざけあるのみ
 ……
やま たかきをいとわず
うみ ふかきをいとわず
しゅうこうくちのなかのたべものをはきたれば
あまがしたこころよせたりとかや

(竹内実・吉田富夫編訳「志のうた」中公新書より)

 人生なんていうのは、朝露のように短く儚いものだけれども、振り返ってみれば色々な出来事が思い出されて、ゴツゴツと胸に引っかかる。
 そんな時には、うまい酒を飲んで歌おうではないか。
 山は高いことを嫌がらないし、海は深いことを嫌がらない。
 周の建国の功臣、周公旦(しゅうこうたん)は仕官したい者や政治について意見を持つ人がやってくれば、食事中であっても口の中のモノを吐き出してまでも、すぐに面会した。だから、みんなが心服したんだ。

 そんな意味です。周公旦に自分を重ねているのは、わかりますよね。山が高いように、海が深いように、周公旦がそうであるように、俺、曹操もそのようにあるのだ。
 彼の気概が伝わってくるようだね。

 魏の制度では、屯田制と九品中正法を覚える。屯田制は、後漢末の戦乱で混乱した農業生産を回復させるための土地制度です。


 九品中正法は、漢の郷挙里選に代わる官吏登用制度です。地方に中正官という役人を置いて、これが地方の人物を九等級に分けて中央に推薦する。中央政府は、これに基づいて役人を採用していきます。

 

 後漢末、中国北部を統一した曹操は、南方に攻め込みます。これを迎え撃ったのが孫権、劉備の連合軍。長江中流域で決戦になるのですが、水軍に慣れない曹操軍は大敗する。これが有名な赤壁の戦いです(208)。この敗北で曹操は統一を諦め、中国の分裂が決定的になりました。

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