2022/11/04

ズルワーン教

ズルワーン教は、ゾロアスター教の滅びた分派。ズルワーン神を崇拝する宗教。ズルヴァーン主義、拝時教、ゾロアスター教ズルワーン派などとも呼ばれる。

 

概要

一般的には、サーサーン朝ペルシアの国教はゾロアスター教であるとされている。しかし現代に伝わる(二元論的な)ゾロアスター教と、同時代外国語資料に現れるサーサーン朝の宗教にはずれがあり、後者はズルワーン主義(ズルワーン教、ズルワーン派)と呼ばれる。

 

ゾロアスター教に関する資料は、以下の3時代に偏って存在する。

 

        原ゾロアスター教時代(紀元前1000年前後数世紀) - 原始教団によって保存され、6世紀に文字化された『アヴェスター』(アヴェスター語)

        ゾロアスター教ズルワーン主義時代(35世紀) - 外部資料(パフレヴィー語・アルメニア語・シリア語・アラビア語)とわずかな内部資料(ペルシア語)

        二元論的ゾロアスター教時代(610世紀) - 豊富なパフレヴィー語資料

 

このうち原ゾロアスター教研究は未だ安定段階に達しておらず、ズルワーン主義についても内部資料が少ないため、正確なことは分かっていない。ゾロアスター教ズルワーン主義と二元論的ゾロアスター教には、次のような差があると考えられている。

 

ゾロアスター教ズルワーン主義と二元論的ゾロアスター教の相違点

35世紀のゾロアスター教ズルワーン主義

69世紀の二元論的ゾロアスター教

最高神

時間の神ズルワーン

善神オフルマズド
悪神アフレマン

宇宙論

ズルワーンから善神オフルマズドと悪神アフレマンが自然発生
悪神が善神に挑む

悪神が善神の王国に侵入

神々

アマフラスパントらが善神に助力
悪神も7悪魔で対抗

アマフラスパントやミスラ神が善神に助力

二元論

は精神界・物質界双方に宿る
は物質界のみ

善悪が物質界・精神界双方で対峙

人間論

善神により創造
死ぬことで悪魔を滅却する悲劇的存在

悪との闘争のため善神が創造
最終的に勝利する

終末論

善悪の闘争はすでに決着済み
人間は悪の要素と心中し、最終的な復活がある

善が悪を圧倒・封印
宇宙と人間は幸福に包まれる

 

ズルワーンは、「無限なる時間(と空間)」「アカ(一つの、唯一の)物質」「運命」「光・闇」の神。語源はアヴェスター語「時間」「老年」を意味する「zruvan-」。サンスクリット単語の「サルヴァ」(sarva)と関係し、どちらも一元論的な神を記述する上で同様の意味領域を持つ。ラテン文字表記は、中世ペルシア語では「Zurvān」、「Zruvān」、「Zarvān」など、標準化された発音では「Zurvan」となる。

 

ズルワーン主義におけるズルワーンは、「双子の兄弟」、善神オフルマズド(アフラ・マズダー)と悪神アフレマン(アンラ・マンユ)の親。性を持たず(中性)、感情を持たず、善悪どちらにも傾かない中立的な創造神。原ゾロアスター教ではアフラ・マズダーが超越的な創造神で、スプンタ・マンユとアンラ・マンユの二柱が双子とされていた。

 

ズルワーン主義はサーサーン朝期(226-651年)に国家承認を受けたが、10世紀には滅亡していた。サーサーン朝期のズルワーン主義は、ヘレニズム哲学から影響を受けていた。

 

ゾロアスター教が最初にヨーロッパに到達したとき、一元論的宗教だとみなされた。これは学者や現代ゾロアスター教徒からも異論の多い言明だが、ズルワーン主義に対して非ゾロアスター教徒が評価を加えた最初の例となる。

出典 Wikipedia

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