〇日本 6 - 5 ×メキシコ
あまりに劇的な展開のことを「まるでマンガみたい」とか「ドラマみたい」というが、実際にこのような筋書きのマンガやドラマを書いたら
「なんて出来過ぎた陳腐なストーリーなんだ!」
となってしまうだろうから、今時こんなストーリーを書くシナリオライターはいない。逆に「筋書きのないドラマ」だからこそ、起こりえた展開なのだ。
これまで格下相手ばかりだった日本は、準決勝までは余裕の勝ち上がりだっただけに、それなりに戦力が温存できた反面
「接戦になった場合が心配」
というところが注目された。
そして準決勝のこの試合、初めて「WBCらしい」相手を迎えた。
プロ野球OBの解説者たちも、口をそろえて
「中南米の投手の動くボールには、日本の打者はかなり手こずる」
とのご託宣で一致していたが、いざ蓋を開けてみればその通りで、初回の三者三振を皮切りに相手投手に全く手も足も出ず、三振の山を築く。観ていて全く打てそうにないのだが、これでもこのピッチャーはメジャーでは「たかだか6勝9敗」なのである。
絶好調の相手投手に伍して、3回まで0で抑えて来た佐々木が4回に3ランを浴びる。相手投手の調子から見れば「重すぎる3点」だ。それでも、さすがは日本打線。一巡目こそ三振の山(5個)を築きながらも、二巡目にはかなり対応力を発揮して来たから「3点なら、後半になんとかなる」と期待が膨らむ。
日本にとってはラッキーだったのは、どうにも打てそうになかったこの先発投手が、なぜか球数制限となる遥か前に降板してくれたことだったろう。投手交代の後、5回、6回と続けて満塁まで攻めながらも、肝心の一本が出ない嫌な展開が続く。優勝争いとは無縁なメジャーの弱小チームに所属する大谷が、常々「ヒリヒリするような展開の野球」を望んでいたらしいが、まさにその通りの状況だ。
そんな中、7回裏についに日本打線が相手投手を捉えた。二死無走者から近藤がヒット、大谷が四球で続くと、この大会大当たりの4番吉田がライトスタンドへ見事な放物線を描いて遂に「3-3」の同点。この値千金の一発で流れは一気に日本に傾いたかと思われたが、メキシコもしぶとい。直後の8回にエース山本を攻略し、3連打であっという間に2点を奪い「3-5」。8回裏は、代打山川の犠飛で1点を返しなお満塁という絶好のチャンスを迎えるも、頼みの近藤がまさかの見逃し三振に倒れた。
迎えた9回裏、先頭大谷がヒットを放つと、ヘルメットを脱ぎ捨てての激走で二塁を奪いチームを鼓舞する。続く四番の吉田が絶好調なだけにサヨナラホームランが期待されたが、ここは冷静に四球を選び一、二塁。ここで登場したのが「絶不調」の村上だ。
予選リーグを通じて、ここまで打率はまさかの1割台。この日も4打数無安打3三振のテイタラクで、素人目にも全く打てそうな雰囲気がないから
「ここは代打か、もしくはバントだろう」
と叫んだのはワタクシだけではなかったろう。が、この土壇場で、ようやく三冠王のバットが火を噴いた。
「手に汗握るようなジリジリする展開」とはまさしくこのことだが、この劇的勝利で日本は決勝進出。いよいよアメリカとの最終決戦を迎える。
準決勝
〇アメリカ14 ― 2キューバ
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