2024/02/20

イスラム教(1)

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イスラム教の特徴

イスラム教とは

 ムハンマドが始めたイスラム教はどんな特徴を持っているのか、簡単に見ておきましょう。

 

 まず、一神教である、ということ。ここはしっかり頭に入れておくこと。只一つの神しか認めない。しかも、その神は人格神です。山の神とか、火の神とか、太陽の神とか、そういう自然神とは全然違う。

 

 こういう一神教の宗教は、世界で三つだけです。ユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教。ムハンマドが神がかりになったときに、相談したハディージャのいとこはキリスト教徒でしたね。また、ムハンマドがイスラム教の教義を確立したメディナの町はユダヤ教徒の住民がかなりいたところで、ムハンマドはかれらからも大きな影響を受けています。つまり、イスラム教はユダヤ教、キリスト教の兄弟宗教で、一神教三兄弟の末っ子なのです。

 

 イスラム教の唯一神をアッラーといいますが、アッラーというのは神様の名前ではありません。注意してください。アッラーというのはアラビア語で「神」という意味です。一般名詞です。日本語で「神さまー」というように、アラビア語で「アッラー」というのね。だから「アッラーの神」という言い方は間違いです。

 

 では、神様の名前は何かというと、あえて言えば「ヤハウェ」です。キリスト教徒が信じているのと同じ神さまをイスラム教は信仰しているのです。イエスはユダヤ教を改革しようとした人でしたね。だから、キリスト教の神さまはユダヤ教と同じ「ヤハウェ」でした。そして、その同じ神をイスラム教も信じている。だから、人類はアダムとイブからはじまったとイスラム教徒も考えているのですよ。

 

 ムハンマドが神がかり状態になるときに、神の言葉を授かるのですが、神はずっと昔からムハンマド以外の人にも言葉を与えてきた。それが、「ノアの方舟」のノア、「出エジプト」のモーセなど、旧約聖書の登場人物たちです。ムハンマドはそれらの人物を預言者として認めます。さらに、イエス。かれも預言者の一人だった、とムハンマドは言う。ただし、神はこれまでの預言者たちに、すべてのことを伝えたわけではない。言い残した言葉がたくさんあったんだ、という。人間たちに言い残した言葉を伝えるために選ばれたのがムハンマドなのだ。

 

 というわけで、イスラム教でのムハンマドの位置づけは「最後にして最大の預言者」です。何しろ、神さま今まで言い残していたすべてをムハンマドにしゃべってしまったので、もう何も人類に伝えることはない。だから、ムハンマドは最後の預言者なのです。キャッチフレーズとしては滅茶苦茶にうまい。おいしいところに目を付けたな、という感じですね。ムハンマドが他の人間と違うのはそこだけで、他に奇跡を起こしたりとか特別な能力を持っていたりということはありません。

 

 イスラムという言葉ですが、これは「神への帰依」という意味です。帰依というのは「深く信仰し、その教えに従う」という意味ですよ。だから「イスラム教」という言い方はそのまま訳すと「神を信仰する宗教」という意味になってしまって、なんだか居心地が悪いね。イスラム教徒のことを「ムスリム」といいます。意味は「神に帰依した人々」です。この言葉、教科書でも頻繁に出てきますので、しっかり覚えてください。

 

 神がかり状態のムハンマドの言葉を集めたイスラム教の聖典が「コーラン」です。この「コーラン」は、考えようによってはものすごい本です。たとえば仏教のお経やキリスト教の新約聖書は、ガウタマ=シッダールタやイエスの言葉がどれだけそのまま伝えられているかという点から見ると、かなりあやふやなものです。しかも、ガウタマ=シッダールタやイエスは人間ですから、かれらの言葉が正確に書かれていても人間の言葉に過ぎない。

 

 ところが「コーラン」は、神の言葉そのものなのです。神がムハンマドの肉体を通じて語りかけたのだから。しかも、それをリアルタイムで聞いていた信者たちが、書き留めてまとめたものです。他の宗教の経典は、のちの時代の信者たちが教祖の言葉を解釈してまとめたもの。「コーラン」は神の言葉を解釈抜きで書き留めたもの。この違いはすごい。またまた、ムハンマドはおいしいところをとりましたね。

 

 ムハンマドはアラブ人ですから、アラビア語をしゃべりました。神がかり状態の時もアラビア語でしゃべったのです。ということは、神はアラビア語でしゃべったのです。神の言葉を人間が勝手に変えることはできません。だから、翻訳した「コーラン」は、もう神の言葉ではない。日本でも本屋に行けば日本語訳の「コーラン」を売っていますが、正確には、これは「コーラン」ではありません。私たちが、イスラム教がどんなものか知るのにはそれで充分ですが、もし、入信するならアラビア語で誦まなくてはダメです。

 

 だから、ムハンマドの死後、イスラム教が西アジアからアフリカ北岸に広がっていくと、アラビア語もそれにつれて広まっていった。「コーラン」によって、アラビア語が西アジアに広がったということは知っておいてください。

 

 「啓典の民」という言葉も覚える。これは、イスラム教が同じ神を信仰しているユダヤ教徒、キリスト教徒を呼ぶ言い方です。ユダヤ教、イスラム教を尊重した言い方だからね。ただ、イスラム側が尊重するように相手方は尊重してくれないんですが。まあ、「最後にして最大の預言者」がムハンマドで「コーラン」が神の言葉、などと言われては尊重できないでしょうね。

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